第50話 仲間
「お前に殺されそうになって、絶望していた俺をこんな楽しい世界に誘ってくれたバルサ様に感謝してるんだ」
この世界でも、僕は奴……御堂テシマに支配されるのか……。
そう思うと、物凄い速さで僕の心は恐怖に埋め尽くされ、自然と息が荒くなる。
「はあはあはあはあはあ」
「アレル!」
うずくまる僕にミランの心配そうに叫ぶ声が聞こえる。
「はあはあはっはっはっはっはっ」
苦しくてなにも考えられない。
「落ち着いて、アレル。ゆっくり呼吸をするのよ。何も怖くないわ」
ミランの優しい声かけに僕はなんとか頷く。
「姐さん、アレルどないしたんや?」
ルンが心配そうに僕をみつめる。ノーファもエルナも同様だ。
「あいつはアレルの因縁浅はかならぬ相手なのよ」
どうしてミランはそれを知っているんだろう。
「それで過呼吸になっているんですの? よほどのことですわ」
「アレルの敵……私があいつを排除する」
ノーファが怒りを込めてそう言った。
「いえ、奴はレベルレッド、あいつはあたしがやるわ」
ミランの尾が赤く輝く。
「エルナ、バルサロッサはあんたに任せるわ。さっさとあいつを倒して加勢に向かうから辛抱して」
「そんな心配無用ですの。ミランさんが来る前に、事は終わらしておきますの」
「ノーファはベルリッタを抑え込んで」
「御意」
「ルン! あんたはアレルが回復するまで、守ってあげて。兵隊は必ず、無防備なアレルを狙ってくるわ」
「姐様の頼みならしゃーないな。いっちょ、気合い入れたるか! アレル、うちが守ったるから、大船に乗った気でいてええで!」
僕は治まらない過呼吸の中、なんとか言葉を絞り出す。
「はっはっはっ、みっはっんっなっはっはあはあごっめっはあはあ、んっ」
全員が優しい笑みで首を横に振る。
そして、ミランが僕の耳元で囁く。
「アレルは必ずあたしが守るから」
「なんだ!? なにもしてないのにそのザマは! 神月ぃ~はっはっは!」
バカにしたような笑みを浮かべる御堂に対して、ミランは僕を守るように前に立ちはだかり、
「あんただけは……許さない!」
彼女はそう憎しみのようなものを込めて言い放ち、御堂テシマに向かっていった。
白夜による薄明の中、所々で爆発音が鳴り響き、様々な魔法と魔装の光が大地と空で散りばめられている。
みんなが戦っているというのに、情けない話だが、まだ僕の呼吸は定まっていなかった。
「でやあ! とりゃあ! ふん!」
ルンが僕の周りで飛び交っている。迫り来る敵から僕を守るために。
クルクルと回転ジャンプしながら、うずくまる僕の隣にルンは降り立った。
「どないや? アレル」
「少し、はあ、ましになってきた。はあ」
「そうか。しかし、次から次へと、おっと、空圧反射壁!」
エアリフレクト……空気を圧縮した壁が術者周辺を囲む魔法。
兵隊数名が魔法で風の塊を飛ばしてきたが、ルンのエアリフレクトで弾かれた。弾かれた塊は奴らに還っていく。
「へん! そんなん喰らうかっちゅうねん!」
ドヤ顔のおてんばお姫様。ブルーの兵隊を寄せ付けない強さはさすがレベルグリーンだけはある。だが、多勢に無勢すぎる。
くそっ! 僕が戦えれば……。徐々に楽にはなっているが、治りきらない過呼吸に心中ヤキモキする。
僕のそんな表情を読み取ってか、ルンが言葉を投げかける。
「大丈夫や! うちが守ったるさかいに。あんたは焦らんでええ」
「ありがとう……すぅはあ」
「な、仲間やからな」
ツインテールのおてんば姫はそう言うと、恥ずかし気に目をそらし、頬を赤らめた。
その時だった。一筋の白い閃光がルンを貫いた。




