孤独
深夜、私とパーシーで隣の歓楽街へ出向いた。
パーシーという名はペルセフォネの愛称だ。
驚いたことにパーシーは私よりも二つ歳が上でした。つまり、十七か十八。
今まで、どうして私の身勝手な情報網を掻い潜り生きてこれたのでしょうか。
パーシーったら、コビーがいなくなった途端、震えが収まり、幼かった目が据わり始めました。
しかし、無言だというのは変わらず、アパシーな雰囲気を醸し出しております。
私は察しましたが、特に何も言うことはせず、仕事を全うすることだけに集中することを決めます。
歓楽街というのは、真っ暗な夜闇を打ち消す光そのもので、下卑たネオンは星の如き希望を私に与えます。私は幼少から闇というのは不安だとか恐怖の象徴でした。
光だけでなく、いやらしい雰囲気や下品な声、性や金に溺れた人の馬鹿さに私は救われていたのです。
悩みだとか孤独だとか不安を掻き消す極楽なのです。今までに私は幼いながらも何回、何十回とこの極楽に足を踏み入れております。
ですのでここの土地勘は慣れたもの。
パーシーを丁寧にエスコートする余裕すらあります。しかしどこに連れて行きましょうか。
スカウトするならハイカラで、痴女が沢山いる場がいい。
痴人ではなく、痴女がいい。
この歓楽街には二つ、いや三つ、街頭する場がある。虱潰しに向かうか、一つの店に絞るか。
私が思案していると、
「あの、目、に光がない」
「は」
「なんだかあなたは何か欠落してる」
「なぜ、そう思うんだい」
「あなたは何かずっと考えている。どこか達観している。まだこんなに若いのに、どこか怖がっているように見える」
「あぁ、それはどの店にスカウト行こうか迷ってたんだ。それで、まだ幼いからこそ、娼館に行くのが怖いんだよ」
「あら、そうだったの」
「そうだよ。まぁ、大丈夫だと思うけどね。それじゃあ早速行こうか」
この女はなんだ一体。
なぜ、なぜそのようなことを言い出す。
病気は、吃りは、一体どこへ行ったのだ。
嘘か、僕に、コビーに嘘を吐いていたのか。
なぜそのようなことをする。
そんなことに意味はないだろう。
どうして、どうしてそんな、僕の恐怖に土足で入ってくるんだ。
この恐怖は僕だけのもので、僕だけが恐怖していい代物だ。
僕の言えない孤独や死ぬまで苦しむであろう不安も一切合切が全部、僕を殺す毒だ。
勝手に触ったならば僕は余計に蝕まれ、お前を羨んでしまう。あぁ、最悪だ。
どうして、どうしてそう言うのだ。
お前に僕の恐怖を与えれば最後、お前は自死するだろう。あぁ、ダメだ。
耐えられない。コビーはずっと私に禁じているが、私は今すぐにでも、大麻やアヘンが欲しい。
この際、酒ですらいい。あぁ、狂いそうだ。
「すまない。少しトイレに行ってきてもいいかな」
「ええ。構わないわ。ゆっくりなさって」
なんなのだその目は。
お前はそう、見透かした目をするのは何を考えているのだ。僕が僕でなくなる。
トイレに行き、口から腸に届かず勢いで腕を勢いよく突っ込んだ。
息が絶え絶えする。
涎、鼻水、涙、汗、淤泥のような悪を垂れ流し私は普通に戻っていくのだった。
「パーシー、吃りは。それにシャイなんじゃ」
「あぁ、そうですよ。そういう風に思われてますし、実際そうですよ。
ただ、あなたは私を分からないし、私もあなたを分からない。
どうしたって分かり合えないの。
つまり、人は孤独なのよ。だから、なんとなくあなたも孤独なんじゃないかなって思ったのよ」
「そう思えているうちは孤独じゃないよ」
「あなたにとっての孤独ってなに」
「今を生きれていないことだよ。孤独だなんて言えるならまだ、孤独じゃないよ」
私は何をやけになっているのだ。
この極楽でなぜ苦しんでいる。
この自称孤独の女のせいか。違う。
全て私の中で起きていることだ。私が消えぬ限りこの痛みは、苦しみは、消えることはないのだろう。
ずっと前から気づいていた。
気づかぬふりをしていた。
この先、絶望。
だから私は孤独なのだな。
分かったらもう、変に落ち着いてきて、眠たくなってもきた。
体が拒否反応を起こしているように感じた。
体温が薄くなっていく。冷や汗を滲ませながら、
「さぁ、行こうか」




