↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転移したら賢者、転生して魔王の息子になりました。  作者: 雪国竜
第1章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
98/143

第74話 そして、三年後

「……男爵様、起きてください。男爵様」

 ん? 誰か呼んでいる。

 うーん、多分マイちゃんだな。お願いだから、あと五分……。

「男爵様、起きてください」

 身体を揺すられ、ついに観念して目を開けた。

「うぁ〜……おはよう〜」

「おはようございます、男爵様」

 ……あれ? マイちゃんじゃない。

 目の前にいたのは、この領で雇った侍女頭のクレタさんだった。

「男爵様、カーテンを開けますね。太陽に当たれば目が覚めますから」

 カーテンが開き、朝日が差し込む。

 ようやく頭が働き始めた。

「おはようございます、クレタさん」

「はい、行ってらっしゃいませ、男爵様」

 寝癖を整えてもらい、制服に着替えて部屋を出る。

 廊下を歩きながら、ここまでの出来事を思い返す。

 領主になってから、物質錬成の魔法で金を作り、それを元手に領地を復興させた。

 その過程で岩塩が見つかり、さらに魔法銀(ミスリル)、神鋼(オリハルコン)、神金剛(アダマンタイト)の鉱脈まで発見され、領地は一気に活性化した。

 もちろん、採掘による鉱毒の対策も早めに行ったので、今のところ公害は出ていない。

 王都に持って行った時の国王陛下の引きつった顔は、今思い出しても面白い。

(そういえば、皆と一年近く会ってないな……元気にしてるかな)

 領地は豊かになったが、その分税収に格差が生まれた。

 調整に時間はかかったが、今は落ち着いている。

 魔物対策として各村に屯田兵を配置し、開拓も進めている。

 学校も作り、子供と大人の識字率を上げる取り組みも順調だ。

 そんなことを考えているうちに、執務室に到着した。

 ノックはしない。

 前にノックしたらミルチャさんに「御自分の執務室にノックをする方がおりますかっ」と怒られたからだ。

「おはよう」

「おはようございます、男爵様」

 ミルチャさんが今日の書類を机に置く。

「例の案件は上手くいっていますか?」

「ああ、学び舎の件ですね。問題なく進んでいるそうです」

「良かった」

 書類に目を通していると、扉がノックされた。

「どうぞ」

「失礼します。男爵様、王都より文が届きました」

 封蝋を割り、手紙を開く。

「何々……『至急王都に来られたし』……?」

 王都で何かあったようだな。


 文を受け取った僕は、すぐに領地運営の引き継ぎと、僕が不在の間に何か起きても対処できるように作ったマニュアルをハンクさんへ渡し、数名を連れて王都へ向かった。

 馬車の揺れに身を任せながら、どうしてこの時期に呼び出されたのか分からず、内心首を傾げる。

(ついこの前、天人族と同盟を結んだばかりなのに……何の用だろう?)

 今年に入ってすぐ、天人族が同盟を望んでいると使者が来たため、その時も王都へ呼ばれた。

 議論の末、天人族とも同盟を締結。

 これで魔人族と天人族を除く四種族とは、和睦または同盟を結んだことになる。

 その四種族との交渉役に僕が指名されたのは驚いたが、王命なので引き受けた。

 実際に行ってみると、どの種族も予想以上の歓待をしてくれた。

 後で聞いた話だが、出迎えに来たのはその種族の中でも相当な地位の人物だったらしい。

 交渉の場では、異世界の知識を使う羽目になった。

 亜人族とは、なぜか料理対決になり。

 竜人族には、昔考えた魔法を披露することになり。

 獣人族では、某歴史料理漫画のように料理を作ることになり。

 鬼人族とは、一騎打ちまでした

 ……今思い返しても、交渉だったのか何だったのかよく分からないな。

 陛下が「全権を委任する」と事前に言ってくれていなかったら、絶対に上手くいかなかっただろう。

(そして、その後が本当に大変だった……)

 交渉が成功したせいか、各種族から嫁を押し付けられそうになった。

 政略結婚のようなものは嫌だったので全部断ったが、何人かは正直好みだった。

 しかし護衛のエリザさんに睨まれたので、泣く泣く断るしかなかった。

 その影響か、いつの間にか僕はエリザさんの婚約者扱いになっていた。

 二年前、エリザさんの兄に会った時など、

「やぁ、君が未来の義弟君だね? 妹をよろしく頼むよ」

 と初対面で言われた。

 その場にはマイちゃん達もいたので、後で鬼の形相で追いかけられた。

 あの時はセリーヌ王女が助けてくれなかったらどうなっていたか……思い出すだけで震える。

 王都に着くまで時間があるので、ミルチャさんと仕事の話でもして気を紛らわせることにした。


 三日後、王都に到着。

 そのまま王宮へ向かう。

 馬車を降りると、出迎えのモリア副侍従長が待っていた。

「お待ちしておりました、男爵様」

「ご苦労様、モリア副侍従長」

 何度も会っているので顔は覚えている。

「国王陛下並びにお歴々がお待ちです。どうぞ」

 案内され、僕とミルチャさんだけが会議室へ向かう。

 他の者達は別室で待機だ。

 会議室に入ると、国王陛下、各軍団長、宰相、第一王女殿下など、錚々たる顔ぶれが揃っていた。

「よく来た、ターバクソン男爵」

「はっ。お呼びとあれば即座に参ります」

 三年も貴族をしていると、挨拶もそれなりに板についてきたな。

「座るが良い」

 陛下の言葉に従い席に座る。

 周囲を見渡すと、クラスメート達の姿はない。

 これは何かある、と直感した。

 宰相が口を開く。

「では、男爵が来たので話を始めよう」

 陛下が重々しく語り出す。

「他種族と連合を組み魔人領へ攻め込み、敵の策に嵌り敗退してから三年。国力増強に励み、ようやく三年前と同等の力を取り戻した。そして再び他種族との同盟を結ぶことに成功した」

 陛下は一度区切り、宣言する。

「儂はここで宣言する。今再び、他種族と手を取り合い魔人領へ攻め込む。魔人族の王――『魔王』を討ち取り、世界を平和へ導く!」

 一瞬の静寂の後、軍団長達が歓声を上げた。

 大臣達の反応はまちまちだ。

 喜ぶ者、渋い顔の者、隣と相談する者、「また負けるのではないか」と小声で言う者までいる。

「各々には、他種族との連携を踏まえた作戦を考えてもらいたい」

 その言葉に、軍団長達の顔が一気に曇る。

 前回の敗因は、他種族との連携不足。

 今回も同じ轍を踏むのではと不安なのだろう。

(でも、人族だけで攻めれば他種族の恨みを買う。同盟を結んだ今、単独行動はむしろ危険だ。魔人領へ攻め込めば、他種族が隙を突いてくる可能性もある)

 連合軍で攻めるのは妥当であった。

 問題は――どう説得し、どう連携を取るかだな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。