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転移したら賢者、転生して魔王の息子になりました。  作者: 雪国竜
第1章

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ターバクソン奮闘記

 王都を出立して八日。

 ようやく今日、ターバクソン領に入った。

「思っていたより道が険しくて、着くまで時間が掛かったな〜」

「グリリリュ」

 グリフォンも同じ気持ちなのか、同意するように鳴いた。

 この魔獣は知能が高く、僕の言葉をある程度理解しているようだ。

 そのうち会話できるようになるかもしれない。

「まぁ、当分先だろうけど」

「ギュル?」

 首を傾げるグリフォンの頭を撫でてやる。

 じゃれていると、前方に村が見えてきた。

 ここで休憩しつつ情報収集してから、領地の行政を行っている都市へ向かおう。

「ここで休憩しましょう」

「はっ、畏まりました」

 御者が答え、村から少し離れた場所で馬車を止めた。

 乗っていた人たちは馬車を降りて身体をほぐしている。

 僕は村に行って話を聞きたいが、一人では危ない。

 誰か同行してもらおうと周りを見ると。

「男爵様」

「あっ、そうだ。僕、男爵になったんだ」

 呼ばれ慣れていないせいで、反応が遅れた。

 早く慣れないといけないな。

「えっと、ミルチャさん、何か?」

「ミルチャで結構です。爵位はありませんから」

「でも年上ですし……」

「お気になさらず」

 うーん、そう言われたら従うしかない。

「ミルチャ、何か用ですか?」

「村に行き、水を少し分けていただけないかと。許可をいただきたくて」

「ええ、良いですよ。僕も付いて行っていいですか?」

「男爵様も?」

「少しでも領地のことを知りたいので」

「分かりました。では行きましょう」

 僕はグリフォンから降り、ミルチャと共に村へ向かった。

 村に入ると、住民たちが不思議そうな顔でこちらを見る。

「どうやら、国の役人が来るのは珍しいようで」

「ですね。でなければ、こんな反応にはなりません」

 話していると、杖をついた年配の男性が近づいてきた。

 村長だろう。

 僕はミルチャに目配せする。

「王国のお役人様とお見受けします。我が村には何用ですかな?」

「うむ。こちらにおられるターバクソン男爵様が、村長殿と話がしたいと申されてな」

「男爵⁉ し、失礼いたしましたっ!」

 村長は杖を落とし、その場で膝をついて頭を下げた。

 周囲の村人も同じように頭を下げる。

「え、ええええ〜」

 爵位一つでここまで態度が変わるのかと驚きつつ、

 僕は村長を立たせ、話を聞くため村長宅へ向かった。


「……という事になります」

「成程」

 村長の話によれば、ターバクソン領は昔は鉱山で栄えていたが、

 金・銀・銅の産出量が年々減り、ついには枯渇。

 その結果、領は衰退し、今は魔物の毛を売って何とか食いつないでいるらしい。

 王国直轄領なので完全な没落はしないが、

 日々の生活はギリギリだという。

(これは使えるかもしれない)

 本来は都市部で役人から状況を聞くつもりだったが、

 村長の話で十分把握できた。

 なら、もう行動あるのみだ。

「このまま鉱山に行くのも手だけど……人手が足りないと大変だし。都市に行くのもなぁ」

 独り言を呟いていると、村長が口を開いた。

「男爵様、ひとつお伺いしてもよろしいでしょうか?」

「僕が答えられる範囲なら」

「男爵様がこの領に来られたということは、領地改革のためと受け取ってよろしいのですか?」

「そうですね。そう思っていただいて構いません」

「であれば……今より豊かな生活ができるということですな?」

「はい」

 その瞬間、村長は椅子から立ち上がり――土下座した。

「えっ? ちょっ」

「どうか、どうか我が領地の復興をお願いいたします。この通りにございます!」

 土下座はこの世界にもあるんだな、と一瞬思ったが、それよりも村長の必死さが胸に刺さった。

 僕は席を立ち、村長の肩に手を置く。

「分かりました。僕の知識と力を使って、この領を豊かにします」

「お、おおおお……ありがとうございますっ!」

 村長は涙を流しながら頭を下げ続けた。

 初対面の僕にここまで頼るということは、

 本当に生活が苦しいのだろう。

 これは急いで都市に向かい、改革を進めないといけない。

 僕たちは村長宅を辞し、水などを分けてもらって出発した。



 グリフォンに揺られながら地図を見る。

「このまま進めば、領の都市ザクセンに着くのは三日後か」

 村の様子からして、都市も相当貧しいのだろうと思いながら前を見る。

 三日後――ザクセンに到着した。

 事前に連絡が入っていたのか、都市の門前には役人がズラリと並んでいた。

「はぁ〜、何というか凄いな」

『何がじゃ?』

 昨日までどこかに行っていたバズヴが肩に乗りながら訊いてくる。

 この神使は自由だな。

「僕みたいな異世界人のために出迎えに来るなんて凄いなと思って」

『お主、よく鈍いと言われぬか?』

「……偶に言われるかな」

 主にマイちゃんとかマイちゃんとかマイちゃんとか。

 ユエは「ノブらしい」と苦笑する。

「まぁいい。それより早く行こう」

『逃げたな』

 聞こえない。僕は何も聞こえない。

 僕は先頭に立ち、役人たちの列へ向かった。

「ターバクソン男爵、ご到着。お喜び申し上げます!」

「「「お喜び申し上げます!」」」

 役人たちが声を揃える。

 どう返せばいいのか分からず戸惑っていると。

『この場合は「大儀である」と言えばよいぞ』

「偉そうじゃない?」

『お主、この領地の主なのじゃぞ。言わねばならん』

「でもさ」

『よいから言え』

 仕方なく口を開く。

「皆、大儀である」

「はっ。男爵様をお迎えできて誠に祝着至極にございます」

 時代劇みたいだなと思いつつ、続ける。

「では、僕が暮らす場所に案内してくれますか」

「はっ。わたしめがご案内いたします」

 役人がグリフォンの手綱を取ろうとしたが、

 手綱がないことに気づいて不思議そうな顔をした。

「あの、このグリフォンの手綱は?」

「このグリフォン、手綱を嫌がるので着けてないんです」

 無理に着けようとすると暴れるので、鞍だけで騎乗している。

 それでも僕の行きたい方向に勝手に進んでくれる。

 普通のグリフォンではありえない知能らしい。

 変異体なのかもしれないが、便利なので良しとする。

「……では、ご案内いたします」

 役人の先導で、僕たちは都市へ入った。

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