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転移したら賢者、転生して魔王の息子になりました。  作者: 雪国竜
第1章

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第71話 第65話 拝啓 お父さん、お母さん、貴族になりました。

 近衛兵団に料理を振る舞った翌日。

 僕は、自分で作った魔法を近衛兵団の人たちに教えていた。

 補佐としてエリザさんが手伝ってくれている。

 本人曰く「微力ながら手伝いを」とのこと。

 僕は頭を下げてお願いした。

 授業は、僕が魔法を実演し、説明しきれない部分をエリザさんが補足する形で進めた。

 最初は上手くできなかったが、教えていくうちに皆慣れていき、魔法を使える人も出てきた。

 炎と水の適性がある人には『無色の波動砲《クリアバーストストリーム》』を。

 風と土の適性がある人には、某暗黒の破壊神の自称美形主人公が使う魔法を参考にした技を教えた。

 ただし魔法名は〇地爆裂だと問題がありそうなので、世界観に合わせて変更する。

『破滅の災害《カタストロフ・ディザスター》』と名付けた。

 由来は、カッコいい言葉を適当にくっつけただけ。

 しかしこの魔法、使う場所を選ぶ。

 近衛兵団に教える前に試し撃ちしたが、凄まじい威力で周囲が壊滅した。

 侯爵だけが興奮していたが、他の人は目を点にしていた。

 まあ、気持ちは分かる。

 まず両手に魔法を出し、一定の出力になるまで制御する。

 それができたら融合させる。

 これが意外と難しい。

 どちらかの魔法が強すぎると融合できず消滅してしまう。

 基礎はできても、この段階で多くの人が躓いた。

 挫けそうな人には一息ついてもらい、茶と茶菓子を出して気分転換してもらう。

 ちなみに毎回違う菓子を出すので飽きない。

 文字通りの「飴」を与えて奮起してもらい、訓練を再開させた。

「『我は放つ、無色の波動砲』」

「『大地と大気の力よ。今、その力を交わらせて一つとせん――破滅の災害』」

 バビュウウウウッ!

 ドッガアアアアアアアアアアアアアアアッ‼

 放たれた魔法が大地を破壊する。

 うん。僕が作った魔法だけど、他人が使っても凄まじい威力だ。

「ふむ。イノータが使わなくても凄い威力だな」

「ですな。それにしても凄まじい魔法ですな」

 王都を出て、周囲に何もない場所で魔法の披露会が行われた。

 王様、第一王女様、何故か第二王女様、宰相、各軍団の団長・副団長、大臣数名が参加している。

 僕はエリザさんの傍で見守った。

 最後の一人が魔法を披露し、会は終了。

 王様が立ち上がる。

「見事であった。このような素晴らしい魔法を使える臣を持てたことを、神に感謝しよう」

「「「「恐れ入ります、国王陛下」」」」

 近衛兵団が跪く。

 訓練の終盤には皆自信を取り戻し、元気な姿を見せてくれた。

 王様は顎髭を撫でながら満足そうだ。

 そして僕に目を向ける。

「イノータよ。こちらに参れ」

「は、はい」

 僕は跪く。

「お主のお蔭で、我が臣達が自信を取り戻した。感謝する」

「はっ。恐縮です」

「この功績により、お主に男爵の位を授けよう」

「は、はいっ?」

 本当だったの?

 誰も反対しないのか?

 周りを見ると、誰も何も言わない。

「後日、爵位を授ける式を執り行う。楽しみにしておれ」

 王様は去り、第一王女様と宰相が続く。

 第二王女セリーヌ様だけが僕のところへ来た。

「男爵叙爵おめでとうございます、イノータ様」

「あ、ありがとうございます」

「これから大変でしょうが、頑張ってくださいね」

「は、はい」

「では、御機嫌よう」

 セリーヌ様は去った。


 数日後。叙勲の儀が執り行われる事となった。

「………………」

 僕は待合室の中で、緊張で震えていた。

(ほ、本当に貴族になるなんて……)

 戦場より緊張している。

 水を飲んでも震えは止まらない。

「落ち着いて下さい。取って食われる訳ではないのですから」

 エリザさんが優雅に茶を飲みながら窘める。

 叙爵には介添人が必要で、侯爵が「ぜひ娘を」と言ったのでエリザさんが担当になった。

 彼女は子爵なので問題ないそうだ。

 問題は僕だ。

 貴族の礼法を何も知らない。

 急遽、仕立て屋や礼法の先生を呼び、歩き方から跪き方、服の着方まで徹底的に叩き込まれた。

 毎日大変だった。

(貴族って大変だな……慣れたくない)

 コンコン。

 式の準備が整ったのだろう。

「どうぞ」

 入ってきたのはマイちゃん達だった。

「ふむ。馬子にも衣裳と言ったところだな、ノブ」

「ユエ、それは酷いよ。似合ってるかどうかは悩むけど」

「二人とも猪田君に失礼だよ」

 久しぶりの声に、緊張が溶けていく。

「でも、ノッ君が貴族になるのなら、ちゃんとした対応をしたほうがいいのかな? あたし分からないけど」

「ふっ、どれだけ地位を得ようとノブはノブだ」

「その通り。むしろ爵位は邪魔じゃない?」

「言えてる~。ねぇノッ君、叙爵式すっぽかしてどこか行かない?」

「いやいや、それは流石に」

「幼馴染権限で許可します。だから行こうよ」

 ユエが止める。

「マイ、それはまずい。王様の好意で叙爵してもらえるのだ。受けるべきだ」

 うんうん。

「だが、受けても返上すればいい。むしろ返上しろ」

「ゆえええええええええええっ‼」

 エリザさんがいるのに、そんな事を言うのはやめてくれ。

「失礼だから置手紙を残して国外逃亡した方がいいと思う」

「いやいや、それも駄目でしょう」

「不敬罪で地獄の果てまで追われますよ」

「ふん、わたし達がいれば軍隊相手でも簡単に倒せる」

「確かに」

「むしろ壊滅させてから逃げた方がいいかも」

 エリザさんはどうしたものかと、困った顔をしていた。

 僕が溜め息をついていると、袖を引っ張られた。

「イノッチ、男爵叙爵おめでとう」

「ありがとう、村松さん」

 ようやく普通のお祝いをもらえた。

「でもイノッチが貴族か……悪徳貴族とか似合いそう」

「村松さんが僕をどう思ってるか分かったよ」

「あっはは、半分冗談だから」

 背中を叩かれる。

 半分は本気か。

「ねぇ、記念にお願いがあるんだけど」

「何? できることなら」

「あたしのこと、瀬奈って呼んで。呼んで」

「え~……言わないと駄目?」

「駄目」

「じゃ、じゃあ……瀬奈さんで」

「呼び捨てでいいのに……まあいいや、それで許してあげる」

「何が許してあげるだって?」

 四人が振り向く。

「名前で呼ばれるくらいいいじゃん」

「良くないっ。わたしだってまだ呼ばれないのに」

「じゃあ頼めば?」

「で、でも恥ずかしい/////////」

「うわ、面倒な女ね」

「い、いいでしょうっ」

 そこへノックがされた。

 誰だろう。

 開けると第二王女セリーヌ様だった。

「御機嫌よう、イノータ様」

「御機嫌麗しゅうございます、殿下」

「クスクス。そんな畏まらなくていいですよ。まだ叙爵されていませんから」

「そ、そうですが、今のうちに慣れようかと」

「殊勝ですね」

「どうしてここに?」

「式の準備が整ったので、呼びに来ました」

「えっ? 王女様が?」

「暇でしたので」

「いや普通に有り得ないでしょう」

「冗談です。異世界人を貴族にするので、呼びに行かせる者にも気を遣っただけです」

 なるほど、厚遇のパフォーマンスか。

 僕は口論している五人に声を掛ける。

「おーい、準備できたって。行こうよ」

 しかし口論は止まらない。

 セリーヌ様が部屋に入る。

「皆さん、止めないとわたしがイノータ様と先に行きますよ?」

 ピタッ。

(おお、流石王女様)

「そうですね。行きましょうか」

 淑女のように歩くエリザさん。

 こんな一面もあるのか。

「じゃあ、あたし達も一緒に行っていい?」

 目が笑っていない。

「ええ、構いません。ただし謁見の間の前までです」

「どうしてっ?」

「叙爵の儀は爵位持ちしか参加できません。わたしは王族なので入れます」

 四人がええ~という顔。

 式をぶち壊す気は……多分ない。多分。

「どうしても?」

「どうしてもです」

 セリーヌ様が強く言うと、四人は渋々頷く。

 誰かが「式をぶち壊そうと思ったのに……」と言った気がしたが、多分空耳だ。

 セリーヌ様を先頭に、僕、エリザさん、マイちゃん達が続く。

 謁見の間に到着。

「では、お供の方々はここまでです」

 不満そうに頷く四人。

 セリーヌ様が衛兵に声を掛ける。

「叙爵の儀に参加するイノータ・ノブヤス様をお連れしました」

「はっ、ご苦労様です」

 衛兵が声を張る。

「叙爵の儀に参加する――イノータ・ノブヤス様、御入来!」

 門が開く。

 セリーヌ様が道を譲る。

 僕は唾を飲み込み歩き出す。

 エリザさんが続く。

 謁見の間には赤い絨毯、両側に近衛兵団と宮臣達。

 震える足に力を入れ、進む。

 石段から十歩ほど離れた場所で跪く。

 エリザさんも跪く。

 王様が宰相に頷き、宰相が口を開く。

「これより叙爵の儀を行う」

 近衛兵団が剣を抜き直立させる。

 宮臣が豪華な剣を運ぶ。

「イノータ・ノブヤス」

「はっ」

 王様が剣を抜き、僕の肩に当てる。

「汝はこの国に多大な貢献をした。よって男爵に封じる」

「はっ」

「その知識、その力を我が国の栄光の一端とせよ」

「はっ。全身全霊で忠誠を誓います」

「うむ。汝にターバクソンの地を授ける。これよりイノータ・フォン・ターバクソン男爵と名乗るがよい」

 周囲がざわつく。

「あの山しかない土地を?」

「昔は鉱山があったが廃坑だと聞く」

「飼い殺しにする気か」

 どうやら不便な土地らしい。

(まあ、後で聞こう)

 僕は儀式が終わるまで跪いた。

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