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転移したら賢者、転生して魔王の息子になりました。  作者: 雪国竜
第1章

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メアタンの本音

 わたしはメアタン。

 御当主様エゼキエル・フォン・アスクレイ様が造り出した人工生命体(ホムンクルス)の一人だ。

 七体いる姉妹の中で、わたしは二番目に生み出された。

 人で言えば七人姉妹の次女という立場になるのだろうが、わたし達にとってはあまり意味のない区分だ。

 長女ヴィオレットはエゼキエル様の秘書役を務めている。

 生真面目で公平な性格ゆえ、エゼキエル様からの信頼も厚い。

 三女アズウクレは侯爵領を治めるバートリ様の補佐役だ。

 天真爛漫で、領地の人々からも慕われている。

 四女ヴェルデドゥールと五女ジュ―リロは王都の屋敷の万事を取り仕切っている。

 ヴェルデドゥールはクールで合理的、ジュ―リロは思慮深いが語尾に「ピョン」や「キュン」などをつける口癖がある。

 六女ナランツオ―ネは三女アズウクレの補佐をしている。

 わたしよりも寡黙で、滅多に笑わない。

 七女ビヒモンは、わたしと共にお嬢様の補佐兼護衛を担当している。

 物静かに見られがちだが、実は姉妹の中で一番短気だ。

 喋らないのは、話すために立ち止まるのが嫌だかららしい。

 ちなみに、わたしとビヒモン以外の姉妹は、御当主様が名前を付けてくださった。

 お嬢様は素晴らしい御方なのだが、どうもネーミングセンスだけは壊滅的だ。

 今、わたしがしている仕事は、屋敷で――囲っていや、匿っている人物の監視兼護衛だ。

 その人物の名はイノータ・ノブヤス。

 御当主様が気に入った人物で、お嬢様の婿候補の最有力とされている。

 見た目は中性的で女のような男のように見えた。性格は一言で言って天然。

 さらに、御当主様も知らない知識を持ち、強力な魔法を使える。

 以前、大旦那様がぽつりと漏らした。

『もし、わたしがイノータ殿と戦う事になったら、上手く持ち込んで五分。下手したら負けるであろうな』

 この国一番の魔法使いである御当主様がそう言うほどの実力者。

 そんな人物を見逃すはずもなく、色々理由をつけて屋敷に匿っている。

 そしてイノータ様の世話をお嬢様に一任している。

 つまり――上手く誑し込んで婿にしろ、ということだ。

 お嬢様も乗り気なのか分からないが、今日もその仕事に励んでいた。

 わたしは厨房の扉を少し開け、イノータ様を監視していた。

 イノータ様は市場から届けられた極上の食材を見て、何かを作ろうとしている。

 国王陛下の命で近衛兵団に魔法を教える準備らしいが、なぜ厨房なのかは分からない。

 何か考えがあるのだろう。

 肉も野菜も、お嬢様が贔屓の店から厳選したものばかり。

 その食材で何を作るのか、わたしはじっと見守る。

 決して試食したいとか、少しおこぼれを……などという下心はない。

 わたしは監視役兼護衛なのだから(キリッ)。

 そう思っていたら、イノータ様が調理を始めた。

 頭と内臓を取り除き、皮を剥いだマーブル・ヴェールの腹に野菜を詰めていく。

 マーブル・ヴェールは大人しい魔物で、仔牛ほどの大きさにしかならない。

 心臓の魔石が高価で、皮と肉も高級品として知られている。

 その肉をひっくり返し、背中にナイフを刺して野菜を詰め込む。

 香味野菜らしいが、わたしは料理を手伝わせてもらえないので名前は知らない。

 塩と胡椒を満遍なく刷り込み、オーブンへ。

 イノータ様は椅子に座って焼き上がりを待つ。

 かなり時間をかけるようだ。

 わたしも監視しながら、肉が焼けるのを待った。


 二時間後。

(も、もう、いいのではないでしょうか……?)

 厨房には美味しい匂いが充満し、口の中は涎の海になりそうだ。

 そこへヴェルデドゥールとジュ―リロがやってきた。

 事情を説明すると、二人も興味を持ち、わたしと同じように扉の外で待ち始めた。

 さらに一時間後。

 ようやく肉がオーブンから取り出された。

 わたし達は我慢できず、厨房へ突入した。

 ジュ―リロは涎を垂らし、わたしも垂らしてはいないが……ジュル。

 イノータ様が肉を切り分けようとしているので、わたし達は「少し分けてください」と視線で訴えた。

 通じたのか、イノータ様は「少し、食べますか?」と声をかけてくれた。

 わたし達は即座に頷いた。

 一口食べた瞬間、言葉を失った。

(ああ……柔らかい。舌で押すだけでほどけて、肉汁が溢れてくる。これ、本当に肉なのっ⁈)

 もっと食べようとナイフを伸ばした瞬間――

 ギンッ!

 ヴェルデドゥールのフォークがぶつかった。

「ヴェルデ、何の真似?」

「次姉様、独り占めは良くないと思います。均等に分けるべきです」

 そう言いながら、ヴェルデのナイフも肉へ伸びる。

 その瞬間――

 ガギンッ!

 ジュ―リロのナイフがヴェルデのナイフを弾いた。

「ヴェルデ姉様も独り占めしようとしてるじゃありませんかピョン」

 三人は睨み合った。

「「「ガルルルルルルッ‼」」」

 久しぶりに姉妹喧嘩をした。

 仕事から帰ったエリザ様にこっぴどく叱られたが、後悔はない。

 それほど美味しかったのだ。

(今度、レシピを聞いて料理長に作ってもらおうかしら)

 わたしはそう思った。

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