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転移したら賢者、転生して魔王の息子になりました。  作者: 雪国竜
第1章

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第65話 王女様と友達になりました

 王様の命令で、僕は近衛兵団に魔法を教えることになったが――

 正直に言おう。

 全然自信がない!

 人に教えるのが得意でもないのに魔法を教えるなんて。

 先輩芸人から無茶ぶりを食らった後輩芸人並みに難しいじゃないか。

 それに加えて、躁鬱状態の人達に自信を取り戻させろなんて……

 どんだけだよっ‼

(貴族になる気はないけど、失敗したらどうしよう〜)

 ああ、頭が痛い。

 何か良い考えはないものかと悩みながら歩いていたら、前から見慣れない人が歩いてきた。

 見た感じ、THE・お姫様という雰囲気の人だ。

 カールした金髪。優しそうな目元。気品のある顔立ち。

 白を基調としたドレス。

 後ろには護衛らしき人達。

 どう見ても貴人だ。

 僕は道の端に寄り、そのお姫様を通した。

 そのお姫様は、僕を不思議そうに見ている。

(何で見てるんだろう?……ああ、この服が珍しいからか)

 この世界では作れない生地で作られているから、王国で研究しているとエリザさんから聞いたことがある。

 だから僕の服を見ているのだろう。

 でも、そんなにジッと見られると気恥ずかしい。

(というか、この人、何で動かないんだろう?)

 お姫様は僕を見つめたまま、動かない。

「あ、あの……」

 このまま見つめられ続けるのは流石に問題だと思い、声を掛ける。

「あら、ごめんなさい。あまり見たことのない顔だったので、つい」

「いえ、気にしていませんから」

「そうですか。私はセリーヌ・テシュオス・ロンバルディアと申します。貴方は?」

「僕は猪田信康です。イノータと……ロンバルディア?」

 それって確か王族のファミリーネームでは?

 すると、もしかして――

「あの、失礼ですが。王族の方ですか?」

「はい。私は第二王女です」

「……し、失礼いたしましたっ‼」

 僕は慌てて跪いた。

 偉い人だとは思っていたけど、まさか王女様とは。

「王女様とは知らず、非礼の数々、お詫びいたします‼」

「いえいえ、私も名乗っていなかったので、お気になさらずに」

 跪いたまま答える。

「貴方はイノータ様でしたね。話はエリちゃんから聞いております」

「はい? エリちゃん?」

 誰だ、それ?

「エリゼヴィアと申したら分かりますか?」

「あ、ああああっ」

 エリザさんだから、エリちゃんか。

 妙に似合っているな。

「エリちゃんとは友達でして、ここのところ貴方の話ばかりしています」

 エリザさんが僕の話を王女様にしていることよりも驚いたことがある。

(エリザさん、友達いたんだ……)

 正直、ボッチだと思っていた。

「少しお話を聞きたいのですが、よろしいですか?」

「えっと……」

 正直、休みたい。

 でも王族のお願いを無下にするのも悪い。

「……分かりました。お付き合いします」

「では、少し先に空中庭園がありますから、そこでお話しましょう」

 僕はセリーヌ王女様の後をついて行った。

 空中庭園には、事前に準備されていたのかテーブルと椅子が用意されていた。

 王女様が椅子に座る。

「どうぞ、お座りください」

 促されて、僕も座る。

 対面に座った僕に、王女様は微笑みながら話しかけてくる。

「エリちゃんが言うには、イノータ殿は多才な才能を持っていると聞いています」

「いやぁ、買い被りですよ。正直、知識だけあるので、その知識を活かしてくれるエリザさん達には助かっています」

「まぁ、謙遜ですか?」

「いえいえ、本心ですよ」

「異世界人の方々は謙虚な方が多いのですか?」

「それは、ちょっと僕には分かりませんね」

 我が強い人も多いので、謙虚とは言い難い。

 王女様は異世界のことを色々と訊ねてきたので、僕は知っている範囲で話した。

 和やかに話していると、王女様が急に真面目な顔になった。

(ああ、今までの雑談はこれを訊くための時間稼ぎか)

 僕は身構える。

「イノータ殿」

「はい。何でしょうか?」

「イノータ殿は甘い御菓子を作れるとエリちゃんから聞いています」

「はぁ、確かにそうです」

「今度で良いのですが、その……」

 これは、作ってほしいと言いたいのだろう。

 まぁ、それくらいならいつでも出来る。

「その、今すぐ甘い物を食べたいので、作ってもらえますか?」

「今ですかっ!」

 まさかの即要求。

 この国の王族は人に無茶ぶりをする家系なのか?

「え、えっと……今すぐは」

 断ろうとしたら、王女様がすっごく残念そうな顔をした。

 さらに後ろの護衛や使用人達が凄い目で僕を見ている。

「王女様の願いを断るとはいい度胸だな?」

 と言っているような目だ。

 その圧力に負けて、僕は王女様の願いを聞く。

「……今すぐはちょっと、少し時間を頂けませんか」

「はいっ! 待ちます‼」

 パアッと花が咲いたような笑顔をされたら、変なもの作れないじゃないか。

 僕は使用人に案内され、厨房へ向かった。

 厨房では料理人達が怪訝な顔をしたが、使用人が説明してくれたので一部を貸してくれた。

 僕は食材を探す。

(とりあえず、小麦粉と卵とバターと砂糖だな)

 生クリームもあった。

 最近は簡単に作れるようになったらしい。

 果物を見ていたら、赤くて大玉トマトくらいの大きさの実を見つけた。

 料理人に訊くと、果物の盛り合わせに使われるらしい。

 見た目はトマトなのに、味はイチゴだった。

 断面もイチゴそっくりで、白い部分がないだけ。

 名前は「ポモベーリト」。

 小さいサイズもあるらしいので使うことにした。

(後は調理器具を見て、何を作るか考えよう)

 材料を持っていく途中、面白いものが目に入った。

 ダッチオーブンだ。

 それを見た瞬間、作る物が決まった。

 僕はダッチオーブンを借りて、ショートケーキもどきを作ることにした。

 作業は順調に進み、スポンジを焼き、生クリームを作り、ポモベーリトを切り、

 三層にしたスポンジにクリームと果物を挟み、最後に全体を白く塗り上げた。

 絞り袋がないので、上に小さいポモベーリトを乗せるだけだが、十分だ。

「後片付けは後でするので、そのままにしておいてください」

「あ、ああ、分かりました」

 気付けば周りに人が沢山いた。

 暇なのかな?

 僕はケーキに覆いをかけ、王女様のいる庭園へ向かった。

 庭園に着くと、王女様がワクワクしているのが遠くからでも分かった。

 僕はテーブルに皿を置き、覆いを取る。

「まぁ、こんなに白い食べ物は見たことがありません。何という菓子なのですか?」

「イチゴ……いや、違う。ポモベリートケーキです」

「では、さっそく頂きましょう」

 使用人が切り分け、毒見で一口を食べた。

「~~~~~~~‼⁈」

 甘さにうっとりしている。

 王女様も羨ましそうに見てから、自分の分を口に運んだ。

「~~~~~~~‼‼⁉」

 王女様も甘さに驚き、うっとりした。

「お口に合いましたか?」

「……(コクコク)」

 口を開けたくないのか、無言で頷く。

 その後は談笑しながらケーキを食べた。

 僕は一切れしか食べていないが、王女様はほとんど食べた。

「イノータ殿、いえ、さん」

「はい?」

 今、“さん”で呼ばれなかった?

「これからは、わたしのことをセリーヌと呼んでくださいね。わたしもイノータさんとお呼びしますから」

「え、ええええっ⁉」

「また、時間がありましたら、このケーキみたいなものを作ってくださいね」

 それ、暗に

 甘い物が食べたい時は呼びますね

 と言っている気がする。


 猪田とセリーヌが話していた頃。

「……クチュンッ!」

「軍団長。風邪ですか?」

「いえ、そんな事は。それよりも早くお父様のところへ行きましょう」

「はっ」

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