第40話 出来る事は全てしよう。できたら
皆魔法契約は終わった。
僕の場合はまだ決定していないが、明日になれば分かるだろう。
皆は契約して使えるようになった魔法の効果を見るため、訓練場に向かった。
「ノッ君、明日の件はどうする?」
「う~ん、そうだね。ちょっと相談したい人がいるから、その人の話を聞いてから考えよう」
「相談したい人? だれ?」
「アスクレイ侯爵だよ」
「…………ああ、あの人っ」
今少し間があったけど、まさか忘れていたわけじゃないよね?
まぁ、今はそんな事よりも、侯爵がどこにいるか聞かないと。
とりあえず、カドモスさんに訊いてみよう。
「カドモスさん、ちょっと話」
「あ、此処におられたか」
カドモスさんに話し掛けようとしたら、聞き覚えのある男性の声が聞こえてきた。
誰だろうと振り返ると、そこに居たのは――
「いかがですか、魔法契約は出来ましたか?」
そこに居たのはアスクレイ侯爵だった。
カドモスさんはアスクレイ侯爵を見るなり、一瞬ギョッとした顔をした。
すぐに表情を戻し、頭を下げる。
「これは、アスクレイ侯爵。お疲れ様です」
「お主もな。カドモス」
……何で侯爵がここに居るんだ?
「それで、異世界人達の魔法契約は終わったのか?」
「イノータ殿以外は終わりました」
「? イノータ殿の契約はまだ終わってないのか?」
「いえ、少々特殊な状況になりまして」
カドモスさんが腰を曲げて、アスクレイ侯爵の耳元に話し出す。
二人は何事か話しながら、時折侯爵が頷いていた。
「……なるほど、そういう状況か」
「はい。これはかなり特殊です」
「で、その神の使いはいつ頃来るか分かっているのか?」
「明日の正午だと思われます」
「成程……イノータ殿」
「はい」
「何か対策は考えおられるので?」
「これから侯爵の所に行って相談しようと思いまして」
「成程。なら丁度良いですな」
アスクレイ侯爵は頷いた後、話しかけた。
「丁度、話したい事がありましたので、どうぞこちらへ」
アスクレイ侯爵がそう言うので、僕はその案内に付いていこうとしたら。
「「ちょっと、待った(って)」」
マイちゃんと椎名さんが声をあげた。
そこから先は通さないと言わんばかりに両手を広げる。
「何か御用で?」
「色々と言いたい事はあるけど、まず言いたいのは一つ!」
「貴方は誰ですか⁉」
マイちゃんと椎名さんが、犬のようにガルルルルと言わんばかりに威嚇する。
「これは失礼。わたしはエゼキエル・フォン・アスクレイと申します。以後お見知りおきを」
アスクレイ侯爵は挨拶をすると、マイちゃん達も挨拶を返した。
その後、僕はマイちゃん達が付いていくとうるさいので、仕方がなく二人も連れていく事にした。
アスクレイ侯爵に案内してもらいながら、僕達は王宮を歩く。
契約を行なった部屋から出て歩くこと数十分。
着いたのは、この前侯爵に案内された研究室だ。
「ここは研究室ですよね」
「はい。入りましょうか」
アスクレイ侯爵が扉を開けてくれたので、僕が部屋に入ろうとしたら、マイちゃんが僕の襟首をつまんできた。
「マイちゃん、そんな事をされたら、前に進めないよ」
「ノッ君、入る前に聞きたいのだけど、何でここが研究室だって知っているの?」
マイちゃんは不審な目で見てくる。
そんな目で見られる理由は分からないが、僕は知っている理由を話す。
「少し前に、侯爵がここに連れてきてくれたから、覚えていたんだよ」
「あ、そうなの」
マイちゃんはそう言って、僕の襟首をつまむのを止めた。
僕が先に入ると、皆が通れるように少しずれた。
マイちゃん達も続くように部屋に入ると、アスクレイ侯爵が部屋に入り扉を閉めた。
「それで侯爵、僕に何か用があると伺ったのですが」
「はい、例の件の物が出来たので、お見せしようと思いまして」
「おお、この前話したのにもう出来たのですか⁉」
そうだ。これを使えば、明日の件はどうにかなるかもしれない。




