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転移したら賢者、転生して魔王の息子になりました。  作者: 雪国竜


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第39話 契約完了

 健康管理室を出た僕は、ゆっくりと歩きながら向かう。

(僕の番はまだだろうし、そんなに慌てないでいこう)

 歩きながら、僕は今まで契約の時に現れた神を見て思った。

 自分はどんな魔法が使えるだろうと。

(魔法を使えると思うと、楽しみで楽しみで叫びそうだっ)

 まぁ、こんな所で叫んだら変な人と思われるのでしないけどね。

 僕は色々と考えながら部屋に入った。

 そして入るなり驚きで言葉を失った。

 だって、椎名さんが魔法陣の中に入っているのだから。

 いや、魔法契約するのだから魔法陣の中に入っているのは良いんだ。

 息を深く吸って落ち着かせる。

(落ち着け、落ち着け。冷静に、冷静にならないと駄目だ)

 十分に落ち着いて冷静になったので、僕はカドモスさんを探す。

 カドモスさんは魔法陣の近くにいたので、すぐに見つかった。

「カドモスさん‼。これはいったい?」

「おお、イノータ殿。実は椎名殿が魔法陣に入るなり、契約の詠唱を区切らないで言いまして」

「何でこんな事に⁉」

「わたしにもさっぱりです」

 ともかく、今は椎名さんだ。

 そう思っていると、椎名さんは笑顔で魔法陣から出る。

「し、椎名さん……」

 僕が声を掛けると、それで椎名さんが気付いたようだ。

 笑顔で僕の元までくる。

「猪田君、張さんの具合はどうだった?」

「少し休んだら元気になると思うよ」

「……そうなんだ」

「それよりも、椎名さん」

「なに?」

「どうして、詠唱を区切らなかったの?」

「そんなの決まっているじゃない。張さんもしたんだから、わたしも出来ると思ったの」

「思ったのって、それでするのもどうかと思うよ」

 苦言を呈すると、椎名さんは泣きそうな顔をしだした。

「……張さんは良くて、わたしは駄目なの?」

「いや、そういうわけじゃあ」

「そう言うって事は、そうなんでしょう」

「僕は椎名さんの事を思って言っただけで」

「それは嬉しいよ。でも、わたしにも意地があるから」

「い、意地?」

「うん。わたしもこれくらいしないと、駄目だろうし」

 駄目?

 意味が分からない。

 僕は意味を聞こうとしたら、視界の端にマイちゃんが魔法陣に入るのを見た。

 僕はマイちゃんの方に顔を向けて祈った。

(頼むから、言われた通りに詠唱してくれ!)

 祈っていたら、マイちゃんが僕を見て笑顔を浮かべる。

 その顔を見て、僕は愕然とした。

(あの顔は、何かよからぬ事を考えている顔だ)

 伊達に幼なじみをしている訳ではない。笑顔一つで何を考えているか分かる。

 僕は待ってと言おうとしたが、遅かった。

『我、此処に万物の力を希う。遍く力よ。我が求めに応じて、此処、御成りあそばせたまえ』

 あああああああああっ⁉

 本当にするとは……。

 僕は項垂れた。

 そうしている間も魔法陣が輝く。

 暫し輝きが強かったが、暫くすると光が収まった。

 そして、マイちゃんは笑顔で魔方陣を出てきた。

「やったっ。これで、あたしも魔法を使えるっ」

 マイちゃんは嬉しそうに飛び跳ねていた。

 なんで、僕の幼馴染は人のいう事を聞かないのかな?

 もし、日本に帰れたらおばさんを交えて、そこの所話し合った方がいいかな?

 そう思いつつ、僕の番が来たので魔法陣の中に入る。

『我、此処に万物の力を希う』

 僕が詠唱すると、魔方陣は輝きだした。

『遍く力よ。我が求めに応じて、此処、御成りあそばせたまえ』

 言われた通り、区切って詠唱する。

 すると、魔方陣の輝きが強くなり始めた。

 やがて、魔方陣の輝きが収まったが、何故か皆が言う声が聞こえなかった。

 その代わりとばかりに、一羽の烏が出てきた。

 何だ。この烏? と思い見ていると、烏が口を開けた。

『貴様が、我を呼んだ者か?』

 しゃべった⁉ なに、この烏?

 驚いてみていると、カドモスさんが声を震わせながら話し出した。

「ま、まさか、この烏は、・・・神烏(しんう)!」

 えっ、何それ? 

 もしかして、神の使いとかもしくは神霊とかそういう存在ですか?

「伝承では、戦神の使いと言われる霊獣。精霊の一種です。まさか、この目で拝めむ事が出来るとは・・・・・・」

 カドモスさんは驚きのあまり、呆然としていた。

 これは、これ以上話しを聞いても駄目だなと思い、僕は烏を見た。

「僕がそうです」

『我が汝に契約を交わす条件は一つ』

「それはいったい」

『条件は汝の力を持って、我と戦え』

 つまり、魔法契約をしたかったら、この烏と戦って力を見せろという事か。

「何時頃でしょうか?」

『明日、太陽が頂点に差し掛かった時に、汝の元に現れよう。その戦い方次第で契約を交す。勇気ある戦いを期待する』

 そう言って烏の姿が消えた。

 烏が消えると、僕は安堵の息を漏らした。

「はぁ、何な疲れたな」

「さすが、ノっ君。あたしの幼馴染なだけはあるねっ」

 マイちゃんは面白そうに背中を叩いてきた。

 僕は全然、楽しくないけどね。

「コホン。では、次の方、どうぞ」

 カドモスさんが変な空気になった場を変えるため、咳払いをして空気を変える。

「次は俺か」

 そう言ったのは西園寺君だ。

 西園寺君は魔法陣の中に入り、最初教えられた通りに契約の詠唱を唱えた。

 こちらも問題なく、魔法契約が出来て、次は天城君が入り魔法契約を結んだ。

 西園寺君は『炎魔法と風魔法と闇魔法と雷魔法』と言い。

 天城君は『炎魔法と風魔法と光魔法と雷魔法』と言った。

 そうしている間に、他の人達の契約は終わった。皆、魔法を使える事を喜んでいた。

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