エリザの心中
わたくしエリゼヴィア・フォン・アスクレイは今家の厨房で料理をしている。
今日、我が屋敷にお父様が連れて来た客人に料理を出す為だ。
少し前にお父様が近い内に客人を連れて来ると言っていた。その時教えてくれた名前がイノータ・ノブヤスと言う人だ。
パッと見た感じ、身長はそれなりだが、女の子みたいな顔立ちであった。
中性的というのが、ピッタリな表現でしょうね。
なのだが、見ていると何故か安心感を感じる顔だ。
多分、お父様はこの者を気に入ったのだろう。
今でこそ、お父様は閑職に就いているが、第一王女様の教師をしていた上に、我が国の魔法師団の団長を務めていた。
その智謀と魔術から、他国から『智将』と言われる方だ。
少々というかかなり知識欲に貪欲な所を除けば、良い父親でもある。
そのお父様が気に入る人だ。さぞかし、知識豊富な方なのだろう。
「・・・・・・」
失礼だと思うが、じっと見ていた。
家族と使用人も皆は慣れているが、慣れていない人から失礼ではと思うかもしれないが。
わたくしはお父様が何処に気に入ったのか気になり、頭の上から足の先まで見る。
「エリザ。ご挨拶しなさい」
「は、はい。お初におめにかかります。エリゼヴィア・フォン・アスクレイと申します。以後お見知りおきの事を」
「この者は私の娘です。少々無口な所はありますが、身内贔屓を差し引いても出来た娘でございます」
「はぁ、そうですか」
お父様と話しているイノータ殿。
わたくしも名乗ったのだから、名乗るのは礼儀では?
でも、異世界人だから、そういう所わからないのかもしれないわね
「・・・・・・・あの、お名前は?」
わたくしが促すと、イノータ殿はうっかりしていたとばかりに挨拶してきた。
「すみません。挨拶を忘れてました。僕は猪田信康です。どうぞ気軽にイノータと呼んでください」
わたくしはそう挨拶されて驚いた。
儀礼など全くしない挨拶をしてくるので、驚いてしまった。
いつも、儀礼を交えて挨拶をしているからか、いわゆる普通の挨拶をする人を見て驚きを隠す事が出来なかった。
(本当に異世界の方なのね)
挨拶一つで、そう思えてしまう。
「・・・・・・よろしく、おねがいします」
とりあえず、こちらも挨拶を返す事にした。
その後、お父様と共にイノータ殿は屋敷に入った。
イノータ殿は入る時小さい声で「では、お邪魔します」とか言っていたけど、何かの礼法でしょうか?
屋敷に入ると、イノータ殿は呆然としていた。
「どうかしましたか?」
「いえ、別に何でもありません」
「それではわたしの書斎の方へ行きましょう。そこに見てもらいたい物がありますので」
「分かりました」
その後、書斎にお茶を出すために向かうと、お父様が目を瞑って考え事をしていた。
手持ち無沙汰のイノータ殿と少し話しをしてみた。
話してみたら、面白い考えを持っている子だと分った。
その際、お茶を飲んで「美味しい」と言ってくれた。
あまりに美味しそう飲むので、わたくしも嬉しかった。
「……ありがとうございます」
嬉しくて微笑むと、イノータ殿はわたしの顔を見て笑みを浮かべるのであった。
その後、お父様とイノータ殿の話をわたしは聞いていた。
夜になったので、イノータ殿が王宮に帰ろうとしたが、わたくしはもう少し話したいと思ったので、晩餐を共にするように勧めてみた。
イノータ殿は了承してくれた。
それを聞いて、わたくしは顔を緩ませた。
(そうと決まったら、今日は少し豪華にしませんと)
そう思い、わたくしは厨房に向かった。




