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転移したら賢者、転生して魔王の息子になりました。  作者: 雪国竜


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第25・3話 衝撃の報告

 狼煙が上がったのを見て、僕たちは急いでその場所に向かった。

 そうして走ること数十分。

 狼煙が上がった場所に着いた。

 そこにいたのは、騎士たちとクラスメートが一人だけだった。

「おお、来てくれたか。これで何とかなるだろう」

 騎士の一人が安堵したように言う。

 僕は先ほどから気になっていることを、ここにいる騎士たちに訊いた。

「クラスメートたちの姿が見えないのですが、どうかしましたか?」

 本来なら四人一組で行動しているはずなのに、なぜか一人しかいない。

 それを聞いた騎士たちは、気まずそうに互いの顔を見て頷き、おもむろに口を開く。

「あなたのお仲間たちは、あそこに入りました」

 騎士の一人が指で示した先には、洞穴があった。

 それを指差すということは、つまり。

「あの洞穴に入ったんですか!?」

「ああ、そうだ」

「詳しい経緯を話していただけますか」

 僕がそう言うと、騎士は頷いて事のあらましを話してくれた。

 話はこうだ。

 このメンバーも順調に魔物討伐をしていたが、その途中でこの洞穴を見つけたそうだ。

 中を覗いてみると薄暗く、何も見えない。

 下手に入るよりも、ここは報告だけして後日調査しようとした。

 しかしクラスメートたちが。

「何があるか入ってみたら分かるだろう」

 と言って制止も聞かず、洞穴の中に入ってしまった。

 ということがあり、狼煙を上げたそうだ。

 僕はその話を聞いて、何て迂闊なんだと思った。

 何がいるか分からない場所に、装備も万端とは言いがたい状態で入るなんて自殺行為に等しい。

 誰だよ、そんなこと言ったのは?

「えっと、誰が入ったの?」

 残っているクラスメート――村松瀬奈さんに訊いた。

 ショートカットの茶髪。

 肌は焼けているのか、僕たちより少し黒い。

 大きく開いた目。

 そして、かなり着崩した制服で、少々目のやり場に困る。

 シャツを開けているので、ブラと胸が見えそうだ。

 でもギリギリで見えないところをキープしている、あざとい格好をしている。

「えっと、穴に入ったのは、キモデブとチャラ男と、その取り巻きだよ」

 村松さんは指を折りながら、綽名というかその人の特徴を述べた。

 更に詳しく話を聞いたところ、入ったのは北畠智和君、長坂勝介君、そして長坂君の友人の跡部信茂君らしい。

 跡部君はよく長坂君と一緒に行動しているからな。

「なんで入ったか分かる?」

「なんかキモデブがこの洞穴を見てね――『デュフフフ、こんなところにある洞穴は絶対に伝説の武器があるに決まっている。ゲームだとそうだから間違いない』とか言って入っていって、その後をチャラ男と取り巻きが『あいつにそんな物持たせられるかっ!』って言って入っていったよ」

 村松さんは北畠君達の口調を真似つつ、入った理由を話した。

 それを聞いて、頭が痛くなった。

(正直、馬鹿としか言えない。ここはゲームじゃなくて現実だぞ。死んだらそこで終わりなのにっ)

 連れ戻しに行きたくても、騎士が四人で僕たちは五人だ。

 現状の戦力では少し心細いな。

(まだ魔法の手ほどきを受けていないから、魔法は使えないし、どうしよう・・・・・・)

 何か良い考えがないかと考えていたら、ユエがどこからか木を持ってきた。

 生木を折ったのではなく、枯れ木を山のように洞穴の前に積む。

「えっ、ちょ、ちょっとユエ!?」

「よし、あとはこれで火を点ければ」

 ユエは背負い袋から火を点ける道具を取り出し、火を点けた。

 この道具は箱の中に黒い物体が入っていて、その物体を適当に取る。

 物体自体は粘土のように柔らかいので簡単に取れる。

 それを手の中でこねると熱くなり、それを木に付けると発火する仕組みだそうだ。

 ユエはその手順に従い、火を点けた。

 木が燃えて煙が上がる。

 手で煽いで、煙を洞穴の中に漂わせる。

(まあ、枯れ木を積んだ時点で何をするか分かっていたけどね)

 ちなみに、切られてすぐの生木に火をつけてもなかなか燃えない。

 なぜかというと、生木には水分が大量に含まれているので燃えにくいのだ。

 逆に枯れ木だと水分がほとんどないので燃えやすい。

「ユエ、クラスメートなんだから、声を掛けて出てくるように言った方がいいと思うんだけど」

「いや、あんな自己中の奴らにはこれくらいした方がいい」

「やり過ぎだよ」

「なに、すぐに出てくる。・・・・・・ん?」

 洞穴の中から、複数の走る足音が聞こえてくる。

「ほらな、こうした方が早いだろう」

「後で謝りなよ」

「ふん、向こうが先に謝ったら――なにっ!?」

 複数の足音がしたので、長坂君たちだと思っていたら違った。

 洞穴から出てきたのは、子供くらいの身長で緑色の肌をした醜い顔の小人だった。

 皮の鎧をまとい、手には小剣と木の盾を持っている。

「ご、ゴブリンっ!?」

「なんでこんなところにいる!?」

 騎士たちは剣を構え、戦闘態勢に移行した。

小鬼(ゴブリン)? これが・・・」

 確か鬼人族と言われる種族に最も多い種と図鑑に書かれていた。

 知能はそれほど高くないが、器用で汎用性と繁殖力が高いので、様々な職種をしているとも書かれていた。

 しかし、ここは鬼人族の領地ではなく、人間の――それも王都の近くの森だ。

 なぜここにいるのかと思うが、今はそれよりもこいつらを倒すのが先だ。

 僕たちは騎士たちに少し遅れて戦闘態勢に入った。

「ひいいいいっ!?」

 村松さんは突然のことで驚いて尻もちをついていた。

 ゴブリンは村松さんを見て、ニタリと笑みを浮かべて跳びかかった。

「危ないっ!」

 僕はゴブリンと村松さんの間に入り込む。

「はぁっ!」

 掛け声と共にグレイブを薙ぎ払う。

 ゴブリンは跳んでしまったので、空中にいるため避けることができず、剣で防ぐこともできない。

 身体を真っ二つにされ、臓腑と血をぶちまけながら息絶えた。

 顔に熱いものがかかる。少し顔に血が付いたようだ。

 袖で拭い、袖を見ると緑色の液体が染みていた。

「ゴブリンの血の色は緑色なんだ……」

 緑色の血を流しながら息絶えたゴブリンを見た。

 悲痛に満ちた顔で、光を宿さない瞳が僕を見ている。

 さらに辺りに漂う血の匂いが、胃から何かがこみ上げてくる。

「ぐっ……!」

 手で口を抑えて、何とか吐くのを堪えた。

「……はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」

 息を吸って気を正す。

 深呼吸していたら、背中をさすられた。

 誰だろうと思っていたら、村松さんが背中をさすってくれた。

「大丈夫?」

「う、うん……ありがとう」

「ごめんね。あたしが驚いて何もできなかったから」

「別に村松さんのせいじゃないよ。気にしないで」

「あたしはもう大丈夫だから。イノッチは少し下がりなよ」

「でも」

「いいからいいから。それにもう終わりそうだし」

 そう言われて周囲を見ると、もうかなり片付いていた。

 騎士たちは簡単に倒しているし、ユエも方天画戟をぶん回して数匹をまとめて倒している。

 椎名さんも矢を放ち仕留めているし、マイちゃんもなんなく倒していた。

「みんな、すごいな……」

 僕なんか、やっと一匹倒したばかりなのに、皆は既に何匹も倒していた。

「さてと、あたしも一匹くらい倒さないとね」

 村松さんはそう言って、モーニングスターを構えた。

 女性でも振り回せるように小さく作られている。

 村松さんは鉄球を振り回して、ゴブリンを襲う。

「えええいっ!」

 振り下ろした鉄球がゴブリンの頭に当たる。

「%&$$##”$$&&!?」

 頭に直撃したので、意味の分からない悲鳴を上げて倒れるゴブリン。

 頭が割れて血と脳漿をぶちまけていた。

 グロいなと思いっていると、村松さんは気にした素振りはなかった。

「よ~し、次いくわよ」

 村松さんは鉄球を振り回しながら、次の獲物に向かう。

(みんな、強いなぁ……)

 正直、僕よりも強いなあと思った。

 そう思っていたら、皆ゴブリンを倒し終えていた。

「ふぅ、ようやく終わったか」

「これで全部かな?」

「多分、そうだと思う」

「いやぁ、チャンチャン達も強いね~」

「瀬奈、その“チャンチャン”はやめろ」

「えええっ、いいじゃん別に」

 ユエと村松さんが話している。

 そういえば、二人はよく話しているのを見たな。

 そう話しているのを見ていたら、騎士たち四人が洞穴に入っていく。

 中にまだゴブリンがいるか確認するためだろう。

 入ってから少しして、騎士の一人が戻ってきて言った。

「あなたたちと同じ制服を着た人たちの死体が見つかった」

 その一言を聞いた瞬間、目の前が暗くなった。

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