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転移したら賢者、転生して魔王の息子になりました。  作者: 雪国竜
第2章

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第10話 ようやく、今がどんな時代なのか知った。

 翌日。

 僕は朝目覚めるなり、寝間着から服に着替えて朝食を手早く食べた。

 そして、食べ終わると僕は昨日来た先生が来るのを待った。

 今日の授業は午前はメルビーナ、午後はヨアヒムという内容になっている。

 先生が来るまで暇なので、世話役のメイドに話しかける。

「シャリュ、メルビーナ先生はどんな人か知っている?」

 僕のお世話をする三人のメイドの一人で、名前をシャリュという。

 純粋な魔人族ではないのか、頭頂部には猫耳があった。

 更に尻尾も生えていた。

「そうですね。わたしが聞いた話では、魔法を使えばイザドラ様の配下の中でも一、二を争う実力者だと聞いています」

「ふ~ん、ほかには?」

「他ですと、人当たりの良い方と聞いています」

「そうなんだ」

 姉さんも随分と人選を頑張ったようだ。

 椅子に座りながら、シャリュと他愛のない話に花を咲かせていた。

 コンコン。

 すると、扉がノックされた。

 来たと思うと同時に、部屋にいるシャリュがドア越しに声を掛ける。

「どなたですか?」

『メルビーナです。リウイ王子に授業を教えに来ました』

 シャリュがドアを開けて、先生を部屋の中に入れてくれた。

 僕は椅子から立ち、先生を出迎えた。

「ほんじつは、よろしくおねがいします」

 僕は頭を下げて挨拶をした。

「っ!? コホン。はい、こちらこそよろしくお願いいたします」

 メルビーナ先生は、僕が挨拶したことに一瞬驚いたようだ。

 ああ、そっか。一応、僕は王子だから軽々しく挨拶しないと思われていたようだ。

「じゃあ、せんせい。きょうはなにをおしえてくれるんですか?」

「そうですね。普通なら数字や文字を教えるのですが、殿下の場合は少し進んだ授業を行おうと思います」

「あれ? ふつう、ここは何かテストをするなりして、がくりょくをしらべるのがふつうでは?」

「・・・・・・イザドラ様から、貴方の優秀さを耳にタコが出来るくらい聞きましたので」

 メルビーナ先生は疲れたような顔をして、必要ない情報を教えてくれた。

 ああ、その顔を見ただけで、イザドラ姉さんが普段から周囲に僕のことをどんな風に言っているのか分かった。

 さぞかし盛って色々な人に話しているのだろう。

「さて、では授業を開始します。今日は歴史の授業をしましょう」

 歴史と聞いて、僕は目を輝かせた。

 この国の歴史を知れば、僕が死んでからどれくらい経ったのか分かる。

 椅子に座り、メルビーナ先生の言葉を聞き漏らさないよう集中した。

「では、まずはこの国の成り立ちについて話しましょう」

 先生はそう言いながら、指をパチンと鳴らした。

 すると、ボンッと煙が上がったと思ったら、本が宙に浮かんでいた。

 そして風もなく、触れてもいないのに本が開き、ページが勝手に捲られていく。

「今日はここら辺をしましょうか」

 先生が開いた所には、この国の建国初期のことが書かれていた。

「現在、ギンヌンガ魔国の王、すなわち王子殿下の父君であられるヴァミリオン様は十七代目魔王陛下であらせられます。そこに至るまでの話はまた別として、今日は建国に至った経緯を簡単に説明しますね」

「はい」

「良い返事です。ではまず、我が国に魔人族以外の種族がそれほど多くない理由は分かりますか?」

「・・・・・・わかりません」

「そうですね。ではそこから説明しますね。元々我が国は、ここから西にある大陸に広大な領土を持っていました。ですが、とある戦争に負けて領土を全て失うことになりました」

「へえ、じゃあ、そのときに生まれた流浪の民がこの国を作ったの?」

「少し違いますね。この国を作ったのは確かに国を失った同胞ですが、とある王子の下で団結し、我が国の前身にあたる国をお作りになったのです」

「ねぇ、どうして戦争に負けたの?」

「簡単に言いますと、この世界には七つの種族がおりまして、人間族、獣人族、亜人族、竜人族、鬼人族、天人族、最後に我ら魔人族。これらの種族で領土を定め平和に暮らしていたのですが、殿下の先祖にあたる方である『暴君』ツシカーヨロウリ様が、この世界を魔人族の物にしようと征服戦争を始めたのです」

「そうなんだ」

 そう言えば、前世で召喚された時、王様だったか誰かがそんなことを言っていたな。

「最初は上手くいっていたようでしたが、全ての種族を敵に回したせいか、各種族が同盟を組んで魔人族領に攻め込んできました」

「まぁ、そうなるよね」

 どう考えても、どこかの種族と同盟を組むだろうに、そんなことも考えずに攻め込んだのだろうか?

 少し記憶は薄れているが、あの時会ったツシカーヨロウリはそんなに馬鹿な人には思えなかった。

 ああ、でも脳筋っぽい人だったから、そこまで考えが及ばなかったのだろうか?

「連合軍に攻め込まれ、当時の王都は陥落寸前だったそうです」

「それで、それで?」

「ですが、そこで連合軍の足並みが乱れたそうです。詳しくは知りませんが、征服後の領地分配で揉めて内紛が起こったそうです」

「そうなんだ・・・・・・」

「それを見たツシカーヨロウリ様は好機と見て、王都で籠城していた全戦力を結集し、連合軍を攻撃したのです。その攻撃により連合軍は敗走。辛うじて国の命運は保たれたのです。とはいえ、領土は荒らされ、魔人族の将軍達の多くは戦死を遂げていました。これを見たツシカーヨロウリ様は『これでは戦も出来んし、もう一度攻め込まれたら我が国はあっけなく滅びるであろう』と申したそうです」

「それで、ツシカーヨロウリさまはどうしたの?」

「復興するだけの財はありましたが、今回の戦で各種族が再び連合して攻め込んでくると予想したツシカーヨロウリ様は、ある決断をしました。それは何か分かりますか、殿下?」

「・・・・・・・・・・・・わかんない」

 本当は分かるのだけど、ここは分からないふりをしよう。

 今日は授業の最初だ。

 何でもかんでも答えてしまったら、教えることがなくなりそうだ。

「それは、新天地へ移住することを決断したのです」

「ふ~ん、そうなんだ」

 ここまでは、概ね前世の記憶通りだな。

「ツシカーヨロウリ様はまず全ての魔人族の財を食料と交換し、残った財は王都の蔵に仕舞い込みました。そして食料は船に積み込んで渡航の準備を始めたのです。同時に王都の守りも固めました」

「どうして、しんてんちにいくのに、おうとのまもりをかためたの?」

「ツシカーヨロウリ様は、こんな事態になったのは全て自分の責任だと言い、自分は新天地の王になるにふさわしくないとおっしゃったそうです。ですので、直参の親衛隊と共に王都の防備を固めたそうです」

「へえ、そうなんだ」

 なるほど。

 それで最後はあんなに晴れやかな顔をしていたのか。

「そして長い時間を掛けて渡航準備を完了し、出航されたのです。一部の魔人族の将と兵士達を残して」

 最初に領地へ攻め込んだ時は、あまりに抵抗なく進めたから焦土作戦でも仕掛けたのかと思ったけど違ったのか。

「その出航した船の中には、王子様のご先祖であり、ツシカーヨロウリ様の嫡子であるツーノカブ様も乗っていたそうです」

 なるほど。それが魔王の血筋か。

「そして海へ出た一団は、長い航海の果てにようやく陸地を見つけました。そこに新たな王国を建てたのです。後に『開拓王』とも呼ばれるツーノカブ様が建国した国名は『ノートゥーン』です」

「へぇ、それが僕のご先祖さまなんだ」

「そうです。それから千年ほど月日が流れ、今の我が国になりました」

「へえ~、・・・・・・・・・・・・って、せんねん!?」

「何か変なことでもありましたか?」

 メルビーナ先生は、驚いた僕の声を聞いて不思議そうな顔をする。

 そうだよな。

 いきなり大きな声を上げれば驚くよな。

「い、いえ、何でもありません」

「そうですか。まぁ、この『開拓王』から今の陛下の時代までについては、おいおい勉強しましょうね」

「はい、・・・・・・わかりました」

「今日は色々と知って疲れたでしょう。少し休憩しましょう」

「は、はい。わかりました」

 メルビーナ先生は本を閉じた。

 色々知って疲れたので、茶を飲んで気分を落ち着かせようと思った。

 シャリュに声を掛けようとしたらいなかった。

 どうやら気を利かせて、お茶を淹れに行ったのだろう。

 それにしても千年か。

 どうやら、僕の知り合いは皆死んでいると思った方が良さそうだな。

 ふぅ、転生した時点で何となく予想はしていたけど、こうして改めて分かると、何だか胸にぽっかり穴が開いた気分だ。

 そう思っていると、シャリュがお茶を運んできてくれた。

 僕はシャリュにお礼を言うと、茶を飲んだ。

 適温で、するすると飲めた。

 いつもと同じ茶なのに、なぜか今日はしょっぱい気がする。

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