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転移したら賢者、転生して魔王の息子になりました。  作者: 雪国竜
第2章

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第5話 何故、こんな所にいるのだろう?

 アドラ兄貴に半ば拉致されるような形で、僕は兄貴の乗騎である魔物に乗せられた。

 兄貴にこの魔物の名前を聞くと、『タイラント・ギガントドラゴ』という亜竜らしい。

 見た目は大型トレーラーほどもあるティラノサウルスそのものだ。

 その巨体に見合った鞍が背中に取り付けられており、三人くらいなら余裕で座れそうだった。

 兄貴は僕を前に乗せ、自分も鞍へと跨る。

 すると、部下たちも兄貴の乗騎より一回り小さい亜竜へと次々に騎乗し始めた。

「兄貴、あれは?」

 ここまで来ると、僕も無駄に駄々をこねるつもりはなかった。

 分からないことは素直に聞くことにする。

 部下たちが乗っている魔物について尋ねると、兄貴はそちらへ視線を向けた。

 見た感じはトリケラトプスに似ている。

 だが角は軽く二メートルはありそうだし、フリルも図鑑で見たものより幾分小さい。

「あれか。あれは『ツインホーンサウロス』っていう亜竜だ」

「亜竜なんだ」

「ああ。雑食だからな。何でも食うぞ。その分、馬力も半端じゃないがな」

 雑食か。

 草食じゃないんだな。

 さすが異世界だ。似ているようで結構違う。

「ちなみに、俺の乗騎にしているこいつはな。見た目に反して草食なんだ。面白いだろ?」

 このティラノサウルスみたいな魔物が、牛みたいに草を食べたり人参を齧ったりしているのか。

 想像するとかなりシュールだった。

「さて、全員騎乗したな」

 部下たちが全員騎乗したことを確認した兄貴は手綱を握り、分厚い門へと進んだ。

「開門しろ! これより平原に現れた魔物の討伐に向かう!」

「開門します。ご武運を!」

 門前にいた兵士が閂を外し、重々しい門を開く。

 兄貴は片手を上げて応えると、兵士は深く一礼して僕たちを見送った。

 門をくぐると、その先には城下町が広がっていた。

 後ろを振り返れば、今出てきた門が見える。

 さらにその奥には立派な城がそびえていた。

 考えてみれば、僕は魔王の息子だ。

 城に住んでいるのも当然か。

 城下町の大通りを進むと、住民たちが道の脇に並び、声援を送ってくる。

「おお、あれがアードラメレク殿下の皇竜騎士団か」

「でも殿下が乗っているのって亜竜じゃないか?」

 そんな声も聞こえてきた。

 皇竜騎士団か。

 前世の記憶には、そんな部隊は存在しなかった。

 だとすれば、僕が死んでからかなり長い時間が流れているのだろう。

 どれほど経ったのかは分からない。

 だが、一つだけ確かなことがある。

 もう、皆には会えないんだな・・・・・・。

「ん? 何か言ったか?」

「ううん。皇竜騎士団っていうんだ、この部隊」

「ああ、そうだ。ただ、今回は新兵中心で連れてきたからな。連携訓練も兼ねて亜竜を使ってるんだ」

 なるほど。

 今回連れてきている皇竜騎士団の大半は新兵ということか。

 つまり亜竜に乗っているのは新兵たち。

 なら、ベテランになれば本物の竜を与えられるのかもしれない。



 リウイがアードラメレクと共に城下町を進んでいた頃。

「リウー! どこー!? いたら返事してー!」

 ミリアリアが城内を駆け回りながら、リウイを探していた。

 その声を聞きつけたのか、廊下の角からロゼティータ、ヘルミーネ、フェルが顔を覗かせる。

「どうしたの? そんな大きな声を出して」

「それがね、リウがどこかに行っちゃって」

「リウイが?」

「あら、それは大変ね」

 ロゼティータは肩をすくめた。

「どうせ歩けるようになったのが嬉しくてあちこち歩き回り、疲れてどこかで寝ておるのじゃろう。放っておけばそのうち見つかる」

「でも、お城の中を探したけど全然見つからないんだよ」

「・・・・・・・・・・・・」

 ヘルミーネの表情が険しくなる。

 そして何かを決意したように踵を返そうとしたその瞬間、フェルとロゼティータが素早く裾と肩を掴んだ。

「待て、ヘルミーネ。どこへ行くつもりじゃ?」

「どこって、リウイを探しに」

「落ち着きなさい。ウーちゃんが可愛いのは分かるけど、今のあなた、麾下の部隊を総動員して探し出しそうな顔をしていたわよ」

「~~~~~~~~~」

 ヘルミーネは言い返せず、顔を背けた。

「図星か。本当に分かりやすいのう」

「あはは・・・・・・。流石にヘル姉の部隊を総動員するのはやりすぎじゃないかな?」

「そうよ。まずは人に聞いてみればいいでしょう」

 ちょうどその時、前方からメイドが歩いてきた。

「ねえ、そこのあなた」

「はい。何でしょうか?」

「三歳くらいで蒼銀髪の男の子を見なかったかしら?」

「蒼銀髪の子供ですか。私は見ておりませんが、他の者が見ているかもしれません。少々お待ちください」

 そう言うと、メイドはこめかみに指を当てて目を閉じた。

 しばらくして目を開き、一同へ向き直る。

「確認が取れました。お探しの子供は第二王子アードラメレク様と、その麾下の皇竜騎士団と共に魔物討伐へ向かわれたそうです」

「ほれ見ろ。そんなに心配することでも・・・・・・」

 ロゼティータは途中で言葉を止めた。

 今、メイドがとんでもないことを言わなかったか。

 フェルも引きつった笑みを浮かべる。

「ねえ、もう一度言ってもらえるかしら? 誰が誰と一緒にどこへ行ったの?」

「お探しの子供は、アードラメレク王子と皇竜騎士団の方々に同行し、魔物討伐へ向かわれたとのことです」

「・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

 三人は揃って沈黙した。

 そして数秒後。

「・・・・・・・・・・・・こうしてはおれん。イザドラの耳に入る前に何とかせねば」

 ロゼティータが真顔で呟く。

「そうね。イザドラ姉さん、ウーちゃんのことを本当に可愛がっているもの。アードラと一緒に魔物討伐へ行ったなんて知ったら」

 フェルの脳裏に、口から火を吹きながら激怒する姉の姿が浮かんだ。

「それだけならまだよい。最悪の場合、あやつの軍団が動くぞ」

 イザドラは次期宰相と謳われるほど政務に優れている。

 だが武勇においても姉弟の中で屈指の実力者であり、自ら鍛え上げた『魔導甲殻兵団』という精鋭軍団を率いていた。

 魔力を動力とした兵器を運用するその軍勢は、末端の兵士ですら歴戦の強者揃いである。

 もし今の話を聞けば。

 間違いなく軍団を率いてアードラメレクの後を追うだろう。

 そんな未来が二人には容易に想像できた。

「とにかく、イザドラ姉さんの耳には入れちゃ駄目ね」

「当然じゃ」

「・・・・・・あれ? ヘル姉は?」

 ミリアリアの言葉に、ロゼティータたちは周囲を見回した。

 だが、そこにヘルミーネの姿はない。

「いつの間に!?」

「まずい! あやつ、自分の軍を集めに行ったな!」

「早く止めないと!」

 三人は慌てて駆け出した。

 しかし、ヘルミーネの元へ辿り着いた時には、すでに軍勢が集結を始めていた。

 慌てて三人が説得していると、その騒ぎを聞きつけたイザドラ本人まで現れる。

 事情を説明するにつれ、イザドラの表情は徐々に険しさを増していった。

 やがて、その顔はまるで怒れる龍そのものとなる。

 周囲にいた兵士たちは溢れ出す威圧感に思わず後ずさった。

 そして。

「・・・・・・あの愚弟は」

 低く呟いた次の瞬間。

 ボッ――――!!

 怒りのあまり、口から炎が噴き出した。

 案の定、イザドラは即座に『魔導甲殻兵団』の招集を命じようとする。

 ロゼティータたちは全力でそれを阻止しようとしたが、今度はヘルミーネまで便乗して自軍の出動準備を始めていた。

 結果。

 リウイ一人を追いかけるために二個軍団が動きかけるという前代未聞の事態となり、三人は文字どおり実力行使で二人を止める羽目になった。

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