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転移したら賢者、転生して魔王の息子になりました。  作者: 雪国竜
第2章

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第4話 歩けるようになったらする事は、一つだ。

 ハイハイから二足歩行ができるようになり、それから三年が経った。

 言葉も、まだたどたどしいながら話せるようになっている。

 おそらく、ここは僕が死んだ後に転生した世界エルディアスだろう。

 ただ、自分が今どこにいるのかは分からない。

 そこで情報収集も兼ねて、この場所に何があるのか確かめようと部屋を出ることにした。

 世話係のメイドに着せてもらった服装を姿見で確認し、乱れがないか確かめてから扉を開く。

 そろそろミリアリア姉さんが遊びに来る頃だが、今は気にしない。

 それよりも、この場所について知ることの方が大事だった。

 部屋を出ると、僕は右と左、どちらへ進むか少し考えた。

「・・・よし、こっちにしよう」

 利き腕が右だからという単純な理由で、右へ進むことにする。

 そのまま廊下を歩いていく途中、何人かのメイドや使用人らしき魔人族とすれ違った。

 皆、僕の顔を見るなり正体が分かったのか、軽く会釈して通り過ぎていく。

 僕も会釈を返しながら歩みを進めた。

(うーん・・・・・・図書室はどこにあるんだろうな)

 周囲を見回しながら歩いていると、前方から鎧姿の騎士たちがこちらへ向かってきた。

 僕は邪魔にならないよう廊下の端へ寄る。

 先頭を歩く男は後ろの騎士と話していたが、ふと僕に気付き視線を向けた。

「んん?」

 男は僕を見るなり首を傾げる。

 どうやら初めて見る顔なので、誰なのか分からないらしい。

 僕もその男をじっと見つめた。

 黒髪に三白眼。赤い瞳と額に生えた二本の小さな角が特徴的だ。

 精悍な顔立ちに筋骨隆々の体躯。

 まるで野性味そのものを人の形にしたような男だった。

 しかも上質な服を着ているはずなのに、筋肉のせいで今にも弾けそうなほど張り詰めている。

(なんかあれだな。世紀末覇者伝説の主人公みたいに、少し力を入れたら服が弾け飛びそうだ)

「え、えっと・・・」

「誰だ、お前」

 男は率直にそう尋ねた。

 いや、それはこっちが聞きたい。

「殿下。この方は」

 先ほど男と話していた騎士が耳元で何かを囁く。

 今、確かに「殿下」って言ったよな?

「ああ、お前が新しく生まれた弟か」

 男は納得したように頷くと、大きな手で僕の頭を掴んだ。

 そして髪がぐしゃぐしゃになるほど乱暴に撫で回す。

「がっはははは! そうか、お前がリウイか! 初めて見たが、こんなにちっこいとはな!」

 父さんに頭を撫でられたことはある。

 だが、ここまで豪快な撫で方をされたことはない。

「俺はアードラメレクだ。お前の……えーっと、何番目だったか?」

「第二王子であらせられます、殿下」

「おお、そうだった! つまりお前の次兄だ! 好きに呼んで構わんぞ!」

 アードラメレクは豪快に笑った。

 うん。

 この人はアニキと呼ぶのが一番しっくりくる。

「うん。兄貴」

 そう呼ぶと、アードラメレク――長いからアドラ兄貴でいいや――は目を丸くした。

「お前、もう話せるのか! こいつは驚いた!」

 そして何かを思いついたように笑う。

「よし、決めたぞ!」

 そう言うなり、アドラ兄貴は僕をひょいと抱え上げ、自分の肩へ乗せた。

 え? 何する気?

「今日は魔物退治に行く予定だったが、お前も来い」

「はい?」

「がっははは! 男なら戦うところを見るのも悪くないだろう!」

 いやいやいや。

 いくらなんでも早すぎるでしょう。

 いつか連れて行くのはいいとしても、せめてもう少し大きくなってからにしてください。

「殿下! 弟君を魔物退治へお連れするなど危険です! どうかお考え直しください!」

 うん、その通りだ。

 名前も知らない側近さん、もっと言ってやってくれ。

「がっははは! 心配はいらん! こいつも親父の血を引いているんだ! 魔物退治程度で肝を潰すような柔な奴ではない!」

「ですが」

「よし、お前たち! 出発だ!」

 アドラ兄貴はそう叫ぶと、さっさと歩き出した。

 後ろから側近が。

「殿下! まだ話は終わっておりません! お待ちくださいませー!」

 と慌てて追いかけていく。

 苦労人なんだろうな。

 そんなこんなで、なぜか僕も魔物退治に同行することになった。


 同じ頃。

「リウー、遊びに来たよー」

 そう声を掛けながら、ミリアリアは部屋へ入った。

 だが、そこには誰もいない。

「あれ? おかしいな。どこかに隠れてるのかなー」

 部屋の隅々まで探してみるが、リウイの姿は見当たらなかった。

 仕方なく廊下へ出て探し始める。

 その途中、どこからともなく豪快な笑い声が聞こえてきた。

「あ、この笑い声・・・アドラ兄の声だ。ずいぶん機嫌が良さそうだけど、何かあったのかな?」

 一瞬考え込んだものの、すぐに首を振る。

「まあ、いっか。今はリウを探さなきゃ」

 しかし、部屋の中を探し回ってもリウイはどこにも見つからなかった。

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