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転移したら賢者、転生して魔王の息子になりました。  作者: 雪国竜
第1章

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第96話 魔王の間に到達

 僕達が歩き出すと、また『魔王の軍勢』の兵士達が現れた。

 それらを倒しながら進むと、いくつもの部屋が並んでいた。

 ドアを開けてみても、どの部屋も無人だ。

 そうして回り込んでいくと、最後の部屋が目に入った。

「さっきと同じで、この部屋に四魔将の一人が居るのだろうね」

「ああ、そうだな」

「開けるぞ」

 遠山君がそう言ってドアを開けると、階段の前に全身黒い鎧をまとった人物が立っていた。

 身長は二メートル以上。突き立てた大剣に手を添え、僕達を見下ろしている。

 耳の上あたりには黒い牛のような角が生えたクローズドヘルム。

 スリットから覗く金色の瞳が、鋭く輝いていた。

「わたしは四魔将の一人、『巨山』のキョライシだ。いざ、尋常に勝負」

 名乗りながら、キョライシは大剣を引き抜き構える。

 遠山君が前に出て武器を構えた。

「行け。ここは任せろ」

「遠山、ここは任せたぞ」

 西園寺君がそう言って階段へ走り出す。

 天城君は苦虫を噛み潰したような顔で続き、僕もその後を追った。

 キョライシは僕達には目もくれず、剣先を遠山君へ向けている。

(行かせてくれるということかな?)

 そう思いながら、僕達は階段を駆け上がった。


 階段を上りきると、部屋までの一本道が続いていた。

 恐らく、あの部屋にさらに上へ続く階段があるのだろう。

 次は誰が四魔将と一人で戦うか――いわば“生贄”だ。

 残っているのは僕、天城君、西園寺君の三人。

 僕は白兵戦よりも魔法の撃ち合いや支援向き。

 天城君と西園寺君はどんな相手でも渡り合える万能型だ。

 敵が魔法使いなら僕が相手をし、二人を先に進ませるのもありだ。

「誰が四魔将の相手をするかだが、相手を見てから決めないか?」

 西園寺君の提案に僕達は頷いた。

 そして扉を開ける。

 扉の先には、階段の前で口に薔薇を咥え、手鏡で自分を見つめる男がいた。

「美しい……鏡に映るわたしは美しすぎる。ああ、この美しさは美の女神ですら嫉妬するだろう。神々ですら嫉妬する美しさ……まさに罪……」

 自己陶酔しているらしい。

 確かに細い顎、切れ長の眼差しは女性のようだが、胸元は平らで男性だとすぐ分かる。

「何だ、あいつは?」

「痛い人じゃないのか?」

「どっちかと言うと、ナルシスト過ぎてオネェの一歩手前ぐらいの人かもよ」

 キャラの濃さに、僕達はヒソヒソと話す。

 ようやく声が耳に入ったのか、男は鏡を見るのをやめて懐にしまい、僕達へ向き直った。

「ふっ、ようやくここまで来ましたか。あまりに遅いので待ちくたびれましたよ」

 意味もなく前髪を払う仕草に、僕達はさらに引いた。

「わたしは四魔将筆頭、『疾風』のマクトゥサです。少しの間ですが、見知り置きを」

 貴族のように胸へ手を当てて礼をする。その気障な仕草に、僕達はまた引いた。

「ここで四魔将筆頭が姿を見せるとは……この先に魔王が居るのは間違いないか」

「その通りです。魔王陛下は玉座で貴方達をお待ちですよ。ですが――」

 マクトゥサは腰の剣を抜き、半身を引いて構えた。

 フェンシングのような構え。つまり突き主体の高速剣技だ。

(確か、フェンシングは最速の剣技って本で読んだな)

 斬撃は「振りかぶる→振り下ろす→斬る」の三動作。

 突きは「突く→引く」の二動作。

 一動作少ない分、速い。だから突きは最速の技。

(突きを主体にした剣技だから『疾風』か)

 さて、どうするか。

 僕が相手だと魔法の発動中に攻撃されて守りで手一杯になりそうだ。

 ここは西園寺君か天城君だろう。

「俺が相手をしてやろう」

 西園寺君が前に出た。

「貴方が相手ですか。良いでしょう」

 マクトゥサは剣先を西園寺君へ向ける。

「お前達、早く上に行け」

「分かった……死ぬなよ、西園寺」

「ふっ、誰に物を言っているんだ。お前は」

 いつものやり取りをして、僕達は階段を駆け上がった。

 階段を上りきると、もう扉しかなかった。

 つまり、この先に誰が居るかは分かりきっている。

「ここに魔王が居るのだな」

「多分ね」

 四魔将は四人。あと一人いるはずだが、魔王の側に控えているのかもしれない。

 普通なら筆頭がここに居るはずだが――。

「……よし、入るぞ」

 天城君は頬を叩いて気合を入れた。

 僕も深呼吸して気持ちを落ち着ける。

「いいよ」

 僕がそう言うと、天城君は扉を開けた。

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