第94話 オレバーツビムア攻略戦 後
本陣で待つこと数時間。
各種族の軍から選抜された千人規模の部隊が続々と集まってきた。
人間族軍も各軍から選ばれた精鋭に加え、僕たち異世界転移組が配属されることになった。
選ばれたのは僕、天城君、西園寺君、遠山君、そして斉藤浩太君の五人だ。
斉藤君はというと、自由奔放というか、空気を読まないというか……クラスメートをよく振り回すタイプだ。
一言余計なことを言って皆の気持ちを逆なでするので、正直嫌われている方が多い。
僕はというと、対応に困る。
何せ話しかけてくる内容が「なぁ、真田とはどこまでいった?」とか「張を堕としたら逆玉じゃん」とか「椎名はお前に惚れてるから『ヤラナイカ?』って言えばすぐヤれるぜ」など、返答に困るものばかりだ。
当然、そんなことを言った後はマイちゃん達に怒られている。
その斉藤君の職業は『狩人』。
実家が弓道を教えているらしく、弓の扱いは抜群に上手い。
数キロ先の的のど真ん中を一度も外さず射抜けるほどで、後方支援要員として選ばれた。
遠山君の職業は『重装騎士』。
特性なのか好みなのか、全身重装鎧でまさにゲームでいう壁役だ。
天城君は勇者、西園寺君は魔法戦士、僕は賢者といったところだろう。
他のメンバーは本陣の護衛に回された。
マイちゃんとセナさんは不満たらたらだったが、なんとか了承してもらった。
目的地へ向かう前に、選抜部隊の指揮官を誰にするかで話し合いが行われた。
この作戦が成功すれば首都陥落が決定的になるため、各種族の隊長達は譲らず、話し合いは紛糾した。
獣人族、亜人族、天人族、鬼人族、竜人族、人間族。
それぞれが自分達こそ指揮を取るべきだと主張し、口論は収まらない。
(このままじゃ作戦開始前に部隊が瓦解するぞ……)
そう思っていたところで、
「静まれ」
アウラ王女の一言で場が凍りついた。
「貴様らは、わざわざ本陣に来て、わたしに醜い口喧嘩を見せに来たのか?」
その言葉に誰も反論できず、場は静まり返る。
アウラ王女は息を吐き、続けた。
「種族が違えば考え方も違う。それは道理だ。そこで提案がある」
王女は六本の棒を取り出し、そのうち一本の先端が赤く色づけられていることを示した。
「この箱から赤い棒を引いた者が奇襲部隊の指揮を取る。異論はあるまい?」
誰も反対できず、全員が頷いた。
棒を箱に入れ直し、不正がないように一斉に引かせる。
「選んだな? では引け」
一斉に棒が引かれた。
「よし! これで汚名返上できる!」
選ばれたのは天人族の隊長、ミヒャエル・セラフィエルだった。
人間族が選ばれたら不正を疑われただろうが、天人族なら誰も文句は言えない。
こうして指揮官は決まり、僕達は出撃準備に取り掛かった。
森に入り、目的の洞穴を見つける。
広さの都合で全軍が一度に入れないため、亜人族、獣人族、天人族、鬼人族、人間族、竜人族の順で入ることになった。
僕達は別作戦を行うため最後に入る。
ミヒャエル隊長には既に伝えてあるので問題ない。
(アウラ王女には終わってから報告すれば……怒られないよね、多分)
竜人族が洞穴に入ったところで、西園寺君が言う。
「俺達も行くぞ」
僕は頷き、愛騎ヴァイドに声をかけた。
「行ってくる。良い子で待ってるんだぞ」
「クルルル」
「危険が来たら逃げてもいいからな」
「クルル」
「猪田、そろそろ行くぞ」
「あ、うん。じゃあ後でね」
ヴァイドの鳴き声を背に、僕達は洞穴へ入った。
洞穴は人工的に造られた部分が多く、罠はないと思われるが警戒しながら進む。
最奥には幾何学模様の魔法陣と、その中心に黒い穴があった。
「これが首都に繋がる道か」
「だろうな。誰もいないし安全は確保されてるはずだ」
西園寺君が先に飛び込み、天城君が続く。
僕達も恐る恐る穴へ飛び込んだ。
そこは施設のような場所で、誰もいない。
「ここが敵の首都内か」
「静かすぎるな」
「罠じゃないだろうな」
「罠なら先に入った奴らの死体があるはずだろ」
「だね。じゃあ作戦は成功?」
「どうだろ――」
西園寺君が言い切る前に、爆発音と悲鳴が響いた。
「……成功したようだな」
「じゃあ俺達は」
「ああ、当初の作戦通りに行くぞ」
「うむ」
「へっへへ、腕が鳴るな」
「猪田もいいな?」
「もちろん。僕が考えた作戦だし、異論はないよ」
「よし」
西園寺君は剣を抜き、宣言した。
「俺達はこれより敵の本陣、王宮に突入して魔王を討つ!」
僕達は頷き、行動を開始した。




