第77話 他種族の軍が王都に集結する
王都へ続々と、各種族の軍が入って来る。
僕は見張り台の上から遠見の魔法を使い、その様子を眺めていた。
どの種族の軍が今こちらへ向かっているのか、一目で分かる。
ちなみに、今王都に近づいているのは鬼人族の軍だ。
何度か交渉で各種族の領地を訪れたが、服装の文化が本当にバラバラだ。
亜人族と天人族は西洋風、竜人族は中華風、鬼人族は戦国時代の日本のような服装で、獣人族はどこか中東っぽい。
こうして軍が集まると、まるで世界の祭典でも始まるかのようだ。
そんなことを考えていると、僕の肩にバズヴがふわりと降り立った。
『これだけの他種族の軍が人間族の王都に集結するとは、なかなか見られぬ光景じゃ』
「そうだね。でも、これから総大将を決めて、侵攻ルートを調整して、戦いで獲得した捕虜の待遇も決めて、それから――」
『そんな小難しい話を我にしてどうする。そういうのは上の者と決めればよかろう』
「確かにそうだね」
『それよりもじゃ。お主に客人が来ておるぞ』
「客?」
振り向くと、第二王女セリーヌ様が立っていた。
その後ろの護衛が、僕を咎めるような目で見てくる。
「お、おおっ⁉ これは王女様。こんな所に、いかなる御用で?」
僕は慌てて姿勢を正し、王女様に尋ねた。
「いえ、今どの種族の軍が王都に来ているのか気になりまして。見張り台から見ようと思ったら、男爵がいらしたのです」
「そうでしたか。では、私は用がありますので、これで失礼します」
頭を下げてその場を離れる。
王女様が何か意味ありげに僕を見ていた気がしたが、気のせいだろう。
見張り台を降りて少し歩くと、バズヴが話しかけてきた。
『別に王女が居ても問題なかろうに、何故あの場を去った?』
「いや、他意はないんだけどさ。ただ……」
『ただ?』
「あの王女様、何を考えているのか分からなくて、ちょっと苦手でね」
『ほぅ。お主にも苦手なオナゴがおるのじゃな』
「どういう意味?」
『沢山のオナゴを誑す男がそう言うと意外でな』
「……別に誑してるわけじゃ」
『知らぬは本人ばかりじゃぞ。お主がそう思っても、周りはそうは思わぬものじゃ』
「? どういう意味?」
『自分の胸に手を当てて考えよ』
いや、胸に手を当てても分からないから聞いているんだけど。
そんなやり取りをしていると――
「男爵様」
「うわっ⁉ ミルチャさんか」
「? どうかしましたか?」
「国王陛下が男爵様をお呼びです」
「陛下が? どこへ行けば?」
「謁見の間へ、と」
「分かりました」
僕はミルチャさんと共に、謁見の間へ向かった。




