第76話 連合軍結成
「「他種族と連合して、魔人領に侵攻っ⁉」」
「し~っ。まだ誰も言ってないんだから、大声出さないでよ」
僕が宥めると、二人ははっとして口を押さえた。
「すまん。もう魔人領に攻め込んで魔王を討つなんて、無理だと思っていたからな」
「だよね。あたしもそう思ってたよ」
まぁ、今までは侵攻する前に国力を回復させる必要があった。
それが三年で済んだのは、むしろ早い方だろう。
「でも、これから各勢力との折衝が大変だよ」
「そこはそれ、あれだ」
「うん。あれだね」
……あれ? どういう意味?
「「がんばれ‼」」
……うん。なんとなくだけど、そんな感じはした。
とりあえず、各勢力の知り合いに書状を送り、まずは商人達との会見を申し込む。
軍の兵糧と武具の価値を、こちらの国の貨幣基準でどれくらいになるか調べてもらい、それから大量に買いそろえないといけない。
もちろん、その席で反対も出るだろう。
そのときはデメリットとメリットを示して、交渉していくしかない。
「さて、早く書状を書いて、会見の準備をしないと」
僕は席を立ち、宰相に頼んで部屋を借り、知り合い宛ての書状を次々と書き上げた。
各種族の商人に届くようにするには、一つの種族につき最低二通は必要だ。
「そういえば、椎名さんと村松さんは?」
「あの二人か? 今は修業に行ったぞ」
「修業?」
一年前に会ったとき、椎名さんはドラゴンを一人で倒したと言っていたし、村松さんは鬼人族の中でも好戦的で知られる“大鬼”の群れを単独で滅ぼしたと言っていた。
もう十分強いはずなのに。
「なんか、もっと強くならないといけないとか言っていたな」
あれ以上強くなって、誰と戦うつもりなんだろう。
「それと、強くならないと釣り合わないとかどうとかも言ってなかった?」
「……そんなことも言っていたな」
釣り合わない、ねぇ。
あれだけ強かったら、釣り合いを取る相手も大変だろう。
「じゃあ、僕は仕事に行くから」
「うむ。しっかりこなして、この国に信康ありと謳われるような働きをしろよ。今後のためにな」
書状を書くだけで、それは無理だと思う。
「頑張ってね! 疲れたら言ってね。疲れたら甘い物を食べるといいって言うから、あたしが厨房で一つ作るから」
それはやめてください。
厨房が大惨事になる未来が見えるから。
マイちゃんは本当に料理のセンスがない。
おばさんから「キッチンに立つな」と厳命されているほどだ。
部屋を出た僕は、宰相に頼んで部屋を借り、書状を書き上げてすぐに届けた。
各種族の商人達と会い、意見交換しながらこちらの話を進める。
快く受け入れる者もいれば、渋る者もいる。
渋る者には、色々な手段を使って頷かせた。
ちなみに賄賂は使っていない。
単に、向こうが扱っていない商品を扱わせるようにしただけだ。
そんなこんなの調整をしていたら、時間は瞬く間に過ぎた。
各種族との交渉も終わり、一ヶ月後には各種族の軍が王都に到達するそうだ。




