表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/20

第5話妖市崩壊

地下から地上へ出た瞬間だった。レンの目に飛び込んできたのは炎だった。屋台が燃えている。赤い火が夜の空を染めていた。煙が立ちこめる。妖市の通りは、もはや市場ではない。戦場だった。


「逃げろ!!」


「人狩りだ!!」


「子どもを連れていけ!!」


叫び声。悲鳴。瓦礫。レンが呟いた。


「……最悪だな」


白蘭の声は低かった。


「……」


怒りを押し殺している声だった。


レンが横を見る。


「白蘭」


「分かっている」


白蘭は刀を抜いた。静かな金属音。


 シャッ。


「全員助ける」


レンが笑った。


「いいね」


そのとき。狐耳の少女が走ってきた。


「兄さま!!」


リンだった。白蘭が振り向く。


「リン」


「無事か!?」


「うん!」


リンは息を切らしていた。


「でも……」


振り返る。市場の奥。檻。鎖。そこには捕まった妖たちがいた。小さな妖。獣の妖。翼のある妖。十人以上。檻に閉じ込められている。その周囲に立つのは黒装束の妖たち。


鎖を持つ者。槍を持つ者。明らかに人狩りの仲間だった。レンが呟く。


「なるほど」


「団体様か」


そのとき遠くで爆発。


ドォォォォン!!


市場の塔が崩れた。リンが震える。


「妖市が……」


白蘭が静かに言う。


「……大丈夫だ」


「取り戻す」


レンが拳を鳴らす。


バキバキ。


「まずはあいつら」


視線の先。檻の前に立つ大男。巨大な斧を持っている。妖の一人が言った。


「動くな」


檻の中の妖が震える。


「売り物だ」


その言葉。レンの目が変わった。


「……売り物」


白蘭が小さく言う。


「レン」


「ん?」


「壊すな」


レンが笑う。


「努力する」


次の瞬間レンが消えた。


ドン!!


地面が爆発する。大男が振り向いた。


「何――」


ドゴォォォン!!!


拳。斧ごと吹き飛んだ。妖たちが固まる。


「……え?」


レンが立っていた。拳を振り抜いた姿で。


「こんばんは」


静かな声。妖の一人が叫ぶ。


「敵だ!!」


一斉に武器が向く。レンが言う。


「来い」


最初の妖が突っ込む。槍。


シュン!!


レンが掴む。


ポキッ。


槍が折れた。


そのまま。


ドゴン!!


妖が宙を舞う。


白蘭が動いた。


シュン。


刀が閃く。


ズバン!!


二人の妖の武器が斬れた。そのまま蹴り。


ドン!!


妖が転がる。リンが呟く。


「……強すぎ」


檻の妖たちがざわめいた。


「助けが……」


「誰だあいつら」


レンが言う。


「檻開けるぞ」


鎖を掴む。白蘭が言う。


「待て」


「ん?」


「罠だ」


レンが止まる。次の瞬間。


屋根の上から声。


「正解」


全員が上を見る。そこにいたのは細身の男。長い鎖を巻きつけた妖。笑っている。


「人間」


レンが言う。


「またお前らか」


男が笑う。


「妖市は宝だ」


「珍しい妖」


「人間」


「全部金になる」


白蘭の声が冷たい。


「下種」


男が手を上げた。次の瞬間。屋根。


路地。瓦礫の影。次々と現れる黒装束。


二十人以上。リンが震えた。


「……多い」


レンが笑う。


「いいね」


拳を握る。


「まとめて来い」


男が言う。


「捕まえろ」


次の瞬間妖たちが一斉に動いた。


妖市の中央。炎の中。大乱闘が始まる。


炎の中。妖市の中央通り。二十を超える黒装束の妖たちが、一斉に動いた。


「捕まえろ!!」


鎖が飛ぶ。槍が向く。刃が光る。


その中心にいるのはレン。


「いいね」


レンは拳を握った。


 バキバキ。


「まとめて来い」


最初の妖が突っ込んだ。


鎖を振り回す。


シュン!!


レンの首を狙う。レンは半歩横へ。


鎖が空を切る。そのまま腕を掴む。


「よっと」


ドゴォォン!!


地面へ叩きつけた。石畳が砕ける。妖が動かなくなる。次の瞬間後ろから槍。


シュン!!


レンが振り向きもせず腕を出す。


ガシッ。


槍を掴む。妖が驚く。


「は?」


 レンが言う。


「危ないぞ」


ポキッ。


槍が折れた。そのまま拳。


ドン!!


妖が吹き飛ぶ。屋台に突っ込んだ。


ドシャァァン!!


リンが遠くで叫ぶ。


「……強すぎ!!」


白蘭はすでに動いていた。静かな足取り。


刀が光る。


シュン。


妖が振り下ろした刃。白蘭の刀が触れる。


ズバン!!


武器が真っ二つ。妖が固まる。次の瞬間白蘭の蹴り。


ドン!!


妖が地面に転がる。白蘭の目は冷たい。


「邪魔だ」


そのとき屋根の上の男が笑った。


「強いな」


鎖を操る妖。細身の男。


「だが」


手を上げる。


「これならどうだ」


次の瞬間。屋根。路地。


さらに黒装束が現れる。


十人。二十人。三十人。


リンが震えた。


「……増えた」


檻の中の妖たちが叫ぶ。


「無理だ!」


「逃げろ!!」


レンが笑った。


「祭りだな」


白蘭が小さく言う。


「レン」


「ん?」


「五分で終わらせる」


レンが肩を回す。


「いいね」


その瞬間。二人が同時に動いた。


ドン!!


地面が爆ぜる。レンが突っ込む。最初の妖へ拳。


ドゴォォン!!


一人が宙を舞う。


その体が後ろの妖にぶつかる。


ドン!ドン!!


二人まとめて倒れる。レンが笑う。


「ボウリング」


後ろから鎖。


シュン!!


レンの足に巻き付く。妖が叫ぶ。


「捕まえた!」


レンが言う。


「そうか?」


力を込める。


バキン!!


鎖が砕けた。


「嘘だろ!?」


そのまま蹴り。


ドン!!


妖が壁に叩きつけられる。


一方白蘭。


静かな動き。刀が閃く。


シュン。ズバン!!


二人の武器が同時に斬れる。


妖たちが驚く。


「速――」


言い終わる前に白蘭の斬撃。


ドン!!


二人が倒れる。白蘭の妖力が広がる。


空気が重い。周囲の妖が足を止める。


「……なんだこの圧」


リンが呟く。


「兄さま怒ってる」


そのとき。遠くから悲鳴。


「助けて!!」


全員が振り向く。市場の奥。別の檻。


そこには小さな妖たち。子どもだった。


それを囲む人狩り。レンの顔が変わる。


「……あいつら」


白蘭の目も細くなる。屋根の男が笑った。


「いい餌だろ?」


「お前たちが来ると思っていた」


レンが言う。


「性格悪いな」


男が鎖を構える。


「捕まえろ」


人狩りたちが子ども妖へ近づく。


リンが叫ぶ。


「やめて!!」


レンが言う。


「白蘭」


「分かっている」


次の瞬間二人が同時に動いた。


ドン!!


地面が砕ける。妖市の炎の中。


二つの影が一直線に走る。


そのスピードに誰も反応できなかった。


炎が揺れていた。妖市の中央通り。


崩れた屋台。砕けた石畳。逃げ惑う妖たち。


その中を二つの影が走る。


レンと白蘭。一直線。子ども妖たちが捕まっている檻へリンが叫んだ。


「兄さま!!」


屋根の上の男が笑う。


「来たな」


鎖を持つ妖――人狩りの幹部。


その手が上がる。


「止めろ」


黒装束の妖たちが一斉に前へ出た。


十人以上。槍。鎖。刃。


レンが言った。


「邪魔」


ドン!!


地面が砕ける。レンが突っ込んだ。


最初の妖へ拳。


ドゴォォン!!


妖が宙を舞う。その体が後ろの妖へ激突。


ドン!ドン!


二人まとめて転がる。次の妖が鎖を振る。


シュン!!


レンの腕に巻き付く。


「捕まえ――」


レンが力を込める。


バキン!!


鎖が砕けた。妖が固まる。


「……は?」


次の瞬間。レンの拳。


ドン!!


妖が地面にめり込んだ。


一方白蘭。


刀が静かに抜かれていた。


シャッ。


妖が突っ込む。槍を振り上げる。


白蘭が一歩前へ。


シュン。


刃が光る。


ズバン!!


槍が真っ二つ。妖が固まる。白蘭の蹴り。


ドン!!


妖が吹き飛ぶ。次の妖。次の妖。


白蘭は一歩も止まらない。


淡々と。静かに。すべてを斬り抜けていく。


檻の中の子ども妖が叫ぶ。


「助けて!!」


リンが歯を食いしばる。


「早く……!」


そのとき屋根の上の男が動いた。


鎖を大きく振り上げる。 


シャラララララ!!


十本以上の鎖が空へ広がる。蛇のようにうねる。男が笑った。


「お前らは強い」


「だから」


「ここで終わりだ」


鎖が落ちた。


シュン!シュン!シュン!


レンへ。白蘭へ。同時に襲う。


レンが避ける。


ドン!!


石畳が砕ける。白蘭が斬る。


ズバン!!


二本の鎖が切れる。だが数が多い。レンの足に一本。白蘭の腕に一本巻き付いた。


男が笑う。


「捕まえた」


レンが言う。


「そうか?」


力を込める。


ギギギギ……


鎖が歪む。男の目が細くなる。


「……」


レンが笑う。


「鉄は鉄だ」


バキン!!


鎖が砕けた。同時に。白蘭の刀が動く。


シュン。ズバン!!


腕の鎖が落ちた。男の笑みが消える。


「……化け物」


レンが肩を回す。


「よく言われる」


白蘭が言う。


「終わりだ」


次の瞬間二人が同時に動いた。


ドン!!


地面が爆ぜる。レンが一直線に跳ぶ。


屋根へ。男の目の前。拳。


ドゴォォォン!!


男の体が吹き飛ぶ。屋根を突き破る。


ドシャァァァ!!


瓦が降る。沈黙。レンが屋根の上に立つ。


「終わり」


下では白蘭が檻の前にいた。


刀を振る。


ズバン!!


鎖が切れた。檻が開く。


子ども妖たちが飛び出す。


「ありがとう!!」


「助かった!!」


リンが走ってくる。


「兄さま!」


白蘭が頷く。


「無事か」


「うん!」


そのとき遠くから声。


「妖市の奴らが反撃してるぞ!」


 「人狩りを追い出せ!!」


逃げていた妖たちが戻ってきた。戦う妖。


武器を持つ妖。


人狩りたちは次々逃げ始める。


「撤退だ!!」


市場の炎の中。戦いは終わり始めていた。


レンが屋根から降りる。


ドン。


白蘭の横に立つ。


「終わったな」


白蘭が周囲を見る。壊れた妖市。


燃える屋台。だが妖たちは生きている。


白蘭が静かに言う。


「……守れた」


リンが笑う。


「うん!」


レンが空を見る。煙の向こうに夜空。


レンが呟く。


「でも」


白蘭が聞く。


「何だ」


レンが笑う。


「また来るな」


白蘭が小さく頷く。


「来る」


そして言った。


「そのときは」


刀を握る。


「斬る」


レンが拳を鳴らす。


バキバキ。


「殴る」


妖市の夜。炎の残り火の中。


二人の影が並んで立っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ