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第13話妖王の記憶

妖市の中心。街はすでに半分以上崩れていた。瓦礫の山。砕けた石畳。


燃え残る建物。煙が空へ立ち上る。


その中心で二つの巨大な力がぶつかっていた。レンとヴァルガ。


拳がぶつかる衝突のたびに爆発が起きる。


ドォォォォン!!


地面が沈む。石が空へ舞い上がる。


リンが必死に瓦礫の陰に身を伏せる。


「街が消えるって!」


カイトは腕を組んだまま戦いを見ていた。


「時間の問題だな」


長老が震える声で言う。


「妖王同士の戦いなどこの妖市が耐えられるわけがない」


ゼルが笑う。


「いいじゃねえか」


イリスも楽しそうだった。


「久しぶりに退屈しない」


白蘭だけが静かに見ていた。


レンを。その背後の影を。


妖王の影。まだぼやけている。


だが確実に王の姿だった。


一方。レン。


「おらぁ!」


拳を振り抜く。


ドォォォン!!


ヴァルガの顔が横へ弾ける。巨体が数メートル吹き飛ぶ。レンが肩を鳴らす。


「いいなこれ」


拳を握る。骨が鳴る。


「めちゃくちゃ力出る」


ヴァルガがゆっくり立ち上がる。


赤い目が燃えていた。怒り。そして警戒。


レンの背後の影を見ている。


同じ王。同じ気配。ヴァルガが低く唸る。


ゴォォォ……


地面が震える。レンが笑う。


「怖い顔すんなよ」


指を鳴らす。


「まだ始まったばっかだろ」


次の瞬間ヴァルガが突進する。


巨体とは思えない速度。


レンも踏み込む。


拳。爪。


ドゴォォォォン!!


激突。衝撃波。


周囲の瓦礫が吹き飛ぶ。


リンが叫ぶ。


「また!」


カイトが言う。


「まだ上がるな」


リンが振り向く。


「え?」


カイトはレンを見ていた。


「まだ慣れてない」


その言葉通りだった。


レンの動きは荒い。


力は強い。


だが制御ができていない。


ヴァルガが爪を振る。


レンが腕で受ける。


ドォン!!


レンの体が滑る。


石畳を削りながら数メートル後退。


レンが笑う。


「いてぇ」


だが目は楽しそうだった。


「いいじゃん」


拳を握る。


「やっぱ殴り合いはこうじゃないと」


そのときレンの頭の奥で声が響く。


『まだ荒い』


レンが眉をひそめる。


「……あ?」


声は続く。


『力はある。だが使い方が下手だ』


レンが舌打ちする。


「お前か」


あの影。闇の中の王。


『そうだ』


レンが言う。


「うるせえ」


『聞け』


レンは少し黙る。


『力は感覚だ。怒りでもいい』


『本能でもいい。だが流れを掴め』


レンが小さく笑う。


「格闘講座かよ」


その瞬間ヴァルガが突っ込んできた。


巨大な拳。レンの顔へ。


だがレンの体が自然に動いた。


ほんの少し体をずらす。拳が空を切る。


レンの拳がヴァルガの腹へ。


ドォォォン!!


巨体が浮いた。


ゼルが目を細める。


「ほう」


イリスが笑う。


「急にうまくなった」


レンが拳を握る。


「今のか」


影の声。


『そうだ』


レンがニヤっと笑う。


「悪くねえ」


だがそのときレンの頭の奥に映像が流れた。知らない景色。戦場。赤い空。


無数の妖。そして一体の巨大な王。


角を持つ妖王。レンが一瞬動きを止める。


「……なんだ今」


影の声が静かに言う。


『記憶だ』


レンが眉をひそめる。


「誰の」


影が答える。


『王の』


レンの目が細くなる。


その瞬間ヴァルガが再び襲いかかる。


レンが拳を握る。


だが頭の奥では王の記憶が少しずつ目覚め始めていた。ヴァルガの爪が振り下ろされる。


巨大な腕。建物一つを叩き潰すほどの力。


レンの体は自然に動いた。半歩だけ横へ。


風を切る音。ヴァルガの爪が空を裂く。


次の瞬間レンの拳が動く。


ドォォォン!!


腹へ叩き込まれた一撃。ヴァルガの巨体が数メートル浮く。そのまま瓦礫へ叩きつけられる。リンが叫ぶ。


「また吹っ飛んだ!」


カイトが静かに言う。


「動きが変わった」


ゼルが笑う。


「急に強くなったな」


イリスも頷く。


「戦い方が変わってる」


白蘭は何も言わなかった。


ただレンを見ている。レンの目。


その奥で何かが揺れている。


一方。レンの意識は、戦いながら頭の奥で別の映像が流れていた。


戦場。巨大な山。燃える空。


無数の妖。そして一体の巨大な存在の妖王。レンが舌打ちする。


「まただ」


影の声が響く。


『見えるか』


レンが言う。


「勝手に見せんな」


『記憶だからな』


レンが眉をひそめる。


「お前の?」


『王の』


戦場の映像がさらに広がる。


妖王が歩く。その一歩で地面が割れる。


拳一つで巨大な妖を砕く。爪で山を切り裂く。まさに王だった。レンが呟く。


「やべえな」


だがそのとき空が裂けた。


光、巨大な刃。それが妖王へ落ちる。


レンの目が見開かれる。


「……!」


刃が胸を貫く。妖王の体が揺れる。


血が噴き出す。巨体が崩れる。


大地が揺れる。影の声が静かに言う。


『あれが終わりだ』


レンが呟く。


「誰にやられた」


『まだ思い出していない』


闇が揺れる。


『だがそのうち分かる』


レンが舌打ちする。


「めんどくせえ」


その瞬間ヴァルガが立ち上がっていた。


怒りで体が震えている。赤い目がレンを睨む。ヴァルガが咆哮する。


ゴォォォォォ!!


妖気が爆発する。地面が割れる。


建物の残骸が吹き飛ぶ。リンが叫ぶ。


「まだ強くなるの!?」


長老が震える。


「完全覚醒のさらに上……」


カイトが言う。


「暴走だな」


ヴァルガの体から黒い妖気が噴き出す。


まるで嵐。巨体がさらに膨れ上がる。


筋肉が裂けるほど膨張する。


ヴァルガが突進する。


ドォォォン!!


レンへ一直線。


レンも踏み込む。


拳の衝突。


ドゴォォォォン!!


爆発。


だが今度はレンの体が後ろへ弾かれた。


瓦礫の上を滑る。リンが叫ぶ。


「レン!」


レンが笑う。


「いてぇ」


口の血を拭く。


「今のは効いた」


ヴァルガが再び走る。


巨大な拳。レンの頭へ。


だがレンは動かなかった。


頭の奥であの影が笑っていた。


『思い出せ』


レンが言う。


「何を」


『王の戦い方』


その瞬間レンの頭にまた映像が流れた。


妖王が戦う姿。無数の敵。


だが動きは無駄がない。


一歩。一撃。一撃で敵が消える。


レンが呟く。


「……なるほど」


ヴァルガの拳が落ちる。


だがレンの体が流れるように動いた。


半歩ずれる。腕を絡める。


ヴァルガのバランスが崩れる。レンの拳。


腹へ。


ドォォォォン!!


巨体が浮く。さらにレンが跳ぶ。


空中で拳を振り下ろす。


ドォォォン!!


ヴァルガが地面へ叩きつけられる。


地面が陥没する。ゼルが口笛を吹く。


「いいね」


イリスも笑う。


「完全に王」


白蘭が静かに呟く。


「記憶が混ざり始めている」


カイトが聞く。


「何の」


白蘭は答えない。


ただレンを見る。


レンの背後。


妖王の影がさっきよりはっきりしていた。


レンが拳を握る。


「面白くなってきた」


だがそのときレンの頭の奥であの記憶の続きを見た。


妖王が倒れる瞬間の空の上。


そこに誰かが立っていた。


白い光の中。人の形。


だがその顔は見えない。


レンが呟く。


「……誰だ」


影の声が言う。


『思い出せ』


レンが言う。


「だから」


拳を握る。


「今戦ってんだよ」


ヴァルガが再び立ち上がる。怒りの咆哮。


レンが笑う。


「続きだ」


そして二人の妖王が再び衝突する


ヴァルガが立ち上がる。巨体が瓦礫を押しのける。黒い妖気が体の周囲で渦巻いていた。


怒り。殺意。それが空気を震わせている。


ヴァルガの赤い目がレンを睨む。


ゴォォォォ……


低い唸り。まるで地面の奥から響く音。


レンはゆっくり首を鳴らした。


「まだやる気か」


拳を握る。骨が鳴る。


背後では――妖王の影。


さっきよりもはっきりしていた。


巨大な角。巨大な王の姿。


まだ完全ではない。


だが確実にそこにいる。


リンが小さく呟く。


「影……大きくなってる」


カイトが頷く。


「同調してる」


長老は震えていた。


「まさか……」


ゼルが笑う。


「王の再来ってやつか?」


イリスも面白そうに言う。


「街壊れるね」


白蘭は静かにレンを見ていた。


そして小さく呟く。


「まだ足りない」


一方レン。


頭の奥でまた記憶が流れた。


赤い空。巨大な戦場。


無数の妖。そして中央に立つ妖王。


レンは戦いながらそれを見ていた。


「またかよ」


影の声が響く。


『重要な記憶だ』


レンが言う。


「今それどころじゃねえ」


影が言う。


『いや今だからだ』


その瞬間記憶が動く。


妖王が倒れる。胸を貫かれる。


巨大な体が大地へ崩れる。


レンの目が細くなる。


「さっき見たやつだ」


だが今回は続きがあった。


空の上。そこに立つ影。


白い光の中。人の形。


長い衣。手には巨大な刃。


レンが呟く。


「……誰だ」


影の声。


『王を殺した者だ』


レンが言う。


「つまりラスボスか」


影は答えない。


ただ静かに言う。


『いずれ分かる』


レンが舌打ちする。


「いずれって」


その瞬間ヴァルガが突進していた。


ドォォォン!!


巨大な拳レンの顔へ。


レンの体が動く。半歩横へ。


拳が空を裂く。


レンの拳。ヴァルガの腹へ。


ドゴォォォン!!


巨体が浮く。


さらにレンが踏み込む。


拳。顎へ。


ドォォォォン!!


ヴァルガの巨体が空へ吹き飛ぶ。


そのまま瓦礫の山へ落ちる。


地面が崩れる。リンが叫ぶ。


「また吹っ飛んだ!」


カイトが言う。


「もう勝負ついたな」


煙の中。


ヴァルガがゆっくり起き上がる。


だが足が少し揺れている。


ダメージは明らかだった。


レンが歩く。瓦礫を踏みながら。


「終わりか?」


ヴァルガが咆哮する。


ゴォォォォォ!!


妖気が爆発する。


だがさっきより弱い。


レンが拳を握る。


「じゃあ」


一歩踏み込む。


「終わらせる」


その瞬間レンの背後の妖王の影。


それが一瞬完全な形になった。


巨大な王。空を覆う影。


長老が震える。


「完全……」


カイトが呟く。


「いや一瞬だけだ」


レンの拳が動く。


全身の力。妖王の力。


そのすべてを込めた拳。


ドォォォォォン!!


直撃。ヴァルガの巨体が吹き飛ぶ。


地面を削りながら建物を突き破り遠くの広場まで転がる。煙が上がる。


しばらく誰も動かなかった。


やがて煙の向こう。


ヴァルガは動かなかった。


完全に倒れていた。リンが口を開ける。


「……勝った?」


カイトが言う。


「勝ったな」


ゼルが笑う。


「やるじゃねえか」


イリスも笑う。


「思ったより強い」


だが白蘭だけが言った。


「違う」


皆が振り向く。白蘭はレンを見ていた。


「これは始まりだ」


レンは肩を回していた。


「つかれた」


拳を見る。


「なんかさ」


小さく呟く。


「変な夢いっぱい見た」


カイトが聞く。


「どんな」


レンが答える。


「でかい妖怪、戦争あと」


少し考える。


「誰かに殺されてた」


その言葉で白蘭の目がわずかに動いた。


だが何も言わない。


遠くで雷が鳴った。


空は曇り始めていた。


妖市の上空。暗い雲。


まるで何かの前触れのように。


そしてレンの頭の奥。


闇の中で。あの影が静かに笑っていた。


『思い出し始めたな』


黄金の目が光る。


『王の記憶を』


そして遠く。


この世界のどこか。


白い衣の人物が空を見上げていた。


「……目覚めたか」


静かな声。


「妖王」


物語はさらに大きく動き始める――


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