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何処にでもいる



翌日、朝食を済ませて魔王様の執務室へ向かう道すがら気になっていたことを聞いてみる事にした。



「セバスさんの様な執事さんは魔王様にはいないのですか?」


「おりますよ、メイドも。ただ身支度をお手伝いしたりということは殆どありません。お部屋を整える事が主な仕事です」



必要最低限の身の回りのお世話だけを行なっているんだとか。でも会った事ないのだよね。メイドさんも、執事さんも。


「私達は元々、魔王様のお世話をさせていただいておりました。今もライラ様や魔王様がいらっしゃらない時間にお部屋を整えたりお食事の調整を行ったりと、細々とした事を行なっております」


「兼任されているのですか?」


「そうなりますね」



よかった。王様のお世話係からペットの世話係に変えられてなくて。


それから、魔王様の執務室で挨拶とキース様をお借りしてお城案内の再開となった。




*******




「今日は西塔に行きましょう。こちらは大広間や貴賓室、会談や謁見の為の部屋が主な構成ですね」


昨日は急遽大忙しな様子だったキース様は、いつも通りの落ち着いた様子になっている。ミミック事件はひと段落したのかな。


私たちの過ごす塔から広めの庭を挟んで、回廊を通って向かう先はお城の西塔。



まずは一階。

お披露目会の後、晩餐会の為のダンスホールになっていた大広間。ここはとにかく豪華。大きなシャンデリアが吊り下がり三階くらいまである高い天井は、たくさんの彫刻や煌びやかな絵画で彩られている。


「すごいですね!魔王様もダンスを踊ったりするのですか?」


「滅多にされませんが、踊る事自体は出来ますよ。ライラ様も落ち着いたら講師を呼んで一通り踊れる様に授業を行う予定です」



まさか、魔王様と踊る為に……?他国のお客様とかお貴族様とかもいるところで???それって大丈夫なのかしら。まぁ魔王様のペットとして必要なら習うけれども。



「ご主人様はダンスは踊った事ないのですか?」


「村娘だからねぇ、村の収穫祭で踊るやつくらいかなぁ」



大きな篝火を焚いて、その周りを輪になって踊る様なやつね?音楽に合わせて踊る様なものではなく、村に伝わる民謡を男達が歌い、手を叩いて拍子を取り、女達が同じく歌いながら踊る。この広間では絶対に行われないような庶民的なやつだ。


一年の始めにある春を迎えるお祭りも、踊りはあるけど同じ様なものだし。



「それは、気になりますね。いつか見せてくださいね」


「え……機会があれば…はい」


「ご主人様!私も見てみたいです!」


「うーん?そのうちねー」



こんな場所に似つかわしくないからね!

踊らされる前に次へ行こう。



お次は二階。


ここは大広間が見下ろせる屋内バルコニーと、何部屋かの休憩室があった。

数人で過ごせる広い部屋や、個人用の部屋、会談室と休憩室にも色々な種類があるらしい。


「こちらを利用する事があれば、どの部屋にも入口付近と窓の近く、卓上にも人を呼ぶ為の仕掛けがあります。覚えておいて下さいね」


「人を呼ぶ?」


「ご主人様、ここはプライベート空間として外へ音が聞こえない様になっているのです。何かあった時には悲鳴をあげても気づかれません」



なるほど?貴族社会ってそんな危険な感じなのか。こわい。ペットが虐められる可能性もあるもんね。わかった。気をつけよう。



そして三階。


ここから上は来客用の客室。

上の階に行くほど高貴な方のお部屋になって、広い間取りで作られているんだって。三階はその従者だったりが過ごす部屋が多いらしい。



「ここにも隠し通路はありますが、そちらは割愛しても良いと魔王様から言われております。入口だけご案内致しますね」


「わかりました」



確かに貴賓室を私が使うことはないだろうしね。




そうして、サクサク本日のお城案内が進んでいたのだけど……


「ご主人様、キースをどっかに飛ばしちゃいましたね」


「えっ……やっぱり?私だよね???ぎゃーどうしよう」




何部屋目かの秘密の通路入口について聞いていた時に、ふと目の止まった飾りに触れたらキース様が目の前から消えていた。


そして私達もどこか知らない場所に移動してしまったらしい。

アリスは何かを察していたのか、秘密の通路の入口についての案内に変わってからはずっと私と手を繋いでいてくれたので一緒にいられたのかな。


「まぁアレも一端の魔人ですから、1人でなんとかなりますよ!それよりここを探検しましょう!」


「えぇー…確かにまずはここから出ないといけないね」



昨日と同じく真っ暗な空間に、発光石の道標が光っている。

ただ昨日と違うのは、それが点々と線を描く様に続いているところだ。


それも奥に行くにつれて数が増えているのか、より明るく密集して光っている。



「ここは私もはじめきました!さすがご主人様ですね!」


「出れるといいね、魔王様かキース様が迎えにきてくれるかな?」


「大丈夫ですよ、ご主人様ですから」



こんな事をやらかしたのに、アリスの信頼が厚くて心苦し……うれしいなー。







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