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平凡でなんの力もない




秘密の通路を辿り、次の目的地へ向かう。


さっきまでの平坦な道のりではなく、途中階段や傾斜で縦方向の移動を体感することしばらく。


よいしょ、っと這い上がった先には魔王様がいた。


書物机の下からひょっこり出てきた私を無言で見つめられる。


「……」


「ま、魔王様ただいま戻りました。突然すみません……」


「あれ?ご主人様のお部屋に着くはずだったのですが間違えちゃったみたいですね」



どこを間違えたのか魔王様のお部屋についてしまったらしい。



「構わん」


すっと、両脇の下に手を入れられて持ち上げられる。上半身しか出ていなかった状態から床に引き上げてくださった。なお、アリスは後から自力で出てきた。

魔王様って力持ちだね。



「ありがとうございます」


「ミミックの件よくやった」


「???ありがとうございます」



何かわからないけど、褒められた。

魔王様に褒められるのはレアだからちょっと嬉しい。これは先輩ペットのミミック先輩のナイスアシストという事だろうか?


お貴族様御用達ペットミミック界に新参者ペットが上手にご挨拶できた的な。



ーーコンコン


「魔王様、キースです」


「入れ」



キース様が片手に紙の束を持って入ってきた。


「城内ミミックのリストと配置場所の把握が終わりました。こちらご確認ください」


「うむ。城下へも通達しておけ」


「済んでおります。ただ解錠ミスによる怪我人の発生が危惧されております。午後の各会議の議題に本件が組み込まれる予定となっています」



ミミック先輩たちのうち魔物から魔の者になっている個体がどの程度あるのか調査を行っているらしい。

魔物と魔の者では国としての扱いが変わるため、状態の把握が必要なのだとか。


忙しそうなキース様は、提出と報告を終えるとまた部屋の外へ。

案内ができず申し訳ない、という言葉と午後はこの建物内で自由に過ごしてくださいと再度私達に告げ去っていった。



「魔王様、ミミック先輩は魔の者となったから、宝物庫からいなくなってしまうのですか?」


「本人次第だ」


なるほど、なんらかで意思疎通がとれるのかな。どうやら魔物から魔の者になると通常は正式に雇われになり、お給料とかお休みとかも貰えるらしい。


ミミック先輩が昇格した。ということか!



「ご主人様〜、これからどうしますか?」


「そうだね、とりあえず部屋に帰ろう?魔王様の仕事の邪魔になっちゃう」



私が魔王様と話す間に、出てきた床穴を戻して私のドレスを整えてくれていたアリスがこてんと首を傾げている。


「では、魔王様、突然すみませんでした。部屋に帰ります」


「うむ」



探検で結構体力を使ったし、残りの時間は本でも読んで過ごそうかな。



*******




「あのミミックは残る事になった」


「宝物庫のミミック先輩ですか?それは頼もしいですね」



その晩の魔王様とのお茶の時間。

徐に魔王様が伝えてくださった情報によると、件のミミック先輩は宝物庫の宝箱として引き続き過ごす事にしたらしい。


「他には呼びかけに応えるものは殆どなかった」


「そうなのですか?ではミミック先輩は特別なミミックだったのですね」


「会いにいくと良い」


「宝物庫に気軽に出入りしてもいいのですか?」


「鍵だ。持っていろ」


「ありがとうございます。持ち歩くのは怖いので普段はアリスに預けておこうかなと思います」



お城の宝物庫の鍵なんて無くしたら、私の首一つじゃ済まなそうだし。



それから、秘密の通路やお城案内の感想を報告したりしながら魔王様とのお茶会の時間はいつも通りのんびりと過ぎていった。



*******



「魔王、ご主人様に宝物庫を渡すのか?」


「?うむ」



ご主人様が眠った後、魔王の下を訪ねてきいた。ご主人様は『鍵』を貰ったと思っているだろうけど、コイツがそんな小さな物で済ませるわけがない。


これはミミックに関する褒美の意味もあるんだろうからな。


何故かミミックに強い関心を示したご主人様は、アレが成長体であると気づいていたのだろうか?


「ミミックと、宝物庫か」


「あぁ。そういう希望だった」



ミミックがご主人様に。まぁいいか。


ドレス同様、ご主人様の宝物庫もはじめから用意してあったのかもしれないがご主人様には秘密にしておこう。きっと驚いて怖がってしまう。私はアレとは違って常識のある精霊だからな。



「発光石はご主人様に反応したぞ」


「そうだろうな」



魔力のほとんどないご主人様でも光が見えていた。それはあの石、この城の主である魔王がそれを認めたからだろう。隠し通路にはトラップ用の魔法陣や仕掛けがあったがご主人様には反応しなかった。したら全て壊し尽くしていたが、そうならなくて良かったと思う。


「ここはライラの城でもあるからな」


「まぁ隠し通路を使えることが分かったのはいいことだ。キースがいたのではもっと時間がかかっただろうし」



多分アレと一緒に回っていたら、正しい道順と正しい手順で隠し通路を通り抜ける事になっていた。


以前1人であの通路を通った時には、もっと薄汚れた危険な場所だったからな。




「まぁともかく。魔王、貴様相変わらず説明が足りていない事を自覚しろ」


「?わかった」



分かっていないのに返事をするな。

このポンコツ魔王め。









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