9話「それは正義を示すための序章だったりする」
ここまで読んで頂きありがとうございます!!
カナの話を聞いた正義の選択はいかに!!
今回はカナの想いを聞いた正義が何を感じ何を決断し何を選択するのか!!
正義はカナの気持ちに答えることができるのか!!
という感じの話になってます!!
ぜひ楽しんでください!!
正義「話してくれてありがとう」
カナは小さく首を振った。話し終えたあとも、すぐには笑顔に戻らず、膝の上で指を組み直している。
カナ「……ううん。誰かにこんなに話したの、久しぶりだったかも」
「その事でお母さんが今も寝たきりで、お店もあと1ヶ月で閉めることになってるんだ…」
正義「……カナさんも色々頑張ってきたんだね。」
カナ「うん。でも、いつまでも落ち込んでいられないから」
正義「……無理してない?」
カナ「してないよ!」
返事はすぐだった。カナは顔を上げ、明るい声を作るように笑った。
カナ「お店を閉めるのは寂しいけど、仕方ないもん。ずっとここにこだわっていても、どうにもならないし!」
正義「……」
未来の話をするカナの目は、さっきより少しだけ明るかった。けれど、言葉を続けるたびに、その笑顔がわずかに固くなっていく。
カナ「だから平気! 私、まだ諦めたわけじゃないから!」
その瞬間だった。
カナの肩口から、赤い光がふわりと浮かんだ。
火花のように小さく、けれど確かに赤い。光は彼女の周りに一瞬だけ揺らめき、すぐに消えた。
正義「……え?」
カナ「ん? どうしたの?」
俺は思わず目をこすりそうになった。けれど、目の前のカナは不思議そうに首を傾げているだけだ。
正義「いや、今……何でもない」
カナ「変なの」
カナはくすっと笑い、水差しを持ち上げた。俺はその手元を見ながら、さっきの光を頭の中でもう一度思い返した。
見間違いだったのか。それとも、俺にしか見えていない何かがあったのか。
今ここで尋ねても、俺自身が何を見たのか説明できない。まして、カナの言葉を疑うような聞き方はしたくなかった。
カナ「正義くん?」
正義「ごめん。ちょっと考え事」
カナ「そっか。でも、心配しないでね。私、ちゃんとやっていけるから」
カナは笑った。
俺は、その笑顔に何と返せばいいのか分からなかった。大丈夫だと本人が言っている。けれど、さっきの赤い光が、言葉だけでは片づけられない何かを残していた。
正義「じゃあさ」
カナ「うん?」
正義「店を閉める日までは、毎日食べに来るよ」
カナ「……えっ?」
正義「毎日」
カナ「いや、聞こえたよ!? 聞き返しただけ!」
少しだけ、カナの顔にいつもの調子が戻った。
正義「客が減ってるんだろ? 一人でも多く食べに来たほうがいいじゃないか」
カナ「それは……そうだけど」
正義「もちろん、今度はちゃんと代金を払うよ。今日は助けてもらったお礼でご馳走になったけど、次は客として来たい」
カナ「……うん。お客さんとして来てくれたら、うれしいな」
チャッピー「次は正義がきちんと支払うにゃ。毎日通うなら、その分も考えておくにゃ」
正義「お前の分を払ってるのは俺なんだぞ?」
カナ「ふふっ……ありがとう、正義くん」
正義「うん。また来るよ」
カナ「うん。待ってるね」
店を出ると、通りには荷車の音と人々の話し声が響いていた。店の中にいたときより外の世界はずっと騒がしく感じる。なのに、頭の中にはカナの声が残っていた。
――だから平気!
そして、あの赤い光。
俺は歩きながら、何度も考えた。今はまだ、何も決めつけられない。それでも、見なかったことにはできなかった。
*
そのまま、グスタフ皇帝が用意してくれた家へ戻った。俺たちが暮らすには十分な広さだ。
チャッピー「帰ってきたにゃ。ここがグスタフ皇帝の用意してくれた家にゃ」
正義「おお……思ってたよりちゃんとしてる」
チャッピー「魔物の群れを討伐した褒賞も500万ルシスにゃ。住む場所も確保できたし、当面の生活には困らなさそうにゃ」
正義「500万ルシスってどのいくらぐらいなんだ?」
チャッピー「元の世界の住んでた世界と価値は同じにゃ」
正義「え……500万円!?え!?え!?あの討伐だけで!?!」
チャッピー「そうにゃ。色々と精査してみた結果同じ価値と判明したにゃ。当面の生活費は困らないにゃ」
正義「いやいや、当面どころか500万ルシスもあれば一生遊んで暮らせるぞ!!」
チャッピー「いやいや…そんなわけないにゃ」
正義「そそそそうか…そんなわけないか……ちょっとはしゃぎすぎたな…」
チャッピー「ただ、ここでは物価もそれなりに高くなっているから使い方には気をつけるにゃ。」
俺は窓を閉め、卓の上に荷物を置いた。討伐の褒賞を受け取り、暮らす場所も得た。少しずつ足場はできている。けれど、召喚のことも、この国のことも、まだ知らないことばかりだった。
だからこそ、目の前の問題に飛びつく前に、分かっていることを整理する必要がある。
正義「……それで、カナさんの話なんだけど」
チャッピー「やっぱり気になってるにゃ?」
正義「そりゃ気になるだろ。あんな話を聞いて、気にするなってほうが無理だ」
俺は椅子を引いて腰を下ろした。チャッピーも卓の上に飛び降り、前足をそろえる。
チャッピー「カナの話は、ほぼ全部記憶しているにゃ。必要なら時系列で整理できるにゃ」
正義「…まず、お母さんは心を病んで寝たきりになってる。店はあと1ヶ月で閉める。カナさんは別の仕事をしてお金を貯めて、いつかまた店を開きたいって言ってた」
チャッピー「そこまでは記憶しているにゃ」
正義「それで……カナさんの周りに赤い光が浮かんだんだ」
チャッピーの耳がぴんと立った。冗談を返すこともなく、青い目が俺をまっすぐ見上げる。
チャッピー「赤い光にゃ?」
正義「ああ。一瞬だけど、はっきり見えた」
チャッピー「正義、赤い光が見えたのは、カナが何を言ったときにゃ?」
正義「『平気』って言ったところだよ」
チャッピーは前足をそろえ、少し考えるように首を傾けた。いつものようにすぐ答えを出すのではなく、言葉を選んでいる。
チャッピー「……もしかして、嘘をつくと赤く光るのかもしれないにゃ」
正義「仮にそうだとしても、まだ一回しか見てないだろ。決めつけるのは早いよ」
チャッピー「もちろん仮説にゃ。カナが本当に嘘をついたのかも分からないにゃ」
俺は腕を組んだ。カナは「平気」と言った。その言葉が嘘だったのか、それとも別の理由で光が現れたのか。今の俺には区別できない。
正義「本人がどう思ってるか、勝手に決めつけるわけにはいかない。でも、あの顔は…諦めきれてない人の顔だった…」
チャッピー「……次に赤い光が見えたら、相手の言葉や状況も一緒に覚えておくにゃ」
俺は卓の端を指で軽く叩いた。能力を持っているからといって、目に映ったものの意味まで分かるわけじゃない。むしろ、分からないことが増えた気さえする。
正義「……それと、もうひとつ気になってることがある」
チャッピー「お父さんのジムと、お兄さんのドックのことにゃ?」
正義「そう。カナさんの話を聞いてて、どうにも引っかかった」
チャッピー「まず1つ目にゃ。ジムは事件の前、夜中に何かを書き写していたにゃ。そのあと夜に出かけて、翌朝には事故に遭ったと知らされたにゃ。」
正義「書き写していたものが何なのかも分からない。夜に出かけた理由も分からない……」
俺は、話を聞いたときのカナの様子を思い返した。彼女が知っているのは、自分の目で見たことと、誰かから聞かされたことだけだ。空白を想像で埋めても、答えにはならない。
チャッピー「事故だった可能性はもちろんあるにゃ。ただ、確認できていないことが多いにゃ。そう、本当に事故だった…のかも分からないにゃ」
正義「そういうことだ。ただ、最初から事件だって決めつける気はないよ。でも、調べる価値はある」
チャッピー「2つ目はドックにゃ。ジムがいなくなったあと、ドックは夜遅く帰ったり、朝早く出ていったりするようになったにゃ。家族に詳しい事情を話していないのも気になるにゃ」
正義「父親が亡くなって、兄貴まで変わった。でも、カナさんには理由が分からない……か」
チャッピー「悲しみや仕事の事情かもしれないにゃ。何かに巻き込まれた可能性も、今の段階では否定できないにゃ。どちらにしても、まだ推測にゃ」
俺は返事をせず、しばらく窓の外を見た。通りを歩く人々は、いつもと変わらない様子で家路についている。カナの家族にも、以前はそんな日常があったのだろう。
正義「……カナさんはずっと、お母さんと店を支えてきたんだよな」
チャッピー「そうにゃ」
正義「それなのに、父親に何があったのかも、お兄さんがどうして変わったのかも、分からないままなんだ」
チャッピー「だからこそ、確認できることから調べるにゃ」
俺は卓に向き直った。気になることは多い。でも、今すぐ誰かを問い詰めても、まともな答えが得られるとは限らない。まずはジムの事故を知る人、当時の記録、店に出入りしていた人間。手がかりになりそうなものを、順番に探すしかない。
正義「まずはジムの事故について、記録や事情を知っている人がいないか調べる。それから、ジムが書き写していたものについても手掛かりを探す。」
チャッピー「妥当だと思うにゃ。」
チャッピーがしっぽを揺らす。俺は思わず息を吐き、凝り固まっていた肩を回した。笑っている場合じゃないのかもしれないが、考え続けているだけでは何も進まない。
ジムに何があったのか。
ドックはなぜ変わってしまったのか。
そして、カナの周りに浮かんだ赤い光は何だったのか。
どれも、今は答えがない。
正義「……まずは、分かることからだ。もちろん、この世界についても!!」
チャッピー「調査開始にゃ!」
正義「声がでかい!」
チャッピー「始まりは元気よく、にゃ!」
俺は机の上に紙を広げ、聞いた話を短く書き出した。事故の日時、ジムが夜中に何かを書き写していたこと、外出した理由が分からないこと、そしてドックの変化。
まだ、どれも答えにはつながっていない。
それでも、手掛かりを探すことはできる。
まずは、ジムの事故から調べよう。
常識を疑えとよく言うが疑う常識さえ俺はこの世界に当たってはないんだ。だからこそまだ見えてない真実が見えるかもしれない。
お読み頂きありがとうございました!!!
調査を始める正義に一体この後何が待ち受けているのか!!あの赤い光は何を示すのか!!
彼が今できることそれはなんなのか!!
次回!!調査編開幕です!!
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次の更新も明日の24時に投稿します!!
また、明日!!




