6話「異世界のご飯ってこんなに美味しいの!?と思った矢先に悲しいお知らせをもらった…」
ここまで読んでいただきありがとうございます!!
さぁ!召喚されその後すぐにまさかの初魔物討伐!
なんだかんだと色々体験して正義とチャッピーはお腹が減ったみたいです…
さて、彼らはゆっくりご飯を食べることができるのでしょうか!!
引き続き楽しんでください!!
カナに案内されて店へ入ると、炭火と香草の匂いが一気に押し寄せてきた。
店内は広くない。壁際には二人掛けの卓が並び、奥の厨房からは油のはぜる音が聞こえる。客は多くないが、食事をしている人たちはみんな、皿に集中していた。
カナ「少し待っててね。すぐに用意するから」
正義「いや、さっき助けただけだし、そこまでしてもらうわけには……」
カナ「助けてもらったお礼。気にしないで」
カナは返事を待たずに厨房へ引っ込んだ。
チャッピー「ありがたい申し出にゃ。ここは遠慮せず、いただくにゃ」
正義「お前、さっきまで店を地図に登録してた側だろ」
チャッピー「登録した店で食べる。情報収集として一貫してるにゃ」
正義「食べたいだけだろ」
チャッピー「それも大事な情報にゃ」
ほどなくして、カナが両手に皿を持って戻ってきた。
カナ「お待たせ。今日はこれ。『ヴァル浅瀬とソナアレ幹の燻し煮』と、『草潜ロアネとアレ・タニ樹の塩締め焼き』。うちでよく出す料理なの」
卓に置かれた皿から、淡い煙の香りと、焼いた皮の香ばしさが立ち上った。燻し煮は、煮汁に深い香りが移っていて、表面には細かな香草が浮いている。塩締め焼きは表面がぱりっと焼け、切り口から湯気がのぼっていた。
正義「……いただきます」
ひと口食べた瞬間、思考が止まった。
燻し煮は、最初に香りが広がり、そのあとに柔らかな旨味が追いかけてくる。煮汁は濃すぎず、素材の味を消していない。塩締め焼きは皮目が香ばしく、噛むと中から汁があふれた。塩気のあとに、木の実を思わせる甘い香りが残る。
正義「……うまっ」
カナ「よかった。口に合った?」
正義「合ったどころじゃない。これ、すごい。俺、今まで食べた魚料理の中でもかなり好きかもしれない」
チャッピー「分析するにゃ……香り、食感、味の変化、後味……処理が少し追いつかないにゃ」
正義「食べながら分析するな!」
チャッピー「記録したい要素が多すぎるにゃ……香りの層が……待つにゃ、順番に処理するにゃ」
チャッピーの青い目が一瞬だけ忙しく瞬き、耳が左右にぴくぴく動いた。頭の中で何かを必死に整理しているらしい。
正義「お前、食べ物で処理落ちしかけることあるんだな……」
チャッピー「想定以上においしいものは分析対象が増えるにゃ……今は味わうことを優先するにゃ」
カナ「ふふっ。猫ちゃんにも気に入ってもらえたみたい」
カナは水の入った小さな器もチャッピーの前へ置いてくれた。チャッピーは一度だけ器を確認すると、満足げに顔を近づけた。
チャッピー「気遣いに感謝するにゃ」
食事が進むにつれて、門の外での騒ぎが少しずつ遠のいていった。けれど、頭の中から消えたわけじゃない。
魔物の群れ。突然使えるようになった魔法。自分の思いどおりに制御できず、味方にまで水を浴びせたこと。ロルフが調査を続けると言っていた、大結界の異変。
それに、そもそもの始まりは召喚だ。
俺は自分の意思でここへ来たわけじゃない。説明も十分に受けないうちに、勇者と呼ばれ、魔族との戦いに協力することを求められた。
正義「……やっぱり、変だよな」
チャッピー「どの部分の話にゃ」
正義「全部だよ。召喚も、魔法も、魔物も。分からないことが多すぎる」
俺は箸を置いた。
正義「それに、皇帝の名前はグスタフ・ハルヘイムなのに、帝都はロータスだろ。名前が違うこと自体おかしくないか?それが普通なのか?俺はこの国のことも、皇帝の家のことも、歴史もよく知らない。知らないことが多すぎる。」
「何でもかんでもめまぐるしく話が進んでく…さっきまで下校してたんだぞ!?それが今は魔物と戦って飯を食ってる…理解が追いつかないに決まってる!!そして、何よりも疑問なのはロルフさんだ!」
チャッピー「ロルフの何が疑問にゃ?」
正義「明らかに俺より強いだろ!!あんなに強い人がいて勇者を呼び出す必要があるのか?たまたま今回呼び出した俺が弱すぎるのか?…あんな強い人がいて魔族に勝てないってどんだけ魔族が強いんだよ!!」
チャッピー「たしかにそれはそうにゃ。その前にスマホのAIが猫に変わってることもその疑問の中に入れて欲しかったにゃ」
「精査や予測をするにしても情報が足りないにゃ。この世界の当たり前を知ることから始めたいのにその時間さえも取れずに進んでいくにゃ…いつ元の世界に帰れるかも帰れる方法も分からにゃい。不安になるのも仕方ないにゃ。」
正義「そうだ。今の俺は、分からないことが多くて不安なんだ……きっとすぐには帰れないだろうなぁ…」
チャッピー「安心するにゃ!正義!チャッピーがそばにいてサポートするにゃ!何も分からない。誰も知らない。この世界で唯一正義のことをよく知る超高性能猫にゃ!!」
「必ず元の世界に戻れる方法を見つけ出すにゃ!」
正義「ありがとう、チャッピー。チャッピーのお陰で気持ちが楽になった。安心したよ。今頼れるのはチャッピーだけなんだ。よろしくな、相棒!」
チャッピー「じゃあ!この店の調査から始めるにゃ!他の料理も確認するにゃ!!」
正義「食べたいだけだろ。」
チャッピー「食事の記録も大切にゃ!!」
カナが空いた皿を下げに来た。俺たちは礼を言い、食事を終えた。
そして、カナが会計のための小さな板を持ってきたところで、俺はようやく重大な事実に気づいた。
この世界の金を、俺は一枚も持っていない。
正義「……あ」
チャッピー「どうしたにゃ」
正義「俺たち、お金ない」
チャッピー「……にゃ」
正義「財布はあるんだけど…でも中身は地球のお金だ!!
こっちで使えるわけない!」
チャッピーの耳がぴんと立った。俺は慌ててポケットを探り、意味がないと分かっているのに財布を開いた。紙幣と硬貨が、見慣れた姿のまま並んでいる。
正義「すみません! 払うつもりだったんですけど、この世界のお金を持ってなくて……!」
カナ「えっ、そうなの?」
正義「本当にすみません。働いて返します。皿洗いでも、掃除でも、運ぶ仕事でも、できることなら何でもします!」
チャッピー「正義、まず落ち着くにゃ」
正義「落ち着けるか! 食い逃げは絶対にだめだろ!」
カナ「大丈夫、大丈夫。お金はいらないよ」
正義「いや、でも……」
カナ「路地で助けてくれたお礼だから。あのとき、あなたが来てくれなかったら、どうなっていたか分からないもの。ご飯くらい食べていって」
カナは笑った。俺はようやく肩の力を抜いた。
正義「……ありがとう。本当に助かった」
チャッピー「ありがたくいただくにゃ。次に来るときは、ちゃんと支払えるようにするにゃ」
正義「次も来る前提なのか?」
チャッピー「もちろんにゃ。できれば毎日来たいにゃ」
正義「毎日は迷惑だろ!」
カナ「……ふふ」
カナは小さく笑った。けれど、その笑顔はさっきまでとは少し違っていた。目元に、寂しそうな影が差している。
正義「カナさん?どうかした?」
カナ「ううん。ちょっとね」
カナは手にした板を胸元へ抱え、店の中を見回した。磨かれた卓。壁に掛けられた古い魚の絵。厨房から聞こえる、鍋を置く音。
カナ「このお店、あと1ヶ月で閉めることになってるの」
チャッピー「にゃ!?」
チャッピーは本当に毎日来るつもりだったのかもしれない。
俺は、カナの顔を見た。
正義「どうして? こんなにおいしいのに」
カナ「味だけじゃ、続けられないこともあるから」
カナはそれ以上、すぐには話さなかった。
店の外から、荷車の車輪が石畳を転がる音が聞こえた。街はいつもどおり動いている。けれど、この店には、俺たちの知らない事情があるらしい。
正義「もし話せることなら、事情を教えてくれないか。助けられることがあるかもしれない。もちろん、無理にとは言わない」
カナは少し驚いたように俺を見た。
それから、困ったように笑い意を決したかのように言った。
カナ「……うん。少しだけ、話してもいい?」
俺たちはまだ知らなかった。この話を聞くことでこの街の日の当たらない壮絶な真実が待ち受けていたことを。
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第6話 注釈
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■ ヴァル浅瀬とソナアレ幹の燻し煮
素材を燻して香りを移し、煮汁とともに味わう料理。深い燻香と、素材から引き出した旨味が特徴。
■ 草潜ロアネとアレ・タニ樹の塩締め焼き
塩で素材の味を引き締めてから焼き上げる料理。香ばしい表面と、噛むほどに広がる旨味を楽しめる。
読んでくれてありがとうございます!!
さて!!カナの事情とは!?
この後待ち受ける展開を楽しみに待っていてください!!
続きは明日の24時に投稿いたします!!
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では皆さんまた明日お会いしましょう!




