2話「適性がないって!?どういうこと!!おれ呼ばれたのに!!俺、呼ばれたのに!!」
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第2話をお読みいただきありがとうございます!
前回、警察官を目指す真面目な高校生・遠藤正義が、スマホから猫になった相棒(?)のチャッピーと共に異世界へと召喚されてしまいました。
今回は、異世界モノの定番である「魔力適性検査」に挑みます。
誰もが予想しなかった、文字通りの「え?」となる展開をどうぞお楽しみください!
検査室の中央には、青い結晶を組み込んだ台が置かれていた。宮廷術師と助手がその横に立ち、グスタフ皇帝は少し離れた場所から見守っている。
宮廷術師「では、マナを扱う適性を調べます。結晶に手を置いてください」
正義「分かりました。これで光れば合格ですか?」
宮廷術師「光り方や反応を見て判断します」
正義「じゃあ、ものすごく光らせたほうが高得点ですね」
チャッピー「そんな気持ちでどうこうできるもんじゃないにゃ!」
グスタフ「ははは。ですが、派手に光れば分かりやすいのは確かですね」
チャッピー「陛下も乗らないでほしいにゃ。正義が本気にするにゃ」
正義「もう本気で光らせる気だった」
チャッピー「できるならやってみろにゃ!」
助手が口元を押さえた。宮廷術師は咳払いをして、検査台を指さす。
宮廷術師「……とにかく、手を置いてください」
俺は結晶の上に手を置いた。術師が短く詠唱すると、台の青い線に光が走る。
光は指先の手前まで来て、消えた。
宮廷術師「もう一度お願いします」
術師は結晶を確かめ、術式を組み直した。助手も表示を確認する。グスタフ皇帝まで一歩近づいた。
再び青い光が走った。
そして、また消えた。
助手「……あれ?」
宮廷術師「接続を確認します」
結晶を交換し、装置を調べ、別の手順でも試す。俺は何度も手を置き直した。さっきまでの冗談が、だんだん言いづらくなってくる。
宮廷術師「もう一度だけ」
術師が詠唱する。
何も起きなかった。
宮廷術師「……反応がありません」
正義「え?」
助手「え?」
グスタフ「え?」
チャッピー「にゃ?」
部屋の中で、全員の声が妙にきれいに重なった。
正義「いや、今のは俺も言いますよ。俺の手から何も出てないんですから」
チャッピー「いや、そういうのいいにゃ!!出るもんじゃないにゃ!!」
宮廷術師「マナ感受性も制御性も、両方とも反応がありません。装置を替えても同じです」
チャッピー「適性がにゃい!? ……困ったにゃ。適性がない召喚者は、過酷な運命を辿るにゃ……」
正義「急に何の話だよ」
チャッピー「何回も死んだり……でっかいカエルに追いかけられたり……」
助手「何回も死ぬんですか!?」
グスタフ「大きなカエルまで……?」
正義「なんだよそれ!!異世界ってそんなところなの?!」
助手「異世界?」
正義「あぁ、こっちの人的にはここは異世界じゃないのか、ははっ、って言ってる場合じゃないぞ!!!」
チャッピー「異世界ものでは、最初に能力がないと思われた主人公が、あとでとんでもない力を発揮することもあるにゃ。逆に、何の力もないまま知恵と工夫で生き延びる話もあるにゃ」
正義「今のカエルはどっちの話だよ」
チャッピー「危険な生き物から逃げるのも、立派な冒険にゃ」
正義「あぁ、ない側かぁ…でも、まだあとから発現する可能性があるって事か!?」
チャッピー「でっかいカエルに飲み込まれそうになったら、まず口の中から脱出するにゃ」
正義「なんで発現しない前提でカエルの説明続けてんだよぉ!!もう…どうしよ…」
宮廷術師「……適性検査の話に戻してもよろしいでしょうか」
チャッピー「もちろんにゃ。今のは現実逃避じゃなくて、リスク管理にゃ」
助手「この装置なら、適性がかなり低い人でも微弱な反応は出るはずです。そもそも、両方とも反応なしなんて……」
正義「なんだか不安だなぁこれで反応しなかったら俺ほんとになんの能力もないってことか…今更ながらファイヤーボール!!とか叫んだの恥ずかしくなってきた….」
チャッピー「ラグナロク……プフっ」
正義「うぉおおおいい!!笑うなよ!!!」
グスタフ「装置の故障という可能性は?」
宮廷術師「結晶も交換し、術式も変えました。故障を完全には否定できませんが、私はこの結果を見たことがありません」
助手「私もです。記録を探しても、これほど何も出ない例は……」
助手の声が途切れた。グスタフ皇帝も、いつもの落ち着いた表情を崩している。
正義「つまり、俺には魔法を使う適性がない?」
宮廷術師「今の検査では、確認できませんでした。原因が装置にあるのか、正義殿の状態にあるのか、まだ断定はできません」
正義「そうですか……」
胸の奥が冷えた。
異世界に呼び出され、勇者と呼ばれた。何か特別な力があるのかもしれないと思っていた。けれど、俺よりも周りの人たちのほうが、結果にショックを受けているようだった。
グスタフ「召喚された者が必ず適性を持つわけではありません。ただ、これほど反応がないとは想定していませんでした」
正義「俺を呼ぶ前に、検査はできなかったんですか?」
皇帝が黙った。
側近1(心の声)「陛下、これは答えにくい質問です……」
グスタフ「できませんでした」
正義「じゃあ、呼んでから考える方式なんですね」
チャッピー「正義、言い方にゃ。……いや、内容はそのとおりにゃ」
グスタフ「返す言葉もありません」
正義「俺も、もう少し返しやすい説明が来ると思ってました」
チャッピー「全員で陛下を追い詰めるなにゃ!」
グスタフ「今回の結果は記録します。原因を調べ、分かったことは正義殿にお伝えします」
正義「お願いします。あと、勝手に俺を実験台にしないでください」
宮廷術師「本人の同意なく、危険な検査をするつもりはありません」
正義「危険じゃなければ、勝手にやっていいわけでもないです!!」
宮廷術師「……そのとおりです」
チャッピー「検査を始める前に決めておくべきだったにゃ」
術師は小さくうなずいた。俺はようやく検査台から手を離した。
これで終わりかと思った、そのときだった。
正義「あれ。俺のボールペン……」
ポケットを探ると、指先に細いものが触れた。地球で使っていたボールペンだ。スマートフォンも問題集も見当たらないのに、これだけは持ってきていたらしい。
取り出そうとした拍子に、指から滑った。
ボールペンが床に落ちる。
カチン、と音がした。
その瞬間、検査台が轟音を立てた。
ゴォンッ――!
青い結晶から、光が噴き上がった。
さっきまでの検査で見た光とはまるで違う。結晶の内部だけではない。台に刻まれた線が一斉に輝き、床の円形の術式まで青白く点灯する。光は天井へ柱のように伸び、部屋の壁を昼間のように照らした。
目を開けていられないほどの青。
結晶が震え、台の表面を青い光が波のように走る。術師が反射的に腕で顔をかばい、助手は書類を取り落とした。グスタフ皇帝の外套が風もないのに大きく揺れる。
宮廷術師「なっ……何だ、これは!」
助手「こんな光、見たことありません!」
グスタフ「検査装置が、ここまで反応するのか……!?」
正義「え、俺、何もしてませんよ!?壊れた?!俺の反応無さすぎて!!壊れた!?!」
チャッピー「違うにゃ!!これは何か別の…」
青い光はさらに強くなった。検査室の窓がびりびりと震え、廊下の向こうから誰かの叫び声が聞こえた。
衛兵「何事だ!」
別の術師「結界の異常か!?」
助手「結界じゃありません! 検査室です!」
衛兵「検査で壁が光るのか!?」
チャッピー「普通は光らないにゃ!」
正義「でも、壁が光ると部屋が明るくていいですね」
チャッピー「感想が照明の評価にゃ!?」
グスタフ皇帝が正義を見た。術師も助手も、眩しさに目を細めながら俺の手元を見ている。
グスタフ「正義殿! そのペンを落としたのですか!?」
正義「はい!落としました!いつもはこんなことになりません!」
チャッピー「普段からこんなことになってたら、地球で大問題にゃ!」
青い光が一度、脈打った。
俺は床のペンを拾おうとして、手を止めた。光の中で、見慣れたはずの軸が目に入った。
正義「……あれ?」
さっきまで普通のボールペンだったはずだ。
黒っぽかった軸は、深い青を帯びた金属のように輝いている。表面には、いつの間にか細い銀色の線が浮かび、ペン先の近くには見たことのない紋様が刻まれていた。クリップは鋭く整った形に変わり、軸の中央には青い石のようなものが埋め込まれている。
ただ光を反射しているだけじゃない。
明らかに、形そのものが変わっていた。
正義「……なんか、かっこよくなってない?」
チャッピー「そこに気づくのが最初なのはおかしいにゃ! 普通は『何が起きた!?』が先にゃ!」
グスタフ「しかし、召喚者の持ち物が変化するとは……。古い伝承には、異世界から来た者が特別な道具を得た話もあります」
正義「つまり、伝説のボールペン?」
グスタフ「そのペンは勇者様の世界でも特別ななにか力を持ったペンだったのですか!?」
正義「違います。地球では普通のボールペンでした。もっとこう……文房具売り場に並んでる感じの」
助手「文房具売り場……?」
正義「ペンを売っている店です」
グスタフ「なるほど!特に特別なものではなかったと!」
青い光は、まだ止まらない。術師は装置へ近づこうとしたが、強い光に押し返されるように足を止めた。
宮廷術師「装置の停止術式が効かない……! 記録にもない反応です!」
助手「止められないんですか!?」
宮廷術師「今、止めようとしている!」
正義「俺のペン、壊れませんかね」
チャッピー「心配する順番が違うにゃ!」
正義「でも、俺の持ち物ですから」
グスタフ「正義殿、危険がないか確認するまで、そのペンには触れないほうが――」
皇帝は言葉を切った。正義がすでにペンを拾い上げていたからだ。
チャッピー「拾ってるにゃ!」
正義「だってそりゃ落ちたら拾うでしょ」
ペンを握った瞬間、青い光が一気に集まった。天井へ伸びていた光の柱が細くなり、床の術式を走っていた光が、一本の筋となってペンの軸へ吸い込まれていく。
そして――すべての光が消えた。
検査室に静寂が落ちた。
結晶は元の青色に戻り、台の線も沈黙している。壁も床も、さっきまでの騒ぎが嘘のようだった。
俺の手には、青い紋様の入ったボールペンが残っていた。
宮廷術師「…………」
助手「…………」
グスタフ「…………」
正義「……終わりました?」
術師はゆっくりと装置に近づき、表示を確かめた。助手は落とした書類を拾うことも忘れている。
宮廷術師「装置は停止しています。破損は……確認中です。ただ、先ほどの反応は、これまでの記録にありません」
助手「僕、あんな光を見たの初めてです。宮廷の大結晶でも、あんなに強くは……」
グスタフ「正義殿。もう一度確認ですが、そのペンは、あなたが元の世界から持ち込んだ物なのですね?」
正義「はい。普通のボールペンです。少なくとも、さっきまでは」
グスタフ皇帝はペンを見つめたあと、俺の顔を見た。
グスタフ「原因を調べたいのですが、そのペンを一時的に預けていただくことはできますか。」
俺はペンを握り直した。見た目は明らかに変わっている。青い軸に銀の線、中央の石のようなもの。地球にいたときには、こんな装飾はなかった。
正義「調べるのは構いません。でも、預けるなら何をするのか先に説明してください。それと、俺の物なので、終わったら返してください」
グスタフ「約束します。今すぐ預かる必要はありません。まずは装置の記録と、ここにいる者の証言を確認しましょう」
チャッピー「ようやく慎重な話になったにゃ。さっきは全員、目が丸くなってたにゃ」
俺は、手の中のペンを見た。
見慣れたボールペンだったはずなのに、今は別の道具のように見える。軸に浮かんだ銀の線は、角度を変えるたびに青白く光った。中央の石は、光が消えたあともかすかに輝いている。
正義「……これ、本当に俺のペンだよな?」
チャッピー「謎がひとつ増えたにゃ。マナ適性は反応なし。ボールペンは大暴れ。見た目まで変化。情報が追いつかないにゃ」
正義「いったん休憩するか」
チャッピー「変にゃタイミングで休憩すな!!!」
張り詰めていた空気が、少しだけ緩んだ。
けれど、俺の手にあるペンは、確かに変わっていた。
なぜ、適性検査では何の反応もなかった俺の持ち物が、装置をあれほど強く光らせたのか。なぜ、普通のボールペンが、見たこともない姿に変わったのか。
答えはまだない。
分かったのは2つの事―この世界に来てから、俺の身の回りでは、普通では説明できないことが起き始めているということだった。まぁそもそもこの世界に来たこと自体が普通のことではないんですがね。
そして、俺にはマナの適性がなく、ボールペンにはあるということ。
つまりボールペンに負けているということ…
俺は青く輝くペンを、壊さないようにポケットへしまった。
次は、こいつのことを調べる。
【注釈】
■ マナ適性
人間がマナを感じ取り、制御するための適性。本話の検査では、正義の適性を確認できなかった。
■ 検査装置
マナ適性を調べる装置。正義の検査中は反応しなかったが、ボールペンが床に落ちた直後、前例のないほど強い青い光を放った。
■ 変化したボールペン
正義が地球から持ち込んだ筆記具。検査装置の異常反応と同時に外見が変化し、青い軸、銀色の線、中央の石のような部位、未知の紋様が現れた。正体や能力は未確定。
お読みいただきありがとうございました!
まさかのマナ適性「ゼロ」からの……伝説のボールペン(?)爆誕。
周りがどれだけ驚いていても、まずは「部屋が明るくていいですね」「かっこよくなってない?」とマイペースな評価を下す正義、大物なのかただの天然なのか……。
チャッピーの鋭いツッコミが今回もキレキレでしたね。
この謎のペンが一体どんな力を秘めているのか、正義の異世界ライフはどうなってしまうのか、続きが気になった方はぜひ【ブックマーク】や【評価(星)】、感想などいただけますと励みになります!
次回もお楽しみに!
次は月曜日の24:00に投稿します!良かったら続き見に来てください!




