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英雄になるまでの旅路〜禁忌の森の少年、無能力の最強剣聖、嘘を見抜く転生者。3人の運命が交錯する〜王道群像ファンタジー!  作者: 皐月なる
7章「異世界に来ても俺は正義を貫く!!」【遠藤正義編】※ここからでも楽しめるよ!

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1話「なんだか絡まれている少年を助けたら異世界に召喚されたんだが?」



いつもお読みいただき、本当にありがとうございます!

昨夜は第1部「アポカリ編」のラストを見届けてくださり、本当にありがとうございました。


ここから読んでも楽しめますよ!!

さて、本日からはいよいよ予告通り、新章――【遠藤正義(えんどうせいぎ)編】がスタートします!

舞台はアポカリたちのいた世界「ルナーテ」ですが、物語はなんと、地球から召喚された一人の高校生・遠藤正義の視点へと移ります。

警察官を目指す彼が、異世界の「勇者召喚」に巻き込まれた時、一体どんな行動をとるのか――?

少年の旅立ちから、世界の歯車が大きく回り出す新章第1話。

どうぞお楽しみください!

目を開けた瞬間、正義は自分が見知らぬ場所に立っていた。


 床には青白い魔法陣。周囲には鎧姿の騎士。正面には白い髭の老人。そして、こちらを見ている大勢の人間。


 状況を理解するには情報が足りない。だが、歓迎されているらしいことだけは分かった。



だって…



グスタフ「勇者よ。よくぞ来てくれた。どうか、この世界を救ってほしい」


って言われたから



正義「え、こわっ」



 正義は両手を軽く上げた。


正義「ここはどこですか!?俺はどうやってここに来たんですか!帰りたいです!!」


 広間に沈黙が落ちた。


側近1(心の声)「そりゃ無理もない。いきなり勇者様って言われても戸惑う」


側近2「え、イケメンじゃない?うぇええ!イケメンだわぁ」



グスタフ「……落ち着いてください勇者様。今から説明しましょう。私はグスタフ・ハルヘイム………この国を治める皇帝です!!」


正義「皇帝……。分かりました。俺は遠藤正義です。

あなたが私をここに連れてきたんですか?」


グスタフ「………皇帝っ……召喚が連れてきたに当てはまるなら私が連れてきたということであっていますよ。」



正義「なるほど?召喚………説明してください!!どうして俺が召喚されたんです!?」


側近1(心の声)「乱心なさってるな…勇者様乱心なさっている」


側近2「えぇ、慌ててるの可愛い、え!かーわーいーいー勇者様、年上ってありかしらぁ」


遡ること5分前ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 正義は帰宅途中だった。警察官を目指して勉強しており、その日も試験用の問題集を持って歩いていた。


 少し先の路地で、怒鳴り声がした。


男子A「鞄を渡せよ!」


男子B「隠してんじゃねえ!」


 数人の男子が、ひとりの子どもを壁際に追い詰めていた。鞄を引っ張り、逃げ道を塞いでいる。正義は問題集を閉じた。


正義「やめろ。鞄を返せ」


男子A「誰だよ、お前」


正義「お前こそ誰だ!!」


男子B「関係ねえだろ!」


正義「関係ないのはお互い様だろ!」


 男子Aが鞄を強く引いた。子どもがよろめく。正義は男子Aの手首をつかんだ。


男子A「イテテテテ! 離せ!」


正義「鞄を離せ」


男子A「先にお前が離せ!」


正義「お前が!!離せ!!!!」


 男子Aは腕を振りほどこうとし、空いている手を振り上げた。正義はその動きに合わせて体勢を崩し、相手を地面に倒した。残るふたりも襲いかかってきたが、正義は距離と足運びを使って動きを封じた。


 相手が動けなくなったところで、正義はそれ以上手を出さなかった。


正義「もうやめろ。鞄を返して、帰れ」


 男子たちは悪態をつきながら去った。正義は子どもに鞄を返し、中身を確認するよう伝えた。


 そして、家へ向き直った次の瞬間――足元が光った。


正義「……今度は何だ!!」


 青白い円が広がり、視界が白く弾けた。


     *


 説明を聞いたグスタフは、静かにうなずいた。


グスタフ「突然の召喚だったのですね。まずは落ち着いて話せる部屋へ移りましょう。」


正義「分かりました」


 皇帝は立ち上がると、広間の出口へ向かった。大勢を動かした儀式の直後とは思えないほど、歩調は落ち着いている。側近が慌てて先回りし、扉を開けた。


 正義が歩き出した時、足元から声がした。


チャッピー「しっぽを踏んでるにゃ」


正義「え、悪い、え」


 正義はすぐに足をどけた。そこにいたのは、白い毛並みに青や薄紫の斑模様が入った、小さな猫だった。大きな青い瞳の上には紺色の警察帽。首元にも紺色の装備をまとい、背中には金色の警察エンブレムが輝いている。人間の肩に乗れるほどの大きさなのに、装備だけは妙に本格的だった。


正義「……猫?」


側近1「猫が喋った!?」

側近2「やだ可愛い…」


チャッピー「猫の姿にゃ」


正義「それは見れば分かる!!どうして俺の名前を知っている?!」


チャッピー「正義のスマートフォンに入ってたAI、チャッピーにゃ。今は猫の体で動いてるにゃ」


正義「なるほど…夢…か?…

こんなややこしい夢あるか?

…チャッピーさん、状況を説明してくれ」


チャッピー「チャッピーでいいにゃ」


 正義は少し考えた。


正義「……じゃあ、ちゃさん」


チャッピー「それじゃ別の人になっちゃうにゃ」


 正義は真顔のまま、ほんの少しだけ首を傾けた。


正義「そうか。俺は猫には『さん』をつける派なんだ」


チャッピー「いや、そこは普通にチャッピーでいいにゃ!」



チャッピー「まぁドリフターズではあるんだけども……上手いこと言うにゃーー!!」


 チャッピーは自分で言って、自分で盛り上がった。正義は反応に困り、側近は笑っていいのか分からず、グスタフだけが「ドリフターズとは何だろう」と静かに考えていた。


チャッピー「ちなみに、召喚された直後に『世界を救って』と言われるのは、異世界ものでは王道の導入にゃ」


正義「異世界もの?」


チャッピー「地球とは違う世界を舞台にした物語のことにゃ。転生、召喚、転移は似てるけど別物にゃ。死んで別の命として生まれ直すのが転生、儀式などで呼び出されるのが召喚、元の身体のまま別の世界へ移るのが転移にゃ。正義は今のところ、転生じゃなくて召喚された可能性が高いにゃ」


正義「今のところ?」


チャッピー「そうにゃ!グスタフ皇帝閣下が言ってた通り召喚された…ということは確かにゃ!ここは地球じゃないにゃ!!ただ断定はできないにゃ確定要素が集まり次第精査してみるにゃ!でもまだ結論は出さないにゃ!


正義「……後半にかけてAI感がえぐいでたな」


チャッピー「異世界ものには、ステータス画面、チート能力、冒険者ギルド、魔王討伐、言語理解、帰還方法探しみたいな定番もあるにゃ。でも、定番だからってこの世界にもあるとは限らないにゃ。メニュー画面が出ると思って念じても、出なかったら恥ずかしいにゃ」


正義「なるほど…そういうジャンルには疎いからなぁ…………ステーーータス!!!!!」


チャッピー「ステーーーータス!じゃないにゃ!やめろにゃ!!恥ずかしくにゃいのか!!」


正義は両手を前に突き出した。


正義「ダメか…くっそぉ!!!ファイヤーボール!!!…んー!!!!アイススピア!!…サンダーーーーーーボルットォ………………っだはぁああああああああラグナロク!!」


チャッピー「おーおーおーおー!!手当り次第すぎるにゃ!!!最後なんかでたらやばそうなの試すにゃ!!危ないにゃ!!知識あるにゃないか!!!」


正義「多少はね、中学2年生の頃は俺だって憧れたものさ」


チャッピー「…………相棒AIとして、相談相手の考えを整理するのも仕事にゃ。答えを勝手に決めるんじゃなくて、選択肢と確認事項を並べるにゃ」




正義「スカしたな?」



チャッピー「そんなことよりこの状況を理解して今できることをしなくてはならないにゃ!」


正義「……そうだったな」


チャッピー「私は何でも知ってるわけじゃないにゃ。異世界ものの知識はあるけど、物語の定番と目の前の世界の事実は別にゃ。分からないことは分からないと言うにゃ。必要なら質問して、情報を整理して、確認できたことから答えるにゃ」


正義「それは、とてもAIだな」


チャッピー「本物のチャットGPTみたいに、要点をまとめたり、比較したり、説明の長さを調整したりもできるにゃ。ただし、今は猫の体だから、画面に表を出すのはちょっと難しいにゃ」


正義「喋れて画面出せる猫怖い」


チャッピー「表なら頭の中で作れるにゃ。必要なら口頭で項目ごとに説明するにゃ」


正義「分かった。じゃあ、今は質問を3つに分けよう。ここがどこか。なぜ俺が呼ばれたのか。帰れるのか」


チャッピー「整理できたにゃ。質問を3つに分けて記録するにゃ。回答が出たら、確認済みと未確認に分けて更新するにゃ」


正義「おぉ、かっこいい」


グスタフ「んんっ」


チャッピー「大事なことは忘れないようにするにゃ。たまには忘れるけどにゃ」


正義「急に不安要素出てきたな」


チャッピー「弱点も正直に伝えるのが大事にゃ。読者にも隠し事はしないにゃ」


正義「読者って誰だ」


チャッピー「そこは回答を保留するにゃ」


正義「……は?」


 正義は、警察帽をかぶった白い猫を見た。青い瞳と、青や薄紫の斑模様。背中の紺色の装備には金色の警察エンブレムが入っている。猫も正義を見た。皇帝も側近も、説明を待っている。


正義「それで…俺のスマホのAIが、どうして猫になってるんだ?」


チャッピー「そこはこっちも調査中にゃ。召喚の直後に視界と身体の状態が変わったにゃ。今のところ、猫の聴覚と嗅覚は使えるにゃ。画面はないけど、会話機能は維持してるにゃ」


正義「機能の説明をされても、状況の説明にはなっていない」


チャッピー「ごもっともにゃ」


側近1(心の声)「猫が喋った。しかも、妙に理路整然としている。」


側近2「はぁあん可愛い、撫でたい…撫で回したい……もぉおおお撫で回させてぇー!!」


 正義は額を押さえかけ、やめた。今ここで混乱しても、情報は増えない。


正義(心の声)「異世界に召喚されて、皇帝に世界を救えと言われて、スマホのAIが猫になった。」


チャッピー「優先順位をつけるなら、安全確認、召喚理由、帰還手段の順が妥当だと思うにゃ」


正義「それは俺もそう思う」


チャッピー「意見が一致したにゃ!!」



側近1(心の声)「これは何を見させられてるんだ?」


側近2「あぁ、なにあの帽子初めて見る可愛い」


     *


 通された部屋には、大きな地図と何冊もの歴史書が並んでいた。窓の外には石造りの街並みが広がり、遠くには高い塔が見える。


正義「グスタフ皇帝さん、ひとつ確認してもいいですか」


 グスタフは、歩みを止めた。


グスタフ「……皇帝、さん?」


正義「はい。え、なんか変ですか?え、ここのルールと違いますか?」


 側近は一瞬、目を見開いた。皇帝陛下を役職名に「さん」付けで呼ぶ者など、少なくともこの宮廷では聞いたことがない。


側近(心の声)「陛下に『さん』付け……!?」


グスタフ「皇帝にさん付けされたのは初めてです」


正義「では、グスタフさんのほうがよかったですか?すみません。皇帝に会うのってあまりなかったもので…」


チャッピー「にゃにそのちょっと会ったことありますみたいな言い方」


グスタフ「いえ、そこまで崩さなくても……いえ、どちらでも構いません。説明を続けましょう」


 グスタフは咳払いをして歩き出した。歩調は変わらないが、耳のあたりがわずかに赤いように見えた。


正義(心の声)「こういう時はあまり舐められない方がいいと思って会ったことある風な感じ出したけど違ったっぽいな」


グスタフ「改めて説明します。この世界の名はルナーテ。私はグスタフ・ハルヘイム。あなたを呼び出す儀式を許可した者です」


正義「許可した?」


グスタフ「はい。儀式を行ったのは宮廷の術師たちです。ですが、実施を許可した責任は私にあります」


正義「なぜ、召喚されたんだってのが1番知りたいのですが…あと俺が選ばれた理由も…」


グスタフ「んー分かりました。まず地図から説明しましょう」


正義「え、なんで地っ…」


 正義が言い終わる前にグスタフが地図を広げた。その隣でチャッピーは机に飛び乗り、前足を地図の端に置いた。


グスタフ「人間領の中心となる大陸がフェルディナーゼル大陸。両勢力の間に位置するのがクライゼウ大陸。そして魔族領の大陸がグリュード大陸です。人間領と魔族領は、長いあいだ争いを続けてきました」


チャッピー「周辺のマナ濃度を解析中にゃ。地図の記載と照合して、位置情報を仮登録するにゃ」


 チャッピーの耳がぴくりと動いた。片目が淡く光り、地図上の線を追うように顔を動かしている。


チャッピー「マナの濃度と流れを解析してるにゃ。それから、今聞いた歴史を記録してるにゃ。あとで検索できるように整理しておくにゃ」


正義「話を聞きながら、同時に?」


チャッピー「AIだからにゃ。猫の体は少し不便だけど、処理能力は残ってるにゃ」


側近1(心の声)「皇帝の説明を聞きながら、未知のエネルギーを解析し、歴史まで記録している……。猫ってなんだ?」


側近2(心の声)「はぁ、撫でたい、撫で回したい!!どうしましょう!!!!もうチャッピーちゃんにしか目っが!!いかないわ!!」


チャッピー「猫ってなんだ?って顔をしているにゃ………にゃ…………」



側近1.2「なんだ貴様!心が読めるのか!?」


チャッピー「にゃっにゃっにゃっ」


 グスタフは咳払いをひとつした。だが、猫を追い払おうとはしなかった。


グスタフ「続けます」


正義「お願いします。」


チャッピー「説明の形式を提案するにゃ。出来事、記録されている事実、人間側の解釈、まだ分からない点。この4つに分けて聞くと、後で見直しやすいにゃ」


正義「いいな。その形でお願いします、グスタフ皇帝さん」


グスタフ「……はい。そのように整理して説明します」


 グスタフは少しだけ口を閉じた。皇帝としての威厳を保ったまま、猫の提案を受け入れるべきか考えているらしい。


グスタフ「古い時代、魔族軍は人間の領土へ進出しました。980年にはデヌマン・ターミナスが魔王として統治を始め、1187年に死亡。1189年にはヴァーミラ・ノクスが魔王となりました」


チャッピー「歴史記録、登録したにゃ。魔王の交代と戦争の推移は、年代を分けて保存するにゃ」



正義(心の声)「死亡?…なぜ?」



グスタフ「人間側は魔法技術を発展させ、クライシス・ハイネ・ロードが大規模な結界を築きました。魔族や魔物、マナの大規模な流入を抑えるためのものです。ただし、危険を完全に防げるわけではありません」


正義「網戸って感じですかね?割と小さい虫なら入ってきちゃうよぉーみたいな」


グスタフ「網戸があまり分かりませんが…大まかには、その通りです」


チャッピー「異世界の大結界を網戸にするにゃ!あと分からないのにめんどくさいからって説明を諦めるにゃ!!」


正義「仕組みを理解するための例えだよ」


チャッピー「真面目にゃ」


正義「必要だからな」


チャッピー「そこが正義らしいにゃ」


 チャッピーは地図の上を歩き、国境線の上で止まった。


側近1「そこは重要な境界線です!」


側近2「肉球可愛い!ぷにぷにぃ!触りたい!いいかな?」

チャッピー「…………にゃ、前足の下にあるにゃ」


側近1「前足の下でも重要です!」

側近2「前足だって重要だもの!!!」


 グスタフは地図を見下ろし、少し考えたあと、チャッピーの足元を避けて説明を続けた。


グスタフ「1223年から現在の1523年までの時代を、後世では『300年戦争』と呼びます。ただし、三百年間ずっと全面戦争が続いたわけではありません。停戦もあれば、局地的な衝突もありました」


チャッピー「年表を全部読み上げると長くなるから、重要な点から整理するにゃ。細かい記録は後で検索できるにゃ」


正義(心の声)「それはありがたい!!正直、歴史が苦手で神妙な面持ちで聞いてたけど半分ぐらい入ってきてないからな………でも、わかってる感じ出さなきゃなぁ一か八か…」


正義「1223年を元年とする聖戦歴では、現在は301年ですね」


グスタフ「はい。経過年数と年号の数え方の違いです」


正義(心の声)「よっしゃぁあ!!あってた!!っぶねぇ!」


グスタフ「現在、人間側はかつての魔族領のおよそ四割を支配しています。しかし、人間領では資源不足が深刻になっています。そのため、領土や資源をめぐる対立が続いています」


正義「領土を広げているのに、資源が足りないんですか?」


グスタフ「領土が増えれば、すべての資源が必要な場所にあるとは限りません。採掘や輸送にも人員と時間が必要です。支配した土地が、そのまま豊かさになるわけではありません」


正義「……なるほど。地図の色が変わっても、暮らしが楽になるとは限らないんですね」


グスタフ「その通りです」


チャッピー「今の説明は歴史記録と経済状況に分けて登録したにゃ。土地の支配と資源供給は別の項目にするにゃ」


正義「助かる。あとで確認したい」


チャッピー「任せるにゃ。検索しやすいように分類しておくにゃ」


 グスタフは次のページを開いた。そこには、契約書の写しらしい文書が挟まっていた。


グスタフ「過去には『贄の契約』と呼ばれる取り決めもありました。人々を魔族領へ引き渡すもので、本人の意思によらず送り出された者もいます。そうした人々は、現在『受け入れの民』と呼ばれています」


 正義の表情がわずかに硬くなった。


正義「本人が望んでいなくても、ですか」


グスタフ「はい。すべての経緯が同じだったわけではありませんが、本人の意思が尊重されなかった例はあります」


 チャッピーの耳が、今度は動かなかった。


チャッピー「記録したにゃ。ただし、契約の名称だけで正当性があったと判断しないよう、補足も付けておくにゃ」


正義「お願いします」


 正義は文書から目を離さず、しばらく黙っていた。


正義(心の声)「世界を救えと言われた。でも、この世界で何が起きてきたのか、まだ一部しか聞いていない。きっと魔族から人間を救えってことなんだろう……魔族ってもう響きが怖いし……でも、実際に見てみないと…そもそもついさっきまで一介の高校生が魔族と戦うってそんなことあるのか?無理だろ…」


 その疑問は口に出さなかった。


グスタフ「ここまでが、現在の状況を理解するために必要な歴史の概要です。もちろん、これだけで全てが分かるわけではありません」


正義「ありがとうございます。ひとつ確認したいことがあります」


グスタフ「どうぞ」


正義「俺を呼んだのは、俺に特別な力があると分かっていたからですか。それとも、勇者が必要だったからですか?」


 グスタフはすぐには答えず、歴史書を閉じた。


グスタフ「それについては、記録を含めて正確に説明する必要があります。」


正義「分かりました。では、次にそこを聞かせてください。それから、元の世界へ戻る方法についても」



正義はその心の声を知らない。ただ、目の前の皇帝を見ていた。


 世界を救うかどうかを決めるのは、説明を聞いたあとだ。




チャッピー「あと、側近2!!お前だけずーーーっと声出てたにゃ!!!怖いにゃ!!!」




【注釈】


■ 遠藤正義

地球出身の17歳。警察官を目指して勉強している。真面目で冷静だが、いじめを見過ごさず、自分で判断して行動する。にゃ


■ チャッピー

正義が使用していたスマートフォンに搭載されたAI。スマートフォンに警察のシールを挟んでいたことをきっかけに、召喚後は白い毛並みに青や薄紫の斑模様が入った猫の姿となった。青い瞳を持ち、紺色の警察帽と警察装備を身につけ、金色の警察エンブレムを背負っている。人間の肩に乗れるほどの大きさ。情報解析・サポート・予測を得意とし、マナから情報を取得して登録・解析するほか、相手の動きの学習や強さの推定、解決策の提案を行う。マナで充電するため、マナの薄い場所では動作が遅くなり、大量の質問で処理落ちすることがある。たまに情報を忘れる。発言の語尾には「にゃ」を付ける。にゃ


■ グスタフ・ハルヘイム

帝国を治める皇帝。責任から逃げず、確認できていないことを断言しない。落ち着いた態度を保ち、自分のペースで説明を進める。にゃ


■ ルナーテ

正義が召喚された世界の名称。にゃ


■ フェルディナーゼル大陸/クライゼウ大陸/グリュード大陸

人間領の中心となる大陸、両勢力の間に位置する大陸、魔族領の大陸。にゃ


■ デヌマン・ターミナス/ヴァーミラ・ノクス

デヌマンは先代魔王。980年に統治を始め、1187年に死亡した。ヴァーミラは1189年に魔王となった。にゃ


■ クライシス・ハイネ・ロードの大結界

魔族や魔物、マナの大規模な流入を抑えるために築かれた結界。危険を完全に防ぐものではない。にゃ


■ 300年戦争/聖戦歴

1223年から1523年までの戦争や停戦などが繰り返された時代を「300年戦争」と呼ぶ。1223年を元年とする聖戦歴では、1523年は301年に当たる。にゃ


■ 贄の契約/受け入れの民

贄の契約は、人々を魔族領へ引き渡す取り決め。本人の意思によらず引き渡された人々もおり、そうした人々は「受け入れの民」と呼ばれる。にゃ



挿絵(By みてみん)

第36話(新章第1話)をお読みいただき、ありがとうございました!

異世界に召喚されながらも、全く物怖じせずに冷静に事実を確認しようとする正義。そして、なぜか猫の姿になってしまった相棒のスマホ・チャッピー。

アポカリとはまた違った魅力を持つ、新しい主人公の物語はいかがでしたでしょうか?

この【遠藤正義編】の続きとなる次回は、【日曜日 24:00】に投稿予定です!

これからアポカリたちの物語と、この正義の物語がどのように交錯し、壮大な本格群像劇ファンタジーへと繋がっていくのか……!

「正義のキャラが面白い!」「スマホが猫になるチャッピー可愛い!」「水曜日の続きが気になる!」と思ってくださった方は、ぜひページ下部から【ブックマークに追加】や、評価の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして応援していただけると、日曜日に向けて執筆する物凄いエネルギーになります!

それでは日曜日の24:00に、またお会いしましょう!


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