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英雄になるまでの旅路〜禁忌の森の少年、無能力の最強剣聖、嘘を見抜く転生者。3人の運命が交錯する〜王道群像ファンタジー!  作者: 皐月なる
1章「日常」【アポカリ編】

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2話「僕の大切なお友達」

翌朝、アポカリは昨日見つけた跡の場所を、頭の中で何度も思い返していた。


 リリア「朝から難しい顔ね。器の数でも数えているの?」


 アポカリ「それはもう間違えないよ! 昨日、森で変な跡を見つけたんだ」


 彼は場所と形を説明した。リリアは途中で口を挟まず、最後まで聞いた。


 リリア「今日、1人で確かめに行くのはだめよ」


 アポカリ「うん。今日は採集だけにする」


 返事は早かった。好奇心が消えたわけではないが、母を安心させたい気持ちも本当だった。


 集落の広場では、ロウが採集人の壊れた道具を直していた。柄の割れ目を確かめ、使える部分を残している。


 採集人「また壊しちまった。急いでいたんだ」


 ロウ「急いでいたのに、壊れた道具を持って帰ってきた。十分えらいぞ。投げ捨てていたら、もっと困った」


 採集人「そこを褒めるのか?」


 ロウ「直すところが見つかったんだからな。次は足場を見てから使おう。ほら、ここは俺が直す。お前は新しい柄を選んでくれ」


 アポカリは目を輝かせた。


 アポカリ「ロウ、僕も見ていていい?」


 ロウ「もちろんだ。興味津々って顔だ、」


 アポカリ「そんな顔ある?」


 ロウ「あるとも。今の顔は『次は僕がやる!』って顔だ」


 アポカリ「当たり!」


 ロウは笑い、割れた柄を見せた。アポカリはどこに力がかかったのかを考え、使い方を変えれば同じ壊れ方を避けられそうだと気づいた。


 ロウ「いい目だな。考えたことを言ってみてくれ」


アポカリは説明した。

ロウは頷き、合っているところを先に褒めてから、見落とした点を教えた。アポカリは嬉しくなって、つい次の質問までしてしまう。


 少し離れたところで、サナが籠を抱えてやってきた。


 サナ「アポカリ。採集は?」


 アポカリ「あっ」


 サナ「忘れていた顔ね」


 アポカリ「忘れてない! 今から行くところ!」


 サナ「なら、行ってらっしゃい。帰ってきたら籠を手伝ってもらうからね」


 アポカリ「はい!」


 森では、昨日の跡を見つけた場所を避けて採集した。フララマ木を必要な分だけ採り、周囲に新しい変化がないかだけ確認する。帰りに、木漏フェグトが水辺へ降りてくるのを見かけた。長い胴を低くし、水面を見定めてから、素早く頭を伸ばす。


 魚を捕らえた木漏フェグトは、枝へ戻ると獲物を飲み込んだ。アポカリはその様子をしばらく眺めた。


 アポカリ「狙うときは、ちゃんと相手を見てるんだな……」


 帰り道、昨日の跡の近くから、短く土を擦る音がした。


 アポカリは足を止めた。音は1度。少し間を置いて、もう1度。


 見に行きたい。けれど、今日は採集だけと約束した。


 アポカリ「……帰って報告。これも立派な仕事」


 自分に言い聞かせて、彼は集落へ戻った。


 サナは籠の縁を直して待っていた。


 サナ「遅かったわね。何か見つけたの?」


 アポカリ「跡の近くで音がした。でも、ひとりでは見に行かなかったよ!母さんに言われたからね!」


 サナ「えらいじゃない」


 アポカリ「本当?」


 サナ「本当。ただし、褒めたからってすぐ調子に乗らないこと!」


 アポカリ「乗ってないもん!!」


 籠の修理は、思ったより難しかった。アポカリが紐を引きすぎて編み目が歪み、サナが眉を吊り上げる。


 サナ「ほら、力任せにしない。」


 アポカリ「あー、もう!なんで上手く行かないんだー!!」


 ロウが通りかかり、歪んだ籠を見て笑った。


 ロウ「初めてにしてはいいぞ。縁が歪んだのは、どこに力をかけたか分かったってことだ。直せば次は上手くなる」


 アポカリ「ロウは何でも褒めてくれるね」


 ロウ「頑張ったところは褒めるさ。失敗したところは、一緒に直せばいい」


 その言葉が、アポカリは好きだった。失敗したからといって、最初から全部だめになるわけではない。次にどうするかを考えればいいのだ。


 夕方、アポカリはリリアに森の音を伝えた。彼女は心配そうに眉を寄せたが、彼が約束を守ったこともきちんと認めてくれた。


 リリア「報告してくれてありがとう。明日は、必要ならサナやロウと相談しましょう」


 アポカリ「うん。みんなで見れば、分かることも増えるよね」


 リリア「そうね。でも、みんなで行くからといって、先頭を走っていいわけではないわよ」


 アポカリ「……そこまで分かってるの?」


 リリア「あなたの母ですから」


 アポカリは笑った。明日は何が見つかるのだろう。楽しみで、少し怖い。その両方を抱えたまま、彼は眠りについた。




【注釈】

※フララマ木:マフラの深い林床に生える樹木で、薬用原料になる。採集では木そのものを傷めず、必要な分だけを持ち帰る。

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