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英雄になるまでの旅路〜禁忌の森の少年、無能力の最強剣聖、嘘を見抜く転生者。3人の運命が交錯する〜王道群像ファンタジー!  作者: 皐月なる
3章「魔族の少女」【アポカリ編】

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14話「最近のアポカリは遠くを眺める」

ロウは、集落の作業場で道具の柄を締め直していた。少し緩んだ木の柄を押さえ、楔を打ち直す。向かいではサナが、採集に使う籠の傷みを確かめていた。


 サナ「最近、アポカリが森へ出る前に荷物を確かめるようになったわね」


 ロウ「いいことじゃないか。前は、出てから忘れ物に気づくこともあったからな」


 サナ「いいことよ。でも、短剣まで持っていこうとしていたら、話は別」


 ロウは手を止めた。


 ロウ「短剣?」


 サナ「昨日、家の裏で包みを持っていたのを見たの。何をするつもりだったのかは知らないけど」


 ロウは少し考えてから、また柄を押さえた。ジオから短剣をもらった時のアポカリの顔を覚えている。うれしそうで、何度も包みを確かめていた。


 ロウ(旅人たちと過ごしてから、あいつの目は前より遠くを見るようになったな。知らないものを見たいんだろう。そういう顔をするようになったのは、嬉しい。)


 ロウは木槌を置き、締まった柄を握って確かめた。


 ロウ(でも、見たいものが増えれば、危ない場所まで見に行きたくなる。そこは、まだ子供なんだよな。)


 サナは籠の縁を指でなぞり、ささくれを見つけると小さな刃物で削った。アポカリが森で何かを見つけた時の顔を思い出す。何でも知りたがるし、少し止められたくらいでは、納得するまで考え続ける。


 サナ(成長したのは分かるわ。前より周りを見て、考えてから動くことも増えた。でも、考えた末に無茶をするなら、前より厄介じゃない。)


 サナは削りくずを払った。


 サナ(嬉しくないわけじゃないのよ。……怪我を増やさないでくれれば、それでいいの。)


 ロウ「本人に聞いたのか?」


 サナ「まだよ。決めつけて叱ったら、余計に隠すでしょう」


 ロウ「分かってるじゃないか」


 サナ「あなたは褒めるのが早いのよ。本人が何をしようとしてるか、ちゃんと確かめてからにして」


 ロウ「はいはい。まずは聞いてみるさ」


 サナ「その『はいはい』が一番信用できないの」


 ロウは笑い、サナは呆れた顔をした。二人とも、アポカリが変わり始めたことには気づいていた。だが、急いで答えを出す必要はない。本人が何を考えているのか、まずは聞けばいい。


 その日の夕方、森から戻ってきたアポカリは、籠を下ろすなりロウに声をかけた。


 アポカリ「ロウ、短剣って、どうやったらうまく扱えるの?」


 ロウはサナと顔を見合わせた。


 ロウ「まず、どこで振った?」

アポカリ「……それは、先に聞かないでほしかったな」


 サナ「つまり、振ったのね」


 アポカリ「少しだけだよ!」


 サナ「その『少しだけ』を、あなたが言うと心配になるのよ」


 ロウは吹き出しかけ、サナに睨まれて口元を引き締めた。


 ロウ「分かった。明日、使い方を教える。ただし、勝手に振り回さないこと。短剣は遊び道具じゃないからな」


 アポカリ「うん。約束する」


 サナ「その約束を守るところまで見届けるわよ」


 アポカリは少し困った顔をしたが、すぐに笑った。


 アポカリ「……じゃあ、明日ね」


 ロウ「明日だ」


 サナは何も言わず、籠を家の中へ運ぶアポカリの背中を見送った。小言はまだいくらでも出てきそうだったが、今はそれで十分だった。

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