第11話:「結局あんたは私に何をさせたかったわけ?」
「最初の約束通り、シノさんのこれまでの盗みなどの件に関してはすべて不問といたします」
冷え切った空気の残る地下施設から解放された私は、なぜかGGGの黒塗りの送迎車に押し込まれ、自宅まで送り届けてもらうことになった。
運転席には屈強な運転手が座っており、後部座席にはスーツに身を包んだトキが静かに腰掛けている。
張り詰めていた糸が切れはしたが、着なれた制服に着替えた後も、濡れたゴスロリ衣装を身にまとっていた感覚で今も居心地が悪い。
「……ねえ」
私は無言で隣に座るトキに声をかけた。
「どうかしましたか?」
「結局あんたは私に何をさせたかったわけ?」
「!?」
それまで無表情だったトキは、わずかに目を丸くして一瞬だけ動揺の色を見せたが、すぐにいつもの冷ややかな仮面へと戻った。
「あなたに自分の罪を清算する機会を与えただけですよ。これに懲りたら、もう悪いことはしないことですね」
「……今、動揺したでしょ? 本当は何か他に目論見があったんじゃないの?」
「お好きなように受け取ってください」
やがて車は私の家の近くに静かに滑り込み、運転手が後ろのドアを開けた。
「もう二度と、あんな趣味の悪い場所には呼ばないでしょうね」
トキは軽く肩をすくめ、意味深な笑みを浮かべる。
「それはあなた次第ですよ」
「……は? 何それ?」
「さあ、どうでしょう。また会いましょう、シノさん」
それ以上は何も言わず、トキは促すように微笑んだ。
私は舌打ち代わりに小さく息を吐き出すと、夜の冷気に満ちた外へと降り立った。
私の姿が見えなくなると、車は再び静かに発進していった。
後部座席で窓の外を見つめながら、トキは小さくため息をつく。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
GGGの闇は深い。父の背負った借金、この組織が飲み込んできた数々の暗部。
15歳の私には、まだ背負いきれないほどの重荷がのしかかっている。
シノさんのような、綺麗事だけじゃない、泥臭くも鋭い牙を持つ人間がいれば……この深い闇を切り裂く力になったかもしれない。
あの子の隠密としての腕や度胸を思えば、本気で仲間になってほしかったという思いが頭をよぎる。
けれど、それは私の個人的な感傷に過ぎない。
こんな危険な泥沼に、あんな少女を引きずり込むのは――ただの私のわがままですね。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
夜の冷たい空気の中、トキを乗せた車は再び組織の闇へと戻っていった。




