第9話 Eランク攻略
広い石造りの部屋で、四体のゴブリンが蒼太を見ていた。
手前の三体は棍棒を持った、これまでと同じ大きさのゴブリン。その奥には、一回り大きなゴブリンが剣と盾を構えて立っている。
蒼太が剣を抜くと、三体が一斉に走り出した。
一番前のゴブリンが棍棒を振り上げる。蒼太はその横へ踏み込み、すれ違いざまに胴を斬った。身体が光へ変わるのを待たず、そのまま剣を返す。
二体目の棍棒を外へかわし、空いた脇腹へ一閃。続けて横から迫った三体目には身体を沈め、棍棒が頭の上を通り過ぎたところで斬り上げる。
三体とも、蒼太がほとんど足を止めないまま淡い光へ変わっていった。
「おお、いける!」
残った大きなゴブリンが低い声を上げ、盾を前へ出したまま剣を振りかぶって走ってくる。
蒼太も正面から踏み込んだ。振り下ろされた剣を半歩外してかわし、そのまま横から斬ろうとした瞬間、丸い盾がすぐに割り込んでくる。
ガンッ!
剣を握る手に、これまでとは違う重い感触が返った。ゴブリンに剣をしっかり止められたのは初めてだった。
「おっ」
それでも押し返されるほどではない。
蒼太がそのまま力を込めると、盾ごと相手の腕が外へ流れた。空いた胴へ踏み込み、真正面から斬り抜く。
大きなゴブリンの身体がぐらりと傾く。体勢を戻そうとするより早く、蒼太は返した剣をもう一度振った。
刃が胴を抜け、その身体が淡い光へ変わる。
「よし!」
四体の姿が消えたあと、床には魔石が残った。三つはこれまで拾ってきたものと同じくらいで、ボスのものだけは一回り大きい。
蒼太はまず大きな魔石を拾い、リュックへ入れた。だが、朝から拾い続けてきたせいで、中はもうほとんど隙間がない。通常のゴブリンの魔石は、途中から入りきらない分を何個か置いてきていた。
「もっと入るやつ欲しいな……」
残った隙間へ入る分だけ詰めたところで、部屋の中央に淡い光が集まり始めた。
何もなかった石床の上で光がゆっくり形を作り、やがて一つの宝箱になる。
「おお!」
蒼太はすぐに近づいて蓋を開けた。中身を取り出し、詰まったリュックの隙間へ押し込んで、どうにか蓋を閉じる。
少しして、部屋の端には青白い光の円が浮かび上がった。
蒼太が中へ入ると視界が白く染まり、次に足元の感触が戻った時にはダンジョン入口近くへ戻っていた。ドローンを呼び戻し、そこで配信を終了する。
「今日も結構やったな」
そのまま管理施設へ戻り、戦利品の買い取りカウンターへ向かった。
「買い取りお願いします」
「はい。こちらへどうぞ」
重くなったリュックを台へ下ろし、中身を出していく。
ゴブリンの魔石が次々と並び、最後にボスの大きな魔石と宝箱から手に入れたアイテムを置く。昨日より明らかに量が多い。
職員は一つずつ確認しながら端末へ入力していった。
蒼太はカウンターの前で待ちながら、並べられた魔石を見る。昨日までずっと拾っていたスライムの魔石より大きいものばかりだ。
しばらくして、画面を確認した職員が顔を上げた。
「合計で、123,578円になります」
「12万!?」
思わず画面を見直す。
昨日は10,430円。それでも十分嬉しかったのに、今日は一日でその十倍以上になっていた。
「お願いします!」
代金がスマホの電子決済残高へ反映される。表示された数字を見てからスマホをしまい、今度はステータスを開いた。
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上山蒼太
Lv.27
HP 194
MP 108
筋力 65
耐久 62
敏捷 70
魔力 57
【スキル】
・超成長 Lv.1
・剣術 Lv.18
・走法 Lv.11
・持久力 Lv.10
・回避 Lv.9
・体術 Lv.8
・気配察知 Lv.4
・打撃耐性 Lv.3
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「おお……めっちゃ上がったな」
朝はLv.18だった。
それが一日で27まで上がり、昨日まで持っていたスキルもほとんど伸びている。さらに、打撃耐性まで増えた。
蒼太はしばらくステータスを眺めてから、満足してウィンドウを消した。
カウンターを離れ、施設の出口へ向かう。今日は昨日よりずっと長く動き回ったはずなのに、足取りはまだ軽かった。
「すみません」
後ろから声をかけられ、蒼太は足を止めた。
振り返ると、紺色のジャケットを着た女性がこちらへ歩いてくる。探索者には見えない。何の用だろうと思っているうちに、女性は蒼太の前まで来た。
「上山蒼太さんですよね?」
「はい」
女性は軽く頭を下げる。
「突然すみません。白峰ホールディングス、探索者支援事業部の前田彩花と申します」
「白峰ホールディングス……?」
名前は蒼太も知っていた。いくつもの事業を手がけている、大きな会社だ。
そんな会社の人間がなぜ自分に、と蒼太が首を傾げる。
前田は少し笑ってから続けた。
「昨日と今日の配信を拝見しました。もしよろしければ、少しお話しできませんか?」
「配信?」
蒼太の反応を見て、前田が一瞬だけ目を丸くした。
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