第10話 探索者支援
「……もしかして、ご自分の配信が今どうなっているか、あまりご存じないんですか?」
「どうなってるって?」
「いえ、コメントにもほとんど反応されていなかったので、そういう配信スタイルなのかと思っていたんですが……」
前田は少し言葉を切った。
「本当に気づいていなかったんですね」
「はい。配信の方は全然見てなかったです」
蒼太にとって配信は、ダンジョンへ入るためにつけているものだった。気になっていたのは、どんなモンスターがいるのか、どこまでレベルが上がるのか、どんなスキルを伸ばせるのか。自分の配信がどれくらい見られているかは、これまで一度も確認していなかった。
「ちょっと見てみます?」
前田に言われ、蒼太はスマホを取り出した。
自分の配信ページを開く。
「……え?」
見覚えのないほど数字が増えていた。
昨日の探索だけでも最高同時視聴者数は100,152人。投げ銭総額は1,517,938円で、どちらもその日の探索者ランキング1位。
それだけでも十分おかしい。
さらに今日の記録を開くと、投げ銭はすでに3,000,000円を超えていた。
「300万!?」
「はい。投げ銭ランキングは2日連続で1位です。同時視聴者数も今日の1位になっています」
蒼太は画面を見たまま固まった。
自分がダンジョンでモンスターを追いかけていた間に、配信の方ではそんなことになっていたらしい。
「マジか……」
「2026年度探索者レベルランキングも、現在1位です」
「それは……すごいですね」
自分のことなのに、少し他人事みたいな言葉が出た。
前田が小さく笑う。
「それで、上山さんにお声がけしました。ここで立ったままお話しする内容でもないので、よろしければ近くのカフェへ移動しませんか?」
「はい」
蒼太は施設で必要な用事を済ませ、前田と一緒に外へ出た。
少し歩いた先のカフェに入り、向かい合って席につく。
「改めまして、白峰ホールディングスの探索者支援事業部で、探索者の支援契約を担当しています」
前田はそう言ってから、白峰ホールディングスの事業について説明を始めた。
白峰ホールディングスは国内でいくつもの事業を展開している大企業で、その一つとして探索者向けの支援事業を行っている。
中でも力を入れているのが、一人で活動する探索者への支援だった。
「パーティーやギルドに所属していれば、装備や物資の準備、戦利品の運搬、売却、配信関係の対応まで、ある程度は分担できます。でもソロの探索者は、それを全部自分でやらないといけません」
「ああ……」
今日のリュックを思い出す。
魔石が入りきらなくなり、途中からいくつか置いてきた。
「ランクが上がれば、一日で攻略を終えられないダンジョンも増えていきます。そうなると、食料や水、回復用品、予備装備まで必要になりますから」
前田はテーブルの上へ資料を置いた。
「そこで弊社では、有望な探索者に装備や物資、探索用機材などを提供しています。剣や防具、盾、撮影用ドローン。それから――」
ページを一枚めくる。
「アイテムバッグのような収納用装備もあります」
「アイテムバッグ?」
蒼太の反応が変わった。
「普通のバッグより、かなり多くの物を収納できます。今日の配信を見た限り、上山さんにはかなり必要そうでしたので」
「それ、めっちゃ欲しいです」
「ですよね」
前田が笑って、さらに資料をめくる。
「ほかにも、契約内容によってはスキルブックを支給することもあります」
「スキルブックもあるんですか!」
蒼太はすぐに資料へ視線を落とした。
「はい。魔法系なら、火や水、風といったスキルを取得できるものもあります」
「火とか風のやつも?」
「あります。ただ、スキルブックはかなり高価です。装備みたいに何冊でも、というわけにはいきません。契約内容次第ですが、一冊か二冊程度ですね」
「それでも十分じゃないですか!」
剣だけでも楽しい。
そこに魔法まで増える。
蒼太は並んだ説明をもう一度見た。
前田はそんな様子を見てから、話を続ける。
「もちろん、弊社側にも条件はあります。白峰ホールディングスの支援を受けていることを公表していただくこと。配信などでスポンサー表記をしていただくこと。それから、場合によっては広告へのご協力をお願いすることがあります」
「それくらいなら大丈夫です」
「探索方法や、どのダンジョンへ行くかまで弊社が決めることはありません。基本的には、上山さんには今まで通り探索していただきます」
「じゃあ、めっちゃいいですね」
前田が少し笑った。
「ただ、正式な条件をお出しする前に、一つ確認させてください」
「はい」
「可能でしたら、上山さんのステータスを見せていただけますか?」
最後まで読んでいただきありがとうございます!
面白かった、続きが気になると思っていただけましたら、ブックマークや☆評価、感想で応援していただけると励みになります!




