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第8話 欲しい強さ

 少し先から聞こえた声を追うと、曲がり角の向こうにまたゴブリンがいた。


 今度は剣を抜かない。蒼太がそのまま近づくと、ゴブリンもすぐに走り出した。振り上げられた拳を横へかわし、すれ違いざまに腹へ拳を打ち込む。


 ドンッ!


 鈍い音と一緒に、ゴブリンの身体が横へ吹き飛んだ。


「うわっ」


 自分で殴った蒼太の方が少し驚いた。ゴブリンは石床を転がりながら起き上がろうとする。蒼太は追いかけ、今度は踏み込んで脇腹へ蹴りを入れた。


 ゴッ、と重い感触が足へ返ってきて、身体がまた転がる。


「結構いけるな」


 剣ほど一瞬では終わらないが、拳も蹴りも十分通じている。立ち上がってきたゴブリンへもう一度踏み込み、正面から拳を叩き込むと、その身体が淡い光へ変わった。


 蒼太はその場でステータスを確認した。


━━━━━━━━━━━━━━

【スキル】

・体術 Lv.4

━━━━━━━━━━━━━━


「上がった!」


 剣術と同じだった。昨日はいつの間にか覚えていた体術が、今日は狙って動いただけで一つ上がっている。


 魔石を拾って奥へ進む。


 次に見つけたゴブリンでは、今度はすぐに反撃しなかった。飛んできた腕を半歩下がってかわし、続く拳は身体を横へずらして外す。


 ゴブリンが追ってくるたびに、蒼太はぎりぎりまで待ってから逃げた。昨日のスライムより動きが人間に近いぶん、拳の軌道も分かりやすい。


「おっと」


 鼻先を拳が抜ける。そのまま横へ回り込み、背中を軽く押すように蹴ると、ゴブリンが前につんのめった。


 また振り向いてくる。今度は右へ抜け、次は左へかわす。何度か避けてから拳で倒し、魔石を拾った。


 さらに何体か相手に同じようなことを試していると、途中で確認したステータスの回避がLv.6まで上がっていた。体術もLv.5になっている。


「おお、ちゃんと上がってる」


 蒼太はそのまま続けた。剣で倒す時もあれば、素手で戦う時もある。通路を走って次のゴブリンを探し、見つければ少し動きを見てから倒す。


 昼になる頃には、朝より明らかに身体が動かしやすくなっていた。


 持ってきた軽食を食べ、水を飲んで少し休む。その間に蒼太がスマホで見ていたのは、昨夜調べたスキルの情報だった。


 同じ種類の攻撃を受け続けることで、耐性系のスキルを取得することがある。


 蒼太は画面を閉じた。


「これもやってみるか」


 午後、最初に見つけたゴブリンの前で、蒼太は剣を抜かなかった。拳が飛んでくるが、今度は避けない。両腕を上げ、そのまま受ける。


 バンッ!


「おお」


 腕に衝撃はきたが、それほど痛くない。もう一度は肩で受けると、ゴッ、と身体が少し押された。


「これならいけるな」


 そのまま何発か受けてから、最後は拳で倒した。


 一体だけでは何も変わらなかった。次のゴブリンでも、さらにその次でも、拳を何度か受けてから倒す。腕や肩に少しずつ鈍い痛みは残ったが、探索を続けられないほどではない。


 そして、何体目かを倒したところでステータスを開く。


━━━━━━━━━━━━━━

【スキル】

・打撃耐性 Lv.1

━━━━━━━━━━━━━━


「きた!」


 新しいスキルが増えている。


 蒼太は思わずもう一度その文字を見た。


 剣を使えば剣術が伸びる。避ければ回避が伸びる。素手で戦えば体術が伸びる。


 今度は、受けることでも新しいスキルが増えた。


「すげえな、これ」


 そこからは早かった。


 ゴブリンを探して通路を走り、見つけるたびに少しずつ戦い方を変える。剣で斬る。拳で殴る。蹴る。ぎりぎりまで引きつけて避ける。余裕がある相手なら何発か受けてから倒す。


 同じ一体をいつまでも相手にはしない。試したいことを試したら倒して、すぐ次へ向かう。


 その間にもレベルは上がった。昼を過ぎた頃には20を越え、その後もゴブリンを倒すたびに少しずつ数字が伸びていく。


 走り回っているうちに走法と持久力も上がり、角の向こうから聞こえる足音や声に気づくことが増えるにつれて、気配察知も伸びていた。気づけば、リュックの中には朝より大きな魔石が何個も溜まっている。


 午後もかなり進んだところで、蒼太は一度足を止めた。スマホを取り出して時刻を見る。


「そろそろボス行くか」


 マップを開くと、奥にボス部屋が表示されていた。昨日と同じように現在地から道を確かめ、そちらへ進む。


 何本か通路を抜けた先に、大きな両開きの石扉が見えてきた。


「ここか」


 蒼太は扉へ手をかけ、そのまま押し開けた。


 中はこれまでの通路よりずっと広い石造りの空間だった。中央にゴブリンが四体いる。


 三体はこれまで倒してきたものと同じくらいの大きさだが、手には太い木の棍棒を持っている。その後ろに立つ一体だけは明らかに大きく、右手には剣、左手には丸い盾を持っていた。


「おお、ちゃんと武器持ってる」

最後まで読んでいただきありがとうございます!

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