第4話 見つかった新人
4月1日。
三浦海斗は朝から、新しく探索者になった連中の配信を眺めていた。
毎年この日は、新人探索者の配信が一気に増える。探索中の映像記録と公開が義務になっている以上、配信に興味があるかどうかに関係なく、ダンジョンへ潜ればその様子は見られる。
海斗はそれを毎年楽しみにしていた。
今年も朝から、2026年度探索者レベルランキングの上位を順番に見ていく。
探索者一家で育ち、最初から高価な装備を揃えている新人。すでに活躍している探索者に同行し、効率のいいダンジョンでレベルを上げている新人。探索者になる前から剣術を習い、初日とは思えない動きをしている新人。
「今年はこの辺か」
上位にいる連中は、見ればだいたい理由が分かる。
午前10時を少し回った頃には、気になっていた配信は一通り見終えていた。海斗はもう一度ランキングを開き、今度は上位からそのまま下へ流していく。
百位を越えたあたりで、ふと指が止まった。
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【2026年度探索者レベルランキング】
120位 上山蒼太 Lv.6
配信タイトル:4月1日
同時視聴者数:2
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名前に見覚えはない。
それより気になったのは、日付だけの配信タイトルだった。
「初期設定のままじゃん」
海斗はそのまま配信を開いた。
映ったのは石造りの通路だった。その中央を、一人の男がかなりの速度で走っている。
「……速っ」
少し先に半透明のスライムが見えた。
男――上山蒼太はほとんど速度を落とさないまま近づき、剣を振る。銀色の刃がスライムの身体を一気に通り抜け、相手はそのまま淡い光へ変わった。
落ちた魔石を拾うと、すぐにまた走り出す。
しばらくして見つけた次のスライムも、一撃だった。
『速くね?』
海斗もコメントを打つ。
『初見』
『ステータス見せて』
だが、蒼太は反応しない。
また一体見つけて斬り、魔石を拾って次へ向かう。コメント欄を確認している様子もなかった。
「見てないのか?」
もう少し見ていても変わらない。視聴者へ話しかけることもなければ、コメントへ返事をすることもない。ただダンジョンを走り回り、スライムを見つけては倒していく。
「……ああ、配信やる気ないタイプか」
探索中は配信が義務だ。必要だからつけているだけで、視聴者とやり取りする気のない探索者もいる。
そう考えれば、日付だけのタイトルにも納得がいった。
ただ、それにしても狩る速度がおかしい。
「これ、切り抜いたらバズるんじゃね?」
海斗はスマホを開き、SNSへ短く投稿した。
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新人ランキング120位に、配信タイトルが「4月1日」のままのやついるんだけど。
Fランクでスライム狩ってる速度がおかしい。
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数分もしないうちに返信がついた。
『どれ?』
『スライム狩ってるだけじゃん』
『いや速度異常だろ』
海斗は配信を見ながら、もう一度ランキングを開いた。
「え?」
さっきまで120位だった上山蒼太の名前が、もう少し上にある。
「早っ!」
そこから、順位が変わるたびに気になった。
配信を見て、しばらくしてランキングを開く。また上がっている。少し時間を置いて確認すると、今度はさらに上だった。
視聴者も増え始める。
『SNSから』
『ずっと一撃じゃん』
『手際良すぎて草』
『さっきより速くなってない?』
最初に見た時から、蒼太はスライムを見つければほとんど足を止めずに斬っている。それだけではなく、魔石を拾ってから次の相手を探し始めるまでの動きまで、いつの間にか滑らかになっていた。
「何でこんな伸びてんだ……?」
上位の新人が早くレベルを上げる方法なら、海斗も知っている。
すでに強い探索者に手伝ってもらい、自分一人では行けないような場所で効率よく経験を積む。装備や知識を揃えている新人なら、それだけでもかなり差がつく。
朝から見ていた上位陣も、だいたいそうだった。
だが、蒼太は一人だ。
Fランクダンジョンで、スライムを探して走り回っている。
『ソロだよな?』
『なんでEランク行かないんだ?』
『こいつのスキル何?』
『Fランクでなんでこんなレベル上がるんだよ』
昼になり、蒼太が一度足を止めて軽食を食べ始めた。海斗もその間に食事を済ませたが、蒼太が探索へ戻ると、そのまま配信を見続けた。
午後に入っても順位は上がり続けた。
最初は120位だったのが、いつの間にか百位を切り、さらに上へ進んでいる。海斗がランキングを開くたび、さっき見た位置から名前が消えていた。
「めっちゃ伸びてんじゃん……」
SNSにも同じ疑問を持った人間が増え始めた。
海斗が最初に投稿した時は数件しかなかった反応が、もう追いきれない。別の人間が蒼太の配信を貼り、順位の変化を投稿し、それを見た人間がまた配信へ流れてくる。
同時視聴者数が千人を越えた頃には、別の新人配信を見ていた人間まで来て、コメントも途切れなくなっていた。
『これが例の新人?』
『朝から見てるけどずっとこんな感じ』
『ランキングまた上がってる』
『まだコメント一回も拾ってないの?』
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