↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
4/30

第4話 見つかった新人

 4月1日。


 三浦海斗(みうらかいと)は朝から、新しく探索者になった連中の配信を眺めていた。


 毎年この日は、新人探索者の配信が一気に増える。探索中の映像記録と公開が義務になっている以上、配信に興味があるかどうかに関係なく、ダンジョンへ潜ればその様子は見られる。


 海斗はそれを毎年楽しみにしていた。


 今年も朝から、2026年度探索者レベルランキングの上位を順番に見ていく。


 探索者一家で育ち、最初から高価な装備を揃えている新人。すでに活躍している探索者に同行し、効率のいいダンジョンでレベルを上げている新人。探索者になる前から剣術を習い、初日とは思えない動きをしている新人。


「今年はこの辺か」


 上位にいる連中は、見ればだいたい理由が分かる。


 午前10時を少し回った頃には、気になっていた配信は一通り見終えていた。海斗はもう一度ランキングを開き、今度は上位からそのまま下へ流していく。


 百位を越えたあたりで、ふと指が止まった。


━━━━━━━━━━━━━━

【2026年度探索者レベルランキング】


120位 上山蒼太 Lv.6

配信タイトル:4月1日

同時視聴者数:2

━━━━━━━━━━━━━━


 名前に見覚えはない。


 それより気になったのは、日付だけの配信タイトルだった。


「初期設定のままじゃん」


 海斗はそのまま配信を開いた。


 映ったのは石造りの通路だった。その中央を、一人の男がかなりの速度で走っている。


「……速っ」


 少し先に半透明のスライムが見えた。


 男――上山蒼太はほとんど速度を落とさないまま近づき、剣を振る。銀色の刃がスライムの身体を一気に通り抜け、相手はそのまま淡い光へ変わった。


 落ちた魔石を拾うと、すぐにまた走り出す。


 しばらくして見つけた次のスライムも、一撃だった。


『速くね?』


 海斗もコメントを打つ。


『初見』

『ステータス見せて』


 だが、蒼太は反応しない。


 また一体見つけて斬り、魔石を拾って次へ向かう。コメント欄を確認している様子もなかった。


「見てないのか?」


 もう少し見ていても変わらない。視聴者へ話しかけることもなければ、コメントへ返事をすることもない。ただダンジョンを走り回り、スライムを見つけては倒していく。


「……ああ、配信やる気ないタイプか」


 探索中は配信が義務だ。必要だからつけているだけで、視聴者とやり取りする気のない探索者もいる。


 そう考えれば、日付だけのタイトルにも納得がいった。


 ただ、それにしても狩る速度がおかしい。


「これ、切り抜いたらバズるんじゃね?」


 海斗はスマホを開き、SNSへ短く投稿した。


━━━━━━━━━━━━━━

新人ランキング120位に、配信タイトルが「4月1日」のままのやついるんだけど。

Fランクでスライム狩ってる速度がおかしい。

━━━━━━━━━━━━━━


 数分もしないうちに返信がついた。


『どれ?』

『スライム狩ってるだけじゃん』

『いや速度異常だろ』


 海斗は配信を見ながら、もう一度ランキングを開いた。


「え?」


 さっきまで120位だった上山蒼太の名前が、もう少し上にある。


「早っ!」


 そこから、順位が変わるたびに気になった。


 配信を見て、しばらくしてランキングを開く。また上がっている。少し時間を置いて確認すると、今度はさらに上だった。


 視聴者も増え始める。


『SNSから』

『ずっと一撃じゃん』

『手際良すぎて草』

『さっきより速くなってない?』


 最初に見た時から、蒼太はスライムを見つければほとんど足を止めずに斬っている。それだけではなく、魔石を拾ってから次の相手を探し始めるまでの動きまで、いつの間にか滑らかになっていた。


「何でこんな伸びてんだ……?」


 上位の新人が早くレベルを上げる方法なら、海斗も知っている。


 すでに強い探索者に手伝ってもらい、自分一人では行けないような場所で効率よく経験を積む。装備や知識を揃えている新人なら、それだけでもかなり差がつく。


 朝から見ていた上位陣も、だいたいそうだった。


 だが、蒼太は一人だ。


 Fランクダンジョンで、スライムを探して走り回っている。


『ソロだよな?』

『なんでEランク行かないんだ?』

『こいつのスキル何?』

『Fランクでなんでこんなレベル上がるんだよ』


 昼になり、蒼太が一度足を止めて軽食を食べ始めた。海斗もその間に食事を済ませたが、蒼太が探索へ戻ると、そのまま配信を見続けた。


 午後に入っても順位は上がり続けた。


 最初は120位だったのが、いつの間にか百位を切り、さらに上へ進んでいる。海斗がランキングを開くたび、さっき見た位置から名前が消えていた。


「めっちゃ伸びてんじゃん……」


 SNSにも同じ疑問を持った人間が増え始めた。


 海斗が最初に投稿した時は数件しかなかった反応が、もう追いきれない。別の人間が蒼太の配信を貼り、順位の変化を投稿し、それを見た人間がまた配信へ流れてくる。


 同時視聴者数が千人を越えた頃には、別の新人配信を見ていた人間まで来て、コメントも途切れなくなっていた。


『これが例の新人?』

『朝から見てるけどずっとこんな感じ』

『ランキングまた上がってる』

『まだコメント一回も拾ってないの?』

最後まで読んでいただきありがとうございます!

面白かった、続きが気になると思っていただけましたら、ブックマークや☆評価、感想で応援していただけると励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。