第22話 フィールドボス戦2
フィールドボスが立ち上がる。
脇腹には剣でつけた傷が重なり、肩にも細い傷が残っている。それでも巨体は止まらなかった。低い唸り声を上げると、また蒼太へ向かって踏み込んでくる。
蒼太は左腕の盾を前へ出し、右手のメイスを構えた。
振り下ろされた拳を横へ外し、そのままメイスを返す。だが、フィールドボスも身体を捻り、今度は肩で受けた。鈍い音が響き、巨体がわずかに傾く。それでも倒れず、すぐに反対の腕が飛んでくる。
蒼太は盾を合わせようとしたが、その前に大きく後ろへ跳んだ。拳が空を切り、二人の間に数歩分の距離が開く。
「まだ来るか」
メイスの一撃が入っても、まだ止まらない。
蒼太はそのままメイスをアイテムバッグへ戻し、盾も左腕から外した。取り出した弓へ矢をつがえる。
フィールドボスが走り出した。
蒼太は弦を引き、狙う。以前なら動く相手へ合わせるだけでも迷ったが、今は腕だけで無理に向きを直さなくても、身体ごと狙った位置へ向く。足を止めずに放った。
矢が肩へ刺さった。
フィールドボスが腕を振る。蒼太は横へ動きながら二本目をつがえた。今度は胸ではなく、顔の横へ狙いをずらす。
放った矢が頬をかすめた。
巨体の顔がわずかに背けられる。その瞬間、蒼太は弓を下ろした。
距離はもう縮まり始めている。
弓を戻し、次に斧を握る。
フィールドボスが向き直った時には、蒼太の方から前へ出ていた。太い腕が上がる。蒼太は振り下ろされる前に内側へ入り、重い刃先を肩へ振り下ろす。
ドッ!
斧が深く食い込んだ。
「入った!」
フィールドボスの身体が大きく傾く。蒼太は無理に斧を途中で止めず、その重さごと振り抜いた。腰と足も自然についてきて、そのまま巨体の横へ抜ける。
斧を引き抜くと、フィールドボスが吠えながら腕を振り回した。
蒼太は一歩下がる。続けて飛んできた拳をかわし、もう一度斧を構えたが、今度は振らなかった。
『今の斧やばい』
『さっきまで弓だったよな?』
『前より明らかに効いてる』
『でもまだ倒れないのかよ』
フィールドボスが再び踏み込んだ。
右腕が大きく引かれる。
蒼太は肩と足を見る。拳が来るより先に一歩ずれ、斧を持ったまま身体を外へ逃がした。太い腕がすぐ横を通り過ぎる。
その直後、反対側の腕が追ってきた。
「っ!」
今度は間に合わない。
蒼太は斧をアイテムバッグへ戻しながら身体を捻った。拳が肩をかすめ、衝撃で身体が横へ流れる。踏ん張ってもすぐには止まれず、数歩離れたところでようやく足が揃った。
肩に鈍い痛みが残る。
フィールドボスもすぐには追ってこなかった。
荒く息を吐きながら一歩踏み出す。その足が一瞬だけ止まる。傷の増えた肩も、さっきまでのようには上がらない。
それでも、蒼太から目を離してはいなかった。
蒼太も正面から見返した。
次に取り出したのは剣だった。左腕へ盾を通す。
最初にこの相手と戦った時と同じ形になる。
あの時は、剣を何度当てても浅かった。火も風も倒し切れず、最後は盾ごと吹き飛ばされた。
今は違う。
フィールドボスの身体には、自分がつけた傷がいくつも残っている。
低い咆哮が通路へ響いた。巨体が前へ出る。速い。それでも、もう見えない速さではない。
右肩が上がる。足が石床を踏む。蒼太は拳が来る前に半歩だけ外へずれ、盾を傾けた。
ドンッ!!
重い衝撃が左腕へ突き抜けた。靴底が石床を擦る。それでも身体は浮かない。拳が盾の表面を滑り、外へ抜ける。
フィールドボスが無理やり腕を戻そうとする。
遅い。
蒼太はもう踏み込んでいた。剣を振る。刃が首へ入った。
硬い手応えが一瞬だけ腕へ返る。それでも剣は止まらない。腰を回し、身体ごと最後まで振り抜く。刃が太い首を斜めに抜けた。
少し遅れて、フィールドボスの頭が石床へ落ちる。巨体がその場で揺れ、ドンッ――と重い音を立てて身体も倒れた。
蒼太は剣を構えたまま動かなかった。数秒待っても、フィールドボスはもう起き上がらない。
「……倒した」
一気にコメントが流れ始めた。
『うおおおおお!』
『倒した!!』
『マジで勝った!』
『前逃げた相手だぞ!?』
『首落とした!!』
『強くなりすぎだろ!』
蒼太は倒れた巨体を見たまま、ゆっくり息を吐いた。
左腕にはまだ衝撃が残っている。肩も痛い。それでも、今度は自分の足でそこに立っていた。
しばらくして、蒼太はようやく剣を下ろした。
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