第14話 Dランクダンジョン
4月4日。
蒼太は立川Dランクオークダンジョンの管理施設に来ていた。背中には白峰からもらったアイテムバッグがあり、中には剣や盾、弓、斧、メイス、杖、それから探索用の物資まで入っている。
受付を済ませ、撮影用のドローンを起動する。新しくもらったドローンは、設定しておけば配信中のコメントも確認できる。今日はその表示もオンにしていた。
いつもなら、そのまま配信を始めてダンジョンへ入るところだったが、蒼太はスマホを見たまま少し止まった。
「タイトル……ちゃんとした方がいいよな」
昨日までの配信タイトルは、ほとんど日付だけだった。白峰とも契約したし、自分の配信を十万人以上が見ていたことも今は知っている。
少し考えてから文字を入力する。
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【Dランク初挑戦】立川オークダンジョンに行きます
白峰ホールディングスと契約しました
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「こんな感じか」
配信を開始すると、画面が切り替わった直後からコメント欄が一気に流れ始めた。
『きた!』
『待ってた』
『もうDランク行くの!?』
『白峰と契約したのマジか』
『タイトルちゃんとしてるw』
「うわ、速っ」
読もうとしている間にも、新しいコメントが上へ押し流していく。前まではそもそも見ていなかったが、いざ追おうとすると、どこへ目を向ければいいのか分からないくらい速い。
蒼太は何とか画面へ向かって話し始めた。
「えー……皆さん、こんにちは。今日は立川のDランクオークダンジョンに来ています。あと、タイトルにも書いたんですけど、白峰ホールディングスさんと契約しました。装備とかも、いろいろ支援してもらっています」
『急に配信者っぽい』
『どうしたw』
『めっちゃぎこちないぞ』
「いや、配信ってこういう感じかなと思って」
コメントを追っていると、このまま入口に立ち続けそうだった。蒼太はスマホをしまい、ダンジョンへ続く揺らぎへ向かう。
「じゃあ、行きます」
中へ入ると、足元へ硬い石床の感触が戻った。これまで入ったダンジョンと同じような石造りで、壁には淡い光が灯っている。ただ、通路は少し広く、天井にも余裕があった。
蒼太はアイテムバッグから剣を取り出す。昨日、トレーニングエリアで何度も振った自分の剣だ。
柄へ手をかけたまま奥へ進み、何度か曲がり角を抜けたところで、前方から重い足音が聞こえた。
少し先から、大きな影が現れる。
「でか……」
身長は二メートルを明らかに超えている。肩幅も広く、腕は蒼太の脚より太い。盛り上がった筋肉に覆われた身体が、足を進めるたびに大きく揺れた。
オークだった。
蒼太は剣を抜く。近くを飛んでいるドローンが目に入り、さっきまでの配信を思い出した。
「あ、えっと……皆さん、オークがいました」
言ったあとで、自分でも何を説明しているんだろうと思った。
オークが低い声を上げ、地面を強く蹴る。大きな身体のわりに速い。振り上げられた腕が蒼太の頭へ向かって落ちてきた。
蒼太は横へ踏み出す。
ブンッ、と空気を切る音がすぐ横を通った。そのまま懐へ入り、脇腹へ剣を振る。
ザシュッ!
銀色の刃が肉へ入り、オークの身体が大きく揺れた。それでも足を止めず、振り向きざまに太い腕を薙いでくる。
「マジか」
蒼太は一歩下がってかわし、すぐに踏み込み直した。今度は腕へ斬りつけ、そのまま横へ抜ける。
昨日、標的へ振った時と同じだった。剣先がぶれない。力を入れ直さなくても、狙ったところへ刃がついてくる。
「やっぱこれ、使いやすい!」
オークが怒鳴るような声を上げ、両腕を大きく広げて正面から突っ込んでくる。
蒼太はその横へ身体をずらし、すれ違う瞬間に胴へ一閃。オークがたたらを踏んだところへもう一度踏み込み、今度は上から肩口へ剣を振り下ろした。
ザンッ!
巨体が前へ崩れ、そのまま淡い光へ変わっていく。
「よし!」
床に残った魔石を拾う。ゴブリンのものより、さらに大きい。蒼太はそれをアイテムバッグへ入れてから、ドローンの方を見た。
「えー……今のがオークですね。結構大きくて、攻撃も強そうでした。でも、ちゃんと避ければ……」
途中で言葉が止まった。
何をどこまで説明すればいいのか分からない。
ドローンに表示されているコメントへ目を向ける。
『説明がぎこちなさすぎるw』
『見れば分かるから大丈夫だぞ』
『いつも通りでいい』
『無理に実況しなくていいから探索してくれ』
「そうなんですか?」
『それでいい』
『今までの感じで頼む』
『そっちの方が面白い』
蒼太は流れていくコメントを少し見てから、剣を握り直した。
「じゃあ、普通にやりますね」
目の前には、まだ奥へ続く道がある。
蒼太はそのまま次のオークを探して歩き出した。
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