ホルスの翼が堕ちる時
「ホルスの翼へ、これより作戦を開始する、神々の加護があらんことを。」
通信が入ったホルス隊は陣形をスピアヘッドフォーメーションとし、クリスタルの左側よりの侵入を試みる。
「第一段階としては目標に射撃体勢を取らせること、もしくは目標の防御層をすべて破壊すること。ふ、簡単な話ではあるな。三連装荷電粒子砲発射用意!」
「三連装荷電粒子砲エネルギー充填、10、20、30…」
「ホルス隊との連絡を密に、間違っても彼らを巻き込んではならん。」
「三連装荷電粒子砲、エネルギー充填100%。荷電粒子収束率並びに収束磁場の値は正常、目標へ照準合わせ。調整左へ1.34°。照準固定。発射準備よし。」
「発射!」
ホルスより三連装荷電粒子砲の収束された太い光の奔流が走り、クリスタルへ向かう。
凄まじい閃光とクリスタルが砕け散る粉塵、発生したプラズマによって引き起こされる青い稲妻が走りクリスタルが視認できなくなる。
「手を緩めるな、粒子加速砲斉射、撃て!」
ホルス基地の粒子加速砲が白銀の閃光を放ち粉塵の雲へ吸い込まれていく。
「我らの砲は人類の平和と安寧のために!Ouvrez le feu !(射撃開始!)」
旗艦リシュリューの41センチ四連装粒子加速砲2基8門の斉射を皮切りに第9航宙艦隊も猛攻をしかける。数えきれないほどの光の筋が粉塵雲の中に吸い込まれる。
「目標に対してあらゆる猶予を与えるな、奴が悲鳴を上げるまで撃ち込みつづけるのだ。」
「ホルス隊、まもなく作戦開始宙域に突入します!」
ホルス隊の作戦開始に合わせて誤射を防ぐため、基地と艦隊は砲撃をやめる。
基地司令の言葉とともにホルス基地は防御壁を展開する、まるで翼で自らを包むように。
「全軍撃ち方やめ、敵からの反撃に備えよ。繰り返す、敵からの反撃に備えよ。」
一方艦隊司令も全艦へ指示を飛ばし、艦隊を次の攻撃に備えて再配備する。
「第9航宙艦隊全艦へ、所定の回避行動を取れ。これより、作戦第2段階へ突入する!」
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クリスタルより300キロ
「始めるぞ野郎ども!背部推進ユニット最大出力!奴の弱いところを念入りに責めてやれ!」
ホルスの翼中隊は一挙に加速しクリスタルへ接近する、粉塵が消えるとそこにはあらゆる部位のクリスタルが欠損し、内部の筋肉のような特殊な結晶繊維構造が露わとなっていた。
その一部にコアを示す赤黒い輝きとは異なる眩い紫の光を放つ部位があった
「目標の中心結晶体を確認!これより全機突入、目標を破壊する!」
ホルス隊は機体を捻り、一気に目標へ突入する。全機で隊列を組み130ミリ電磁加速砲を構える。
「まだだ!もっと近づけ!確実に一撃で仕留めるぞ!」
中隊はクリスタルの欠片が散乱する空間を突き進み、目標の攻撃の要となる中心結晶体を狙うのに絶好の位置に出る
「斉射用意!狙って!、撃て!」
10機から放たれた130ミリ徹甲弾は中心結晶体をいとも容易く貫徹、破壊した。
「ホルスの翼よりHQへ、目標粒子加速砲の中心構造体の破壊に成功した。あとは思う存分やってくれ。」
ホルス隊隊長からの連絡を受けた基地司令と第9航宙艦隊司令官は総攻撃を決断する。
「全兵装使用自由、目標に対し最大火力を持って攻撃せよ。」
「我が艦隊の火力を見せてやれ!」
艦隊と基地はそれぞれ全力攻撃を開始する、無数の粒子砲がクリスタルに着弾する。
「これだけの攻撃を受け続ければ、まもなくコアも…」
そう呟いた副司令に基地司令は何かを察したように語る
「副司令、ホルスの翼達に戦線を離脱するように命じたまえ、それと第9航宙艦隊にただちに回避行動を取るように」
「は…?おっしゃる意味が小官には把握しかねますが…」
副司令は戸惑う、明らかに戦局はこちらが優勢、勝利も目前であるというのに。
「誰でもいい、オペレーター。目標の体積の減少率を計算してくれ。」
オペレーターが観測された目標のレーダー反応や光学情報から計算を行う
「現在の目標の体表損耗率5%、ほとんどの攻撃がシャットアウトされています!」
副司令は驚きを隠せない
「な、なに!?これだけの攻撃を受けてもか?戦艦も重巡洋艦も本基地の武装もその全てが集中しているんだぞ!?」
「あの結晶繊維構造だ、人の筋肉のような見た目をしているが、あれがおそらく我々の攻撃を防いでいる。」
司令は相手の映像を見つめながらオペレーターへ命じる
「ホルス隊に連絡を、目標の偵察を頼みたい、主にこちらから隠れている後方を念入りに。と」
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3分後、ホルスの翼中隊
「全機エレメントを組め、これより目標表層の偵察を行う、生きて帰ってこいよ!」
それぞれ2機1組でクリスタルの後方へと突入する
見えるのは青白く輝くクリスタルの表皮のみ、敵の懐に飛び込んでいる以上、いつどこから攻撃が来てもおかしくない。
シュナイダーは画面を睨みながら脂汗を流していた、クリスタルにこれほど接近したことは未だかつて経験がなかったからだ。
「シュナイダー!遅れているぞ!俺の尻に従ってついてこい!」
隊長の声が通信機越しに響いてくる、流石の隊長もその声からは少しの動揺と恐れを感じているように思えた
その時である、センサーが一部分だけ色が異なる部分を見つけた、まさかとは思った。"ソレ"がここにあるはずはないのだから。
(あれは…クリスタルのコア?)
隊長に確認しようとしたところ、機体をビームが掠めた
「全機散開!各個に離脱!小型の粒子加速砲の一種だ、撃ってくるぞ!」
クリスタルの表面が蠢いている、それはやがてコブのようになり、粒子加速砲の光線を放ってくる。
「シュナイダー!何してる!早く離脱しろ!」
隊長の呼びかけに応じたくとも弾幕の密度が増していき機体を離脱させられない。シュナイダーはコアらしきものの近くまで弾幕を躱しながら機体を連れていく。
(あれだ!)
コアらしきものを撮影したシュナイダーは驚く
(コアだ!間違いなくコアだ!)
そのときシュナイダーを狙っていた粒子加速砲をホルス中隊は黙らせていく。
「退けシュナイダー!」
「隊長!コアです!クリスタルのコアが表面に!」
シュナイダーは全員に情報を共有しながら一気に離脱した
合流したシュナイダーを含むホルス隊は艦隊と基地にその情報を共有し、指示を仰いだ
「基地司令、我々に攻撃命令を。基地から遠いところで始末するに越したことはありません。」
ホルス隊隊長の提言に対して基地司令は首を縦には振らなかった。
「ホルスの翼を我々は信用しているし信頼している、だが、いや、だからこそ、君達に今すぐの攻撃は認められない。君達は我々の切り札であると同時に戦力的柱でもある、疑う訳ではないがコアに対して君達が攻撃を仕掛けた場合、君達はまともに生きては帰れないだろう。」
隊長は唇を噛んだ、基地司令の言う通りいくらホルスの翼とてあの弾幕の中に飛び込めばただでは済まない。
「第9艦隊が君達と協力する、その時に合わせて攻撃せよ、これは命令だ。ただし、不測の事態の際には君の権限において独自の行動を認める。ただし、部隊の損耗は極力避けること、いいな?」
「承知いたしました、第9航宙艦隊との共同戦闘を行います。」
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「第1、第2駆逐艦隊前進!ホルスの翼と共同で敵コアを破壊する!諸君らの奮戦に栄光あれ!」
駆逐艦10隻が加速してクリスタルの後方へ回り込む、それに合わせてホルス隊も移動を開始しコアを狙える位置についた。
「撃ち方始め!」
駆逐艦隊の指揮官が砲撃を命じると共に駆逐艦10隻が一斉に127ミリ連装粒子加速砲4基8門を放つ、加えて誘導弾などの実体弾も撃ち込む、合わせてホルス隊は130ミリ電磁加速砲を撃ち込んだ。
それらが着弾し、クリスタルの粉塵から着弾箇所が見えるようになるとそこには露出したコアがあった。
再度の攻撃をしようとした時駆逐艦が1隻、轟沈した。
「駆逐艦ラファイエット轟沈!!」
シュナイダーは駆逐艦隊を見た、駆逐艦隊に向けてビームが放たれている、見ると表層には粒子加速砲が作られておりビームを放っていた。
「ファルバン!被弾、戦列を離れる!」
「アキテーヌ!通信途絶!」
「プロヴァンス!中央戦闘区画へ直撃!戦闘・航行能力喪失!!」
通信機からは悲鳴とも叫びともつかない報告が上がってくる、駆逐艦が次々と被弾しては爆散するか大半を削ぎ落とされて沈んでいく。
「ホルス隊全機、ストレートフォーメーション、目標の兵装を撃滅する!突入!ついてこい!」
隊長は中隊を率いて駆逐艦隊の援護に向かう
「止まるな!止まったら死ぬぞ!飛べ!そして撃て!撃って撃って撃ちまくれ!」
ホルス隊は高速移動しながらも130ミリ砲でクリスタルの粒子加速砲となっているコブを一つずつ正確に、手早く仕留めていく。
その時である、ホルス基地並びに第9艦隊主力は敵の異変に気づいた。
「目標正面に動きあり!開口部を視認…粒子加速砲です!」
クリスタルは中央結晶体の修復を終えて再度粒子加速砲の発射態勢に入ったのである。
「敵の粒子加速砲の中央結晶体がこれほど早く修復されるとはな…」
ホルス基地の司令もこの事態にはそう呟くしかなかった
「第9艦隊全艦回避行動!散開!散開せよ!1隻でも多く生き延びるのだ!」
第9艦隊司令の命令を受けて各艦隊はその推定射線から離脱を試みる。
しかし艦艇ほど大きく移動することが叶わないホルス基地は防御装備に頼る
「シールド展開、前方A及びBブロックの隊員は直ちに中央区画まで退避、退避確認次第隔壁閉鎖、急げ!」
ホルスの防御シールドが展開されさらに翼で覆い隠すように物理シールドもホルス基地を覆う。
クリスタルの砲口が眩い光を放ち、砲口の形状が変わり始める
「目標に高密度の粒子反応!攻撃、来ます!」
その直後、紫の光が世界を包んだ。
激しい衝撃がホルス基地を襲う、明かりが消え、スクリーンはノイズまみれになる。通信も繋がらない。
「状況報告!」
副司令が事態の把握のために真っ先に動き出す。
「シールドが一撃で破られました!物理シールドも損傷率65%!次の一撃は耐えられません、前方モジュールの7割を喪失。また第9艦隊はこの一撃で戦力の5割を喪失しました。」
事実上、今の一撃にて敵を撃破する手段をホルス基地と第9艦隊は失ったのである。
「オペレーター、三連装荷電粒子砲は撃てるか?」
「1回だけなら発射は可能です、再攻撃用に充填したエネルギーはまだ生きています、しかし発射の反動に基地が耐えられるかどうか…」
「構わん、撃て。我々が少しでも奴に打撃を与えることで何か道が開けるやもしれん、敵の再攻撃の前にやるんだ。」
司令の命令に基地は再攻撃の準備を始める
「第9艦隊司令に連絡を繋げ」
第9艦隊と通信が繋がった際、艦隊司令は即座に提案してきた。
「基地司令、我々はこれより目標粒子加速砲中心結晶体へ向け残存艦艇で突撃を敢行します、その間に基地の要員は撤退を!」
「なりません、貴艦隊では目標の前で無駄死にする可能性の方が高い、我が基地が荷電粒子砲を放ちます、貴艦隊は我が基地の退避要員の回収を。」
「しかしそれでは…発射要員の退避は間に合わないですぞ、それも覚悟の上でその提案を?」
「無論です。せめて外惑星防衛軍と内惑星防衛軍が防衛ラインを完成させるまでの時間稼ぎはしなくてはなりません、敵との距離は150万キロを既に切った、今しかありません。」
「承知した、退避要員をシャトルに。戦艦ダンケルクに収容する。我が艦隊は戦線を離脱、味方艦隊と合流を目指しましょう。貴殿の奮戦に栄光と祝福あれ。」
「感謝します。それともう一つ、クリスタルの裏で戦闘を行っているホルスの翼達を収容して欲しい、我が基地が無くなれば彼らは帰るべき家を失う、彼らをこの寒い宇宙に捨て置くことはできない。」
「基地司令の要請は全て受諾しましょう、彼らは我々が引き受けます。」
「ありがとうございます、それでは早速行動を開始しましょう。」
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その頃クリスタルの裏側では
「このままではジリ貧だ!先程から基地と連絡がつかない、駆逐艦隊も消え去った、我々で何とかしなくてはならないぞ、全機突入用意!狙いはコアのみだ!いくぞ!」
ホルスの翼10機は突入を開始した、放たれる大量のビームを躱しながらコアを狙う。
「弾幕が厚すぎr…」
遂に1機がコックピットに被弾し、機体が爆散する。
「レイチェル中尉が!」
「構うな!奴の死を無駄にするな!撃て!」
コアを再捕捉した各機は攻撃を始める。コアが限りなく表面に近いところにある以上、表層の結晶構造を破砕させられればヴァルキリーの130ミリ砲でも大型クリスタルのコアを破壊できるはずである。
「全機離脱!再突入!」
1回目の突入攻撃を終えて部隊は反転する、再突入の軌道に乗った時目の前を紫の壁が覆ったような幻覚に襲われるほどの大量のビームが飛んできた
「躱しきれない!!うぁぁ!……」
「バカな!こんなところd…!!」
「くそ!死ぬ気はないんだ!……」
シュナイダーは機体を木の葉が落ちるようにひらりひらりと動かして弾幕の隙間を縫っていく、レーダーからは数少ない味方機がどんどん消えていく。
弾幕が密度を増し、数秒後に訪れる死をシュナイダーが覚悟した時、弾幕がピタリと止まった
(な、なんだ?何があった?攻撃が止んだのか?味方は、隊長は!?)
レーダーを見ると1機だけ自分以外で生き残っている味方がいた。
「生き抜いたみたいだなシュナイダー、若造のくせによくやる、エバンズ大尉とやり合えるかもな?」
「隊長!みんなが…他のみんながもう…」
「シュナイダー、お前はこの場から撤退しろ、お前の機体はダメージが無さそうだ、上手く推進ユニットを使えば味方がいる宙域まで退避できるはずだ。何故だか分からんが撃たれない今がチャンスだ、行け!」
「しかし隊長は!?」
「俺は右脚部と推進ユニットに喰らった、もう自由には動けん、差し違えてでもコアを破壊してやる。お前は腕もセンスもある、それにまだまだガキじゃないか、死ぬべきじゃない。行くんだ。」
「しかし!」
「シュナイダー、俺らは何者だ?」
「我々は…ホルスの翼です。太陽系の外で、青い星に、赤い星に、白い星に住まう人々を守護する盾であり、危険を排する矛です。」
「我々の翼はもがれない、ホルスの翼が堕ちるとき、その時は我々が戦うことを諦めた時だ、しかしまだ私は諦めてないぞ。お前はどうなんだ、シュナイダー。」
「私も…戦うことを諦めていません!」
「なら良い、だがお前が戦う戦場はここじゃない、だから退くんだ。そしてお前が我々の意志をこの世に繋ぎ止めるんだ。」
「…承知しました、しかし隊長の攻撃支援だけはやらせてください!隊長をせめてコアまでは辿り着かせます。」
「分かった、援護射撃を頼んだぞ!」
隊長機はフラつく機体をスラスターで制御しながらコアへ向けて飛ぶ。その時、クリスタルが激しく振動して前方で粉塵が舞っている。その時察した、ホルス基地が攻撃を仕掛けたのだと。
シュナイダーはコアに向けて何度も何度も撃ち込む、同じ場所に何発も、やがて結晶構造が破砕され赤黒いコアが露出する。
「よくやったぞシュナイダー!ホルスの翼は簡単には堕ちないって事を、最後に若造のお前に教えてやる!」
クリスタルに接地した隊長機は至近距離で130ミリを速射する、砲身が加熱され赤くなるが構わず撃ち続けた、コアにヒビが入り、やがて欠け始める。
その時宇宙が紫色に一瞬染まった、しかし隊長は気にせず攻撃を続ける
「あと、1発!」
隊長機が弾丸を撃ち込んだ瞬間、表面のコブから放たれたビームが機体を消し飛ばした。それと同時に済んでのところで放たれた弾丸によりコアが崩壊し、クリスタルから光が失われた。
「終わった…、隊長、みんな…皆さんが奴を撃破しましたよ…。」
レーダーにこちらに接近する10隻の大型艦が映った
「ホルスの翼へ、こちら第9艦隊旗艦リシュリュー、貴部隊を我が艦隊に収容する。全機集結せよ。」
「こちら、ホルスの翼中隊所属シュナイダー少尉。ホルスの翼中隊は私を除き全滅しました。」
「ホルスの翼が全滅だと?そうか…そういうことか…」
通信員が交代する
「私は第9艦隊司令官シャルル・ド・ルーネ少将だ。貴君らの奮戦により大型クリスタルの撃破に成功した、ホルス基地による最後の攻撃も何かしらで君達の攻撃に繋がったと信じたい。この宇宙に散った全ての将兵に最大限の敬意と哀悼の意を表明する。」
()
数分前ホルス基地
基地司令は副司令であるアブデルラフマン大佐にとある命令を下した。
「アブデルラフマン大佐、現時刻をもって貴官の基地副司令の任を解く、別命。アブデルラフマン大佐はホルス基地退避部隊の指揮官として退避予定者全名を生き残らせること。そして、死んでいった者達を語り継ぐことだ」
「……、承知しました。アブデルラフマン大佐、現時刻をもって退避部隊指揮官へ着任、退避の指揮を執ります。」
アブデルラフマン大佐は背筋を伸ばして敬礼した
「頼んだ、大佐。重く、辛い任務だ、だが貴官ならその任務を果たせると信じている。時間がない、行きたまえ。」
アブデルラフマン大佐はもう一度敬礼をして司令室を去った
基地内では荷電粒子砲の発射準備を終えた隊員や非戦闘隊員などが発着ポートへ走っていた。
全オペレーターを退避させたのち司令官は司令官席の武器制御システムを起動させる。
「基地内の各隊員の離脱を確認した、大佐、我々の家を守りきれず申し訳ないな。」
そう1人で呟き席に座る、軽く息を吐き起動された発射システムを覗く。
「基地司令、最終便の発進完了しました。これより離脱します。ご武運を。」
「ありがとう大佐、君に重荷を背負わせてしまって申し訳ないな、遠い遠い青い星のために、どうか任を果たしてくれ。今までありがとう。」
「我々一同、司令のことを父親のように思っておりました、父の有終の美を見届けるのも我らの責務であり望みであります、貴方の行動に我々は伝えられる最大の尊敬を。」
「そうか…、皆んなに慕われるような司令官でいられたか、さらばだ子供達よ、明日を繋いでいきたまえ。」
通信を切ったのち、スクリーンに照準が示される、基地のスラスターはその6割が機能停止しているため照準の調整を容易にするために基地の大半の部分をパージする。
「三連装荷電粒子砲、エネルギー充填100%。荷電粒子収束率並びに収束磁場の値は正常…」
「目標へ照準、修正、右へ2.32°。射線確保。」
クリスタルがこちらに粒子加速砲を放とうとしているのが見えた。しかし、こちらはもう撃つ用意ができている。
三連装荷電粒子砲の砲口内に荷電粒子の塊たる球体が生成される。その光が増していきその発射のタイミングが来る。
「発射。」
3本の太い光の粒子が合わさり1本の光へと収束した後、クリスタルへ向かう。凄まじい光と共に巨大な粉塵の雲が生み出される。
「エネルギー残量なし、再攻撃並びに防御手段喪失。やはりまだ倒せないか…あとを頼んだぞ、ホルスの翼達よ…」
粉塵雲の中から紫色に輝く光が見えた、その光は徐々に強くなっていく
(避けられない死を前にすると嫌なほど落ち着くものなのだな、どうせ翼達は果敢に攻撃を仕掛けているのだろう、せめて私の攻撃で彼らにメリットが、少なくともデメリットがなければいいのだが…)
そして、その時がきた。粒子加速砲が放たれ、眩い光が基地を包み込んだ。
()
戦艦リシュリュー、航海艦橋
「ホルス基地所属、第999独立ヴァルキリー中隊。レオンハルト・シュナイダー少尉、参りました。」
ルーネ少将は立ち上がり、シュナイダー少尉の方に体を向けて敬礼した。
「よくぞ生き残った、君がホルスの翼の意志を生き方を紡いでいってくれたまえ。責務を負った君へ、最大の敬意を。」
「なすべきことをなしていく所存です。」
ルーネ少将はシュナイダー少尉の肩に手を乗せて強く頷いた。
「左舷にホルス基地の残骸が見えます、調査隊を派遣しますか?」
航海士がルーネ少将に聞いた
「残念だが、今見える残骸はいずれも基地の後方部分、司令室を含む中央区画は跡形もなく消え去っている。この宙域の生存者の捜索ももう終えている、針路そのまま。」
「了解、針路そのまま、ヨーソロー!」
「すまないなシュナイダー少尉、分かってくれ。」
「小官は司令の判断を支持いたします。」
艦隊は一路地球を目指して航海を始めた、他の艦隊には大型クリスタルの撃破報告を上げた、戦いは終わったのだ。
「む?これは…。!?司令!超高速で接近する物体確認!」
「なに!?」
艦隊の横を凄まじい速さの物体が通過していった
「速すぎます!光速の10%の速さです!」
「軌道を計算するんだ、どこから来てどこへ向かうのかを」
オペレーターや航海士、技術者が計算を始める
「予測なので着弾点の誤差が広いですが発射元は出ました。発射元は…大型クリスタルです!」
「な…、死んだはずではなかったのか!?」
「ダンケルクが光学的に観測できていました、スクリーンに出します。」
そこには光を失った死んだクリスタルから殻を突き破って飛び出す青白い光を放つもう一つのクリスタルが映っていた。
「だからか…だからコアがあんなに表面に、中に敵を格納していたからか、だからコアが押し出されて表面に…」
シュナイダーはその時ようやく理解した、何故コアが表面にあったのかを。
「それで、着弾予想はどこなんだ?」
ルーネ少将はそう問いただす
「予想では15%で火星、28%で月、そして40%以上が地球です…」
「なん…だと…。今すぐ地球に高速空間通信を!防衛ラインの艦隊に任せるしかあるまい。着弾時の予想被害は?」
「推定質量と速度を考えると地球への直撃と共に、地球は甚大なダメージを被り、最悪の場合崩壊します。今の予想ですと少なくとも地上の人口の6割が亡くなられる可能性があります。」
ルーネ少将は息を吐いて話した
「我々にできることはもはやない、あとは信じよう、この先にいるであろう新たな英雄達を。」
お久しぶりです、中の人が最近忙しくて手が回らないので遅くなっております、話を短くして小分けに出そうかなと考えているのでどうなるかはまだ確定していません。それでは次のお話で。




