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翼の折れたエンジェル ~祈りが届かなかった者たちの反撃~  作者: レモンティー


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第四話:最終戦争

強大な勢力となった魔界は、天界への復讐を忘れてはいなかった。

そして――数年後。

ついに、その時が来る。

天界と魔界は、相対した。

空を埋め尽くす光。

地を覆い尽くす闇。

光の軍勢(天界)。

絶望の軍団(魔界)。

その衝突は――もはや“戦争”という言葉では足りなかった。

「進め!!秩序を守れ!!」

天界の号令とともに、無数の光が降り注ぐ。

それは刃となり、矢となり、裁きそのものとして降下する。

だが――

「止まるな」

低く響く声。

サタン。

その一言で、魔界の軍勢は崩れない。

黒い波が、光に向かって押し返す。

絶望が形を持つ。

嘆きが武器となる。

怒りが、現実を侵食する。


激突。

空が裂ける。

光と闇がぶつかり合い、存在そのものが軋む。

その最前線に――

一つの炎が立つ。

「……遅いな、天の裁きは」

イブリース。

その周囲だけ、光が燃え尽きる。

天使が突撃する。

「堕ちた者め!!」

次の瞬間――

炎が走る。

触れた光が、跡形もなく消える。

悲鳴すら、燃え尽きる。

別の空域。

突如として、嵐が発生する。

風ではない。

疫と腐敗の流れ。

――パズス。

「……弱い」

羽ばたくたびに、天使の軍勢が崩れていく。

形が保てない。

秩序が維持できない。

そのまま、空中で崩壊する。

中央戦線。

巨大な影が進む。

――バエル。

王の気配。

その一歩ごとに、空間が従う。

天使たちは構える。

だが、

「跪け」

その一言で、

数十の天使が、強制的に膝をつく。

抵抗は意味を持たない。

次の瞬間、まとめて叩き潰される。

戦場の別角。

甘い香りのような気配。

――アスモダイ。

「抗う理由、ある?」

囁き。

それだけで、

天使の動きが止まる。

迷いが生まれる。

次の瞬間、内部から崩れる。

戦う意思そのものが砕かれる。

影の中。

静かに、しかし確実に存在が消えていく。

――ベリアル。

気づいた時には遅い。

「……なぜだ」

答えはない。

ただ、存在が削られる。

抵抗の意味が消える。

地表近く。

赤黒い気配が広がる。

――モロク。

「価値のない命は、燃料だ」

その言葉とともに、

天使が圧縮される。

力として吸収される。

戦場そのものが、彼の糧になる。

高空。

冷たい視線が戦場を見下ろす。

――アスタロート。

「構造が甘い」

次の瞬間、

天界の陣形そのものが崩れる。

戦術が無効化される。

秩序が解析され、破壊される。

そして――

羽音。

無数。

――ベルゼブブ。

「増えろ」

その一言で、

戦場が埋まる。

天使一体に対し、数百の影。

押し潰される。

飲み込まれる。

もはや、戦いではない。

蹂躙だった。


それでも一体の天使が、魔界の兵を斬り裂く。

「穢れた存在め、消えろ!」

その刃は確かに敵を消し去る。

だが――

次の瞬間、足元から無数の手が伸びる。

「……なっ」

それは一人ではない。

数百、数千の“届かなかった手”。

祈り続けて届かなかった者たちの残滓。

それらが、天使を掴む。

「離せ……!離せ!!」

引きずり込まれる。

光が削れていく。

叫びは長く続かない。

ただ、存在が少しずつ“薄れていく”。

――自分たちがやってきたように。


別の戦線。

防壁を張る天使たち。

「秩序を維持しろ!再構築すれば――」

その陣形に、一人の魔が歩み寄る。

何も武器を持たない。

ただ、問いかける。

「俺の祈りは、どこへ行った?」

沈黙。

「答えろ」

防壁が揺らぐ。

「……基準に満たなかった」

その一言。

次の瞬間、防壁が内側から崩壊する。

魔は静かに言う。

「それだけか」

その声に、怒りはない。

だからこそ、重い。

光は、断ち切られる。

戦場は変質していた。

それはもはや戦いではない。

“対話なき結果”の押し付けだった。

天使たちは、初めて体験する。

理由も説明もなく、消される側に回ることを。

「待て……話せば――」

「聞かなかったのは、お前たちだ」

即座に返る。

逃げ場はない。

赦しもない。

絶望の軍団は、止まらない。

一体の天使が、膝をつく。

「……我々は、間違っていたのか……」

その問いに、誰も答えない。

ただ――

背後から影が重なる。

「遅い」

それだけだった。

光は、静かに消える。

戦場の中心。

サタンが現れる。

その存在だけで、空間が沈む。

「……反逆者」

「堕ちた監査官……!」

大天使が前に出る。

「サタン」

かつてルシファーを裁いた存在。

「ここで終わらせる」

「秩序を乱す者よ」

サタンは静かに答える。

「お前たちは、救いを独占した」

その言葉に、光が震える。

「それは救いではない」

「ただの管理だ」

大天使は即座に返す。

「すべてを救えば、世界は壊れる」

沈黙。

サタンは笑った。

「ならば」

その声は低く、確定していた。

「一度壊れればいい」

その瞬間。

黒い光が解放される。

それは攻撃ではない。

“否定”だった。

触れた秩序が、意味を失う。

天界の柱が軋む。

「止めろ!!」

光の嵐が降り注ぐ。

だが、届かない。

サタンの周囲で、すべてが歪む。

「遅い」

一歩。

それだけで、距離が消える。

拳が触れる。

天界の核に。

――崩壊。

音はない。

ただ、世界が壊れる感覚。

秩序が崩れる。

選別が消える。

救いの仕組みが、完全に無効化される。

天使たちは理解する。

自分たちの“絶対”が、ただの構造だったことを。

「……そんな……」

サタンは見下ろす。

かつて自分を裁いた世界を。

「終わりだ」

その言葉は、宣告。


魔人たちが最後の一撃を加える。

イブリースの炎が焼き尽くし、

パズスの嵐が削り、

バエルの圧が押し潰し、

アスモダイが意志を砕き、

ベリアルが存在を削り、

モロクが力へと変え、

アスタロートが構造を壊し、

ベルゼブブがすべてを覆う。

光は崩れ落ちる。

秩序は消える。

そして――

逃げ場を失った天界に、

絶望が、最後まで押し寄せた。

それは止められない。

誰にも。

かつて止めなかったのと、同じように。

天界は――

完全に、徹底的に破壊された。


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