3
聖女候補の侍女は聖騎士様との出会いの機会もあり、人気がある職なのだが、それとは別に今回は学院の2学年に王太子殿下がいらっしゃる。殿下には既に婚約者の令嬢もいらっしゃるのだが、聖女になれば一発逆転もあるのでは?と、今回は聖女候補の倍率も跳ね上がったのだとか。
聖女は任期中には結婚できない。現在16歳の王太子殿下を10年以上も待たせるのは常識的に無理なんじゃないかとマリベルは思うのだが。ということは王太子殿下の弟王子狙いか?と思ったが、間に王女殿下を挟んで王子殿下はまだ10歳だ。聖女候補は聖女になれなくても候補に選ばれただけで結婚は引く手数多だ。それに聖女にならなかったら2年でお役御免なので、結婚にはメリットも多い。殿下云々ではなく、そっちを狙っているのでは?とも思えるが、まあマリベルにはあまり関係ない。
聖女になると聖女様はその仕事に専念するので、侍女1人体制から侍女が増える。候補の侍女だった者が、そのまま聖女様の侍女になる事が多いので、マリベルもできればそのまま聖女様の侍女として神殿に残りたい。
聖女様の退任後は王族に嫁がなくても王族待遇となる。その聖女の侍女も王族の侍女と同じステイタスなのだ。ただ王族の侍女と違うのは聖女の侍女も聖女が任期を迎えるまで結婚はできないということだ。
聖女の任期は候補期間も含めて10年なので、華の乙女時代と適齢期を逃すリスクを負う。その華の乙女時代に聖騎士様と出会うだろうと、世間一般では羨ましがられている訳だが。
結婚に制約がある状態で聖騎士様との恋愛ってあり得るのか?と思った言葉が、ついポロッと口から出てしまう。
「結婚前提の恋愛しか念頭にないなんて、やっぱりマリベルはウブね〜」と2人の女性陣に笑われたが、マリベルはまだ14歳だ。
一体この年齢に何を求めているのか。しかも貧乏だったとしても貴族令嬢だ。むしろ14歳なら結婚なぞ考えずに恋愛を楽しめということなのだろうか?いくら憧れの聖騎士様がいる職場に就職すると言っても、マリベルに期待されても困るというもんだ。
まあ、実を言うとマリベルだって子爵家の使用人含め総勢10人くらいの女性達の間で、恋愛小説を擦り切れるほど回し読みしてきた。今も侯爵家で伯母とお姉様と田舎で読めなかった最新刊を回し読んでいる。はっきり言って好物だが、とりあえず神殿では聖女候補が第一の主人なのだ。
頭を切り替えろ!想定外の恋愛と聖騎士情報が入ってきて、少しキャパオーバーを起こしそうだ。
マリベルはお茶の後は小侯爵様(お兄様と呼んで欲しいと言われている)とご長男様5歳の午後の鍛錬に加えて頂くことにした。
女神様あなたの敬虔な信徒は邪念を払ってみせますと誓って。




