第10話:とある貴婦人の話(三人称視点)
「いいお土産が買えて良かったわねぇ」
「うんっ! すっごい大事にする! 買ってくれてありがとう、お母さん!」
婦人は嬉しそうにはしゃぐ我が子を連れて、大層喜びながらコモン商店を後にした。
そのまま、店のすぐ脇に止めていた豪華絢爛な馬車に乗り込む。
帝都から用事で来た街ではあるけれど、結果として大変に素晴らしいお店と出会えた。
御者に指示を出し、帝都への帰路に着く。
座席は足を伸ばせるほどに広く、小さな机まであった。
非常に珍しい動く人形を眺めている我が子を撫でる。
「自分で動くお人形なんて見たことないわ。こんなの帝都にもないね」
「お友達に自慢しちゃおう。みんな羨ましがるだろうなぁ」
婦人は王宮に務めている大臣の妻だった。
夫は大臣の中でもかなりの要職であり、一家は指折りの裕福な家だ。
彼女らの身なりが豪華だったのもうなずけた。
「それにしてもよくできているわねぇ」
「触り心地もすんごく柔らかいよ」
タオル生地の優しい手触りの人形。
帝都で流行っている物と同じ、ふんわりしたドレスを着ている。
しかし、そのデザインは帝都の物より数段洗練されていた。
ほんのちょっと魔力を込めるだけで長時間動くようだ。
魔法に詳しくない婦人に原理はわからなかったが、大変に高度な技術が使われていることは容易にわかった。
こう言っては失礼だけど、あんなに貧相なお店にこのような素敵な商品があるとは思わなかったのだ。
きっと、あの店主と娘は凄腕の職人親子かもしれない。
特に、幼女の貫禄には目を見張るものがあった。
(家に帰ったら夫にも話してあげよう……)
その晩、帝都の自宅に帰った婦人は、仕事帰りの夫に魔動人形を見せながら、昼間の出来事を詳細に話した。
「ねえ、あなた。今日トレイドタウンに行ってきたんですけどね、珍しい品を見つけたの。ほら、動く人形なのよ」
「ほぅ……こいつはすごいじゃないか。どんな魔法で造られているんだろう。しかも、ドレスが光るんだな」
「そしてね、お店には女の子もいたんだけど、この子が……」
お店は貧相なのに、世にも珍しい動く人形という高度な商品を売っていたこと。
やたらと貫禄のある不思議な幼女がいたこと。
それを興味深々に聞く大臣。
大臣はお喋りな性格も相まって、宮殿の面々にコモン商店やルーの話をする。
やがて、ウワサは広い王宮を巡りに巡って、皇子たちの耳にも届くのであった。
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