2.第21章 対峙4-4
すべてはこのヴェールと云う女性から始まった。
殺人を犯し、自分の子供達を、争いの中心に据えてしまった。
この1人の女性の欲望の暴走から、争いの種がまき散らされたのだ。
双子の王子は、ゴ族の族長とマント族の族長になり。
次に生まれたシバルバ族の王子は、生贄の少女をさらって逃亡した。
この三人の息子達が、惑星シバルバの混乱の中心にいる。
これから、この三人の息子達が相争い合い、殺し合う世界が始まるのだ。
この星の全ての種族を巻き込んで。
その始まりは、たった一人の、この目の前にいる女なのだ。
イサムナは立ちすくんだままになった。
「どうしたんだい、さっきまでベラベラ喋っていたのに。」
「私がゴ族の族長の女になる事が、不満なのかい。」
「それともイサムナ!。おまえがこの状況を変えられるとでも言うのかい?。」
「シバルバ族は、おしまいだ。絶滅する運命にある。」
「以前の卜占で、ワシの命が2か月と、もたないと伝えた。」
「ワシだけではない。ヤコック王もカサスも、そしてあなた、ヴェール女王も、2か月ともたない命なのだ。」
「シバルバ族は、みな死んで行くのだ。」
「何を言うイサムナ!。私は死なない。おまえを殺してでも生き延びる。」
「お前の卜占の見立て通りには行かせない。」
「私一人でも、生き延びてやるのだ。」
「あなたはシバルバ族の『創世神話』を、読んだ事が無いのか?。」
「我々シバルバ族は、明白神に守られた種族。」
「我々の死は、明白神と一体となる事。」
「肉体は滅んだとしても、精神は明白神と共に生き続けるのだ。」
「明白神は、永遠なのだ。」
「だが、あなたは明白神のもとへは行けない。」
「死んで暗黒神に囚われ、生きていた時間以上に苦しまなければならなくなるのだ。」
「それが、あなたがした事への罰なのだ。」
「怒り、悲しみ、妬み、恐怖。負の感情のもとに、暗黒神と共に生き続けるのだ。」
ベッ!!!。
ヴェールがイサムナの顔に唾を吐きかけた。
「それがお前の捨てぜりふかい。」
「私を殺したいのなら、さっさとおやり。」
「ほら、仕掛けて来なさい。」
「私が手を下さなくとも、ヴェール様の最後は見えております。」
イサムナは、顔からだらりと垂れたヴェールの唾を袖で拭いなら、そう言って書斎を後にした。
「何言っているんだい!。冬至の神事に失敗して以来、明白神は現れてないじゃないか!。」
「空を見上げても明白神は現れない、出て来るのは暗黒神だけだ。」
「お前の言う事なんか信用しないよ!。」
部屋を出て行くイサムナの背中に、ヴェールはもう一度、唾を吐いた。




