2.第16章 黒い影4-4
「そして、ヤコック王様の剣です。」
ポポカは従者からその剣を受け取ると、平たく幅のある鞘から剣を引き抜いた。
「これは、王の剣にふさわしく、三つの機能をバランス良く取り入れた、最新鋭の剣です。」
「やや幅のある両刃の剣で、切先は鋭く伸びていて、突く機能にすぐれています。」
「刃先は鋭く、これまた滑らせるだけで、相手を切り裂きます。」
「その切れ味は、相手が気が付かないうちに、パックリ切られていると云う業物です。」
「またある程度の重さを持たせましたので、大きく振りかぶり、上段から叩き切る機能もあります。」
「剣を交えた時も、相手の剣に負けないしなりがあります。」
「そして誤って手が滑って、柄から刀身に行かない様に鍔を取り付けてありますが、この鍔に工夫があります。」
「鍔がL形になっております。」
「剣を交えた時、このL形に相手の剣を誘い込めば、てこの原理で、相手の剣を折る事が出来ます。」
「どうぞ、最新鋭の剣を握ってみてください。」
ポポカは、うやうやしくその剣を渡した。
「なるほど、ワシの手にピッタリの柄だ。」
「重さも長さも、ちょうど良い。」
ヤコック王は、剣を両手で持ち右へ左へ振った。
「さてさて、お待たせしましたコアトル王子!。」
「コアトル王子の剣は、ヤコック王様の剣を扱い易く改良し、やや軽めにして、片刃の剣といたしました。」
「叩き落とす機能は劣りますが、コアトル王子の俊敏な動きについて行ける剣です。」
「一瞬にして相手の懐に飛び込み、心臓を突き刺す事が出来ますぞ。」
その剣を受け取ると、コアトルは全身に震えが来るのを感じた。
ズシリとした剣の重み。
底から湧き上がる様な、刃先の銀色の輝き。
儀式で使う剣とは違う、不気味な血の匂いを感じた。
黒い影との戦いの準備が始まった…。
心の中で、「ポポル」と名付けたその剣を握り締めながらコアトルは感じた。
ゴ族の黒い影は、シバルバ族の国の身近に来ていた。
今まで、ひっそりとシバルバ族の動向を見張っていたのだ。
名剣を手に入れたコアトル。
名剣「ポポル」との本格的な戦いの日々は、まだまだこれから。




