2.第16章 黒い影3
「一言で剣と言いますが、その機能は大きく三つに分けられます。」
鍛冶師のポポカは、剣を持つ手を振りながら説明を始めた。
「まず、相手を突き刺す機能。」
「針の様に鋭い切っ先で、相手を突き刺します。」
「次に、相手を切る機能。」
「薄いカミソリの刃の様に、相手の皮を、肉を切り裂きます。」
「そして、最後に相手の肉体を切り落とす機能。」
「斧が薪を叩き切る様に、相手の腕や首を切り落とします。」
「この三つの機能を一つの剣の中に取込もうとすると、これはなかなか至難の業なのです。」
「なぜなら突刺す為には、剣身が細くないといけません。」
「細ければ相手の心臓を一突き出来ますから。」
「ただ相手を切る機能や、切り落とす機能が損なわれます。」
「刃として、ある程度の厚みが欲しいのです。」
「厚みが出ると、刺す機能は損なわれます。」
「また、切落す機能となると、剣身は厚く重くしなければなりません。」
「その刃の重みを利用して、叩き切る訳ですから。」
「刺す、切る、叩き切るの三つの要素を考えながら、今回それぞれの剣をお造り致しました。」
ポポカはそう言うと、大八車とは別に、従者に持たせていた剣を受け取った。
絹の袋から剣を取出し、鞘から抜いた。
それは両刃の細身の剣であった。
「こちらの剣は、卜占科長のイサムナ様の剣です。」
「実戦には参加されないであろうと思われますので、護身用の軽い、刺す、切る機能を重視した剣です。」
「扱い易く、しなりがあり、折れる事はありません。」
「刃先は鋭く、相手に滑らせるだけで、皮も肉も切り裂きます。」
その銀色に輝く刃先は、触れただけでも切れそうな光を放っていた。
「次に武科長のカサス様の剣です。」
ポポカは、従者から、ひときわ長く大きい剣を受け取った。
「シバルバ族一の強者、カサス様の剣は、叩き切る機能を重視しました。」
長めの柄に、幅の広い片刃の剣身が付いた重みのある剣だ。
「この剣は、普通の兵士では重すぎて扱いずらいのですが…。」
「カサス様なら、ちょうど良いのではないかと、思われます。」
その剣を受け取ると、カサスは片手で、ブンブンと振り回した。
「私にはこの位の重さの方が、ちょうど良い。」
「これなら片手で、相手を頭から真っ二つに出来るな。」
その大刀を手にしたカサスを見て、皆二三歩、後ずさりした。
誤って触れただけでも、胴体を二つにされそうな勢いだった。




