2.第13章 選ばれしもの1
「秋分の神事」も無事終わり、新たな恋人達が今年も誕生した。
コアトルとエカリーの結婚式の日取りも、年末の「冬至の神事」の後、年明けの良い日を選んで決められた。
エカリーの父は、仕立師として、娘の為に手間暇を惜しまずに華麗な婚礼衣装を造っていた。
王宮の前の市場では人々が「冬至の神事」の準備と、「王子の結婚式」の準備で大忙しだった。
コアトルとエカリーが市場に買い物に出かけると、いつも人だかりが出来た。
「これはこれは、コアトル王子!!!。」
「この度はご結婚おめでとうございます。取れたてのフルーツを持って行って下され。」
「私からは、この花束をお二人に!。」
「出来立ての、ワインも持って行ってちょうだい。」
少し歩くだけで、国民からのプレゼントで、両手はいっぱいになった。
「コアトルは人気者ね。」
エカリーが、からかう様に言った。
「僕だけの人気じゃない。一般民に近い君が王女になるから、みんなが祝福してくれているんだ。」
「王が近い存在になるって。」
コアトルは幸せの絶頂にいた。
市場の人々がそれぞれの会話をしていた。
「今年は大豊作だった。」
「去年の『冬至の神事』に、王族のマヤウェルが生贄になって、そのお蔭かも知れない。」
「高貴な血の生贄に、神々が答えてくれて、大いなる実りをシバルバ族に与えてくれたのだ。」
「今年は誰の娘に御信託がくだるのかねぇ。」
大きな桶の中のブドウを踏み付けながらワインを造っていた女が、隣の女に言った。
「せっかく手塩にかけて育てた娘を、暗黒神の生贄にされたんじゃかなわないよ。」
「こらこら、滅多な事を言うもんじゃない。」
「暗黒神の怒りに触れたら、人間なんてひとたまりも無いんだから。」
「無駄口叩かずに、ワイン造りに精を出しな!!!。」
「なんだいこの人は!。人の話を盗み聞きして…。」
「ハハハハハッ。」
そう「冬至の神事」の御信託がくだる時期が、迫って来ていたのだ。




