2.第12章 暗黒の一日3
さっきまで輝いていた太陽が、みるみる真黒になっていった。
日の光が遮られ、暗がりの中、人々は恐怖した。
天空に、明白神の姿は無い。
「暗黒神が来るぞー!。逃げろ!!。逃げろー!!!。」
観衆達は一斉に、出口に殺到した。
拳闘場の中心で取り残されていたコアトルとカサス。
カサスがコアトルに近づき指示を出した。
「何と云う事だ。春分の日に、日食が起きた。」
「イサムナからは、日食の事は聞いていない。」
「卜占科が、見立てを出来なかったのだ。これは大きな失態だ。」
「競技は中止だ。」
「ただの日食だが、人々は混乱している。」
「コアトルは、南の出口に向い、観衆達の誘導をしろ。」
「俺は、衛兵達に指示を出しに行く。」
「それまで大声で叫び続けろ。『ただの日食だ。あわてる事は無い!』と!!!。」
コアトルは、南の出口にウィングを走らせた。
「ただの日食だ―――。慌てる事は無いぞ―――!。」と、叫びながら。
だが観衆達の混乱は収まらない。
村々から来た何十万の人々が一斉に出口に殺到していた。
「暗黒神が来る。暗黒神に殺される、逃げろ。逃げろ。」
押し潰されながら、倒れたものは踏み潰されながら、その呪いの叫びを聞いていた。
その叫びを聞いた者は、さらに「暗黒神に殺されるぞ~!。」と叫び、呪いの言葉は広がって行った。
ポポルはエカリーの手を引いて、群衆の中を流されるまま出口に向かっていた。
ヤコック王は、卜占科長のイサムナを問いただした。
「春分の今日、日食が起こると分からなかったのか!!。」
「ウサギ狩りは中止になり。春分の神事は、滅茶苦茶に成ってしまったぞ。」
「誠に申し訳ありません。日食が起るなど、思いもよりませんでした。」
「私の見立てが、まだまだ甘かったようです。」
「ヤコック王様。私に罰を与えてください。」
イサムナは、深く頭を下げた。
程なく太陽はまた輝きを取り戻していたが、拳闘場に人々の姿は無かった。
ウサギ狩りでの、コアトルの優勝は、幻となった。




