2.第7章 ヴェールの秘密4-4
オールド・イサムナの卜占により、また説得により、ヤコックの結婚相手は、妹のヴェールと決まった。
ヤコックも、また王宮の人々も、奇異に思ったが、卜占科の長官の卜占結果は、絶対であった。
暗黒神と明白神の、それが意志であると信じた。
1年半後、二人の結婚式が、盛大に執り行われた。
歴代の王の血統が守られたと、ヴェールやその取り巻き達が、宣伝した。
シバルバ王の存在は、神の存在へと、近づいたと。
結婚式では、食べきれないほどの料理が振る舞われた。
そして最後に、ヴェール自ら造ったと云う「イチジクのジュース」が、出席者に配られた。
一人ひとりに、ヴェールが直接会釈をして、グラスを配って回った。
その都度、皆、祝福の言葉をヴェールに投げかけた。
「王族の皆様方!。 どうぞ、精の付く禁断の”イチジクのジュース”を、一気に飲み干してください。」
ヴェールの宣言と共に、皆グラスを持ち、起立した。
「乾杯!。」 「乾杯!。」 「乾杯!。」
一瞬酸味を感じるが、その後、甘みが口の中に広がった。
盛大な式が終わり、皆、家路についた。
その夜、食べた物を全て吐出して、オールド・イサムナが死んだ。
食べ合わせが悪かったのか、大量の食事で、喉を詰まらせたのか、理由は分からなかった。
その理由を知っているのは、ただ一人、ヴェールだけだった。
そう、オールド・イサムナに毒をもったのだ。
オールド・イサムナは、ヴェールによって毒殺された。
だが、この事件も、不幸な事故として扱われた。
なぜなら、神に守られている種族の中で、殺人を犯すなどと言う発想がなかったから。
ねたみや嫉妬、飢えと云う事のなかったシバルバ族の国の中で、同種族を殺すと云う事など、無かったから。
争いはあっても、殺す事までになる事は、無かった。
その禁断の行為を、王女になるヴェールは行ってしまった。
誰も疑わない、誰も真実を知らない、完全犯罪が成就した。
この秘密を知っているのは、ヴェールと、この物語を読んでいただいている読者のあなただけです。
あなたも、この真実を他言なされないように。
すでに、あなたもこの事件の共犯者なのですから。
この事は、ヤコック王もコアトルも知らない、秘密なのですから。
この恐ろしい出来事とは裏腹に、その後の二人の結婚生活は、おだやかで愛に包まれた時間になっていった。
ヤコックは、歳の離れた妹を、最愛の妻として接したし、ヴェールも良き妻として王の補佐役をこなしていった。
戴冠式が行われ、正式にヤコックが、シバルバ族の王となった。
次は、世継の問題だ。
ほどなく、王女ヴェールは、懐妊した。
待望の次期、王を継ぐ者の誕生である。
ヴェールは、男の子を生んだ。
それも、二人も。
そう、双子の男の子を生んだのだ。
この事は、また、シバルバ族の大事件となった。
21世最大の神話「惑星神話シバルバ」。
その一つ一つの小さなパズルが、やがて広大な物語世界へとつながって行く。
小さなパズルの絵のかたまりが、いくつも出来上がり、いつしかそれが、つながり合い、広大な世界となる。
ヴェールの秘密が、この惑星の秩序に、何をもたらすのか?
殺人鬼を母に持つコアトルの行末は?
コアトルに嫁ぐ、エカリーの運命やいかに?
今後の展開に期待がかかりますが、今はここまでで。




