2.第7章 ヴェールの秘密3
ヴェールが職員室に入ると、今は亡きイサムナの父、オールド・イサムナが出て来た。
当時、卜占科の長官を務めていたのが、オールド・イサムナであった。
「ヴェール様の卜占は、長官の私が直々に見立てを、行いましょう。」
ヴェールは職員室から通じる別室に案内された。
机の上には、シバルバ曼荼羅図が広げられていた。
オールド・イサムナの卜占が、始まった。
ジャッ! ジャッ! ジャッ!
張り詰めた緊張が、二人を取り巻いた。
「痛っ!!!。」 オールド・イサムナが、手を止めた。
「卜占は、必要ありません。私の結婚相手は、兄のヤコックです。
卜占で、そう出たと、皆に伝えなさい。」
ヴェールが、言った。
その両手には、鋭い短剣が握られ、その切っ先は、机の下から、オールド・イサムナの”みぞおち”を突いていた。
「何をバカなことを!。卜占による見立ては、神からの啓示ですぞ。
我々が、勝手に決める事ではありません。
それに、実の兄と結婚するなど、もってのほか。
血が近すぎます。
そのような事は、神々が許さない!。」
「私は、暗黒神の許しを得た。
王家の血は、純潔であるべきもの。
他の者の、血は混じらせない!。
いい事。これは暗黒神の啓示!。覆す事は、出来ない。」
ヴェールは、オールド・イサムナの目を直視し、さらに、その短剣の切っ先を押し上げた。
「痛ッ!!!。 痛ッ!!!。 痛ッッッッッ!!!。
私を、どうしようと言うのだ。ヴェール。」
「私の結婚相手を、兄のヤコックに選ばないと言うなら、あなたを殺して、私もこの場で死ぬわ。
私の願いが、叶わないなら、生きている意味がないから。」
ヴェールは、さらに短剣を押し上げた。
「アガガッ。わかった!わかった!ヴェール!。
殺さないでくれ。
卜占の結果は、ヤコック王が、許嫁と出た。
それで、いいな!!!。」
「ありがとう。オールド・イサムナ。
兄の時の卜占では、私の名前を入れて、私を選ばせるようにするのよ。
兄が私を選んで、初めて、秋分の神事が完結する。
それまでは、あなたの命は、私の手の中にあるから。
肝に銘じておきなさい。」
やっと、ヴェールは、その短剣を、オールド・イサムナの”みぞおち”から、離した。
オールド・イサムナは、背中に冷たい汗が、流れるのを感じた。
「次期王女のツインを殺したのも、あなたですね。
あれは、事故ではなかったんだ。
なんて、恐ろしい娘なのだ。」
ヴェールは、オールド・イサムナに、冷たいほほ笑みを投げかけ、職員室を出て行った。




