バルバロイとの連携BC486 5月
ようやくアーシアも起動です。
北アフリカのベルベル人、語源がバルバロイなんですが、西側に住むのがムーア人、東側がヌミヴィア人みたいな書き方をこの小説ではしています。マシュリー族とマッサエシエリ族ってなんとなくごっちゃになりそうで、わざとやってます。下手をするとヌミヴィア騎兵を追い抜いてムーア人傭兵が歴史に残ることになるかもしれません。
あとデマラトスの奴隷に対する考え方はスパルタ市民だったら、こう考えるのが普通なような気がします。資料とか触っているうちにそう思いました。
アーシアが変人なだけで・・・よく元老院に受け入れたなとか思ったりしましたが・・・ペット大好きな人ぐらいに思われたのでしょうか?
=BC486 5月10日 サムニウム族の集落跡 デマラトス=
「・・・この山には大岩の部族、その二つ向こうの峰には3本樫の部族、どっちも同じくらいの人数か?」
俺の質問にサムニウム族の奴隷は素直に答える。
こうなるまでには若干教育が必要だったが、順調といえるだろ。
「思ったより薄く広く生息してるな・・・都市はないのか?」
「大部族長は周辺に5,6個の集落を構えた山に住んでいます。一番近いのは「獅子の牙」だと思います。」
「都市がないのかを聞いている!」
ちょっと声を荒げると、たちまちその場にひれ伏して命乞いを始める。「すみません、すみません・・・」小さな声で謝り続けている。
「答えろ!」
「すみません。都市というものがどういうものかわかりません・・・」
「なるほど。それでは仕方ないな。許す。」
たちまちのうちにホッとして感謝を満面にたたえる奴隷、われながら甘い主人だと思う。
現在のサムニウム族の奴隷は300人弱である。
捕まえた時に比べてほぼ半減した。
最初は酷かった・・・明らかに反抗的な態度をとる奴隷がいて、それに同情するような奴までいたのだ。
見せしめに最も反抗的な男の妻、息子、娘を第19歩兵隊に与えて好きなように凌辱させ、死んだ後に、その男も家族と同じ目に合わせた。
その時に少しでも、こちらに憎しみを示した連中も同じように各部隊に与えて、好きなように凌辱させて、死なせた。
死んだ連中に同情を示した連中はその場で殺した。性別、年齢まったく関係なく殺した。
その結果、半分になったが従順な良い奴隷が残った。
「奴隷を支配するには憎悪すらも圧倒する恐怖を与え、諦念させることである。」
メッセニアでの戦乱の経験からスパルタが得た結論は正しい。
ここでも有益に働いている。
彼らに罰を与えるのは不条理であり、無作為であるほど有効だ。
なぜなら、主人に取り入ってとか、何とかしようなどという余計な知恵を働かせないようにするのが目的である。奴隷に考えさせるのは反乱の芽になる。
だから先ほどのように罰の理由がわかるときには、気分次第で判断を変えてよい。
しかし朝起きたら誰か殺したくなった等というのは最高の理由である。そういう時は躊躇なく実行しなくてはならない。
不幸にも滅多にそんな気分にならないのだが・・・
奴隷からの情報でサムニウム族の生態が大分わかってきた。
周辺の地図を作りながら、奴隷に確認をした結果である。
サムニウム族は500人から2000人程度の集落をつくって山の中腹に集落をつくって暮らしている。
主に略奪と採集で食べているようだ。
集落で作るのは最低限の生活用品程度で、炭焼き小屋のあったこの部族はまだしも先進的な方だったらしい。
一つの集落は周囲の5~10の集落と緩やかな同盟を結んでいて、相互に援助することになっている。
時にその集落の一つに有力な族長が生まれると、大部族長となり周辺の部族を指揮することもあるらしいが・・・王のような絶対的な指揮権はもっていないようだ。
そのような生活形態から集落はだいたい山に一つ、多くても二つであり、近くに略奪できる平野の村がある場所は好立地とされ、時に部族単位で山を争うこともあるらしい。
「やっぱり、俺がこっちに来てよかった。」
気が長く、降伏した民族を同化して国民に変えようとするローマ人だったら、この土地を押さえるのに数十年はかかる。
山岳民族は目を放せばすぐに反乱を企む、というくらいに気位が高い。
オマケに中心地がないとすると、全面制圧しか手はないわけで、人も金も莫大につぎ込むことになる。
ローマにとっては精強な山岳民族が兵士になるのはメリットがあるかもしれないが、ヘレネスを叩き潰すのはペルシア健在の今しかない。さっさとサムニウム族は制圧して南イタリアからヘレネスを追い出す。
そしてペルシアを生き延びさせる。
そのために今は時間が最優先だ。
さて次はどちらの集落から落としていくか・・・
=BC486 5月20日 アフリカ ヘラクレスの門マウリタニア側 アーシア=
最低な話はとりあえずアテナイに戻らないで世界中飛び回るという現状を維持することで時間を稼ぎ、その間にパンドラが調査するという方向でまとめた。
そこで悪い話の対策だが・・・あまり手はない。思いついたのがヌミディア騎兵による圧迫ぐらいだ。
実は、このころにはまだローマ史に名高いヌミディア騎兵は名称すら生まれていない。
もともと遊牧民のギリシア語ノマデスが語源のラテン語ヌミダエが元になっているのだ。
つまり日本語で言えば「遊牧民の土地」のヌミディアは認識すら生まれていない。
地名としてはマウリタニアと名付けられたこの土地は丁度、東のマシュリー族と西のマッサエシュリ族がそれぞれ遊牧民連合国家としての形態を取り始める時期だ。
場所としては 西:マウリタニア カルタゴ(チュニジア&リビア含) エジプト:東 の順序で並んでいる。
先月末にカルタゴの蠢動を聞いたボクは全サルピズマに、イベリア半島のヘラクレスの門(ジブラルタル海峡)への終結を命じた。
彼らの任務は今一時的にスパルタ海軍が変わって行っている。
そのまま運んできた船4隻(アカイアⅡ、アルカディアⅡ、ラムヌースⅢ、ダイダロス)によりアフリカ大陸へ揚陸。ムーア人の待つマウリタニアの地を踏んだ。
事前にクルナの工作で良好な反応を示したのは西のマッサエシュリ族であった。
東のマシュリー族はカルタゴと接触があることもあって反応は良くなかった。
草原の真っただ中でマッサエシュリ族長 ユグリタは騎兵1000騎を控えて待っていた。
「我らの力を借りたいというのはお前か?」
騎乗のままユグリタがこちらに声をかけてくる。
「そうだ!我々に力を貸すなら我々も力を貸そう。」
「あいにくだが、我々には充分な牛はいる。困ってはいない。」
ユグリタは他に何があるのかという値踏みの目付きをした。
切札の出番のようだ。
「我々がお前たちを強くしよう、とはいっても弱い相手からそういわれても信用できまい。狩りで勝負して勝ったら我々の話を聞かないか?」
「狩り?この地で我々と狩りだと・・・馬鹿じゃないのか?」
ユグリタは侮辱されたという感じで怒っていた。
まあ、そう言いたい気持ちはよくわかる。
「我々(サルピズマ)がベルベル人 (バルバロイ)に負けることはない。そちらは1000騎でこい、こちらは53騎だが獲物の数で勝負してやる。仕留めた獲物の大きさは問わない。」
「こちらが勝ったら戯言をいうお前の首をもらうぞ。」
「条件はわかった。制限時間は太陽が真上に来るまで(約2時間くらいか?)。始め!!」
ボクの掛け声にサルピズマは一斉に散開して巻き狩りに移行する。
草原で囲むように移動し、飛び出してきた鳥やウサギを騎射で次々撃ち落としていく。
ここまでいけばわかるように獲物の数でといったのはこっちが有利になるための作戦だ。
千騎いようとも、少ない面積なら人が余り、役に立たない。
むしろ味方の騎馬のせいで獲物が散らばって効率が落ちる。
直ぐにユグリタはこちらの作戦に気付いたようで苦笑いしていた。
最も騎射については熱心に見ていたようだが。
太陽が真上に来る頃には完全に勝負はついていた。
もともと短時間で移動できる範囲に1000騎以上が密集していたのだ。たいていの獲物は逃げ出している。
スタートダッシュで残り少ない獲物を狩ったこちらが、圧倒的に有利になった。
「こちらが全部で1200羽ぐらいか?、そっちはどうだ?」
「やられた。お前はフェネックのように賢いな。」
ユグリタは笑い声を立てながら近寄ってきた。
その顔に敵意はない。
「あと獅子のように強い部下もいるようだ。」
サンチョが馬に200kg以上はありそうな雄ライオンを乗せ、コリーダが雌ライオン二匹を乗せて戻ってきた。
「では話を聞いてもらおう。」
「わかった。約束は守る。」
ユグリタはすがすがしい笑顔で答えた。
「その前に獲物をさばいて昼食にしよう。うちの料理長は腕がいいぞ。」
そのまま宴会に雪崩れ込んだが、このあとのマッサエシエリ族との交渉の結果に料理人の特訓という項目が、優先要求事項に上がったのは言うまでもないだろう。




