DIVA第16章〜第17章
第16章【壊れてしまったものは治らないのか?】
……しばし時間が経つとキャリーナはふわっと起き上がった。「……?あ、あぁ〜……、」キャリーナは周りを見渡す。まだ意識がはっきりしていないみたいだ。なんだか、ぼんやりとしている……。だって、あんなに怒りの感情を顕にして、疲れないわけがない……。「!あ、あんた達、まだいたの!?」キャリーナが時計を見ると、もう夕方の時間であった。キャリーナは驚きのあまり口を手で抑える…。「あらま。あたし、今日……ちょっとヘンだったわね……ごめん。オリーブ…」キャリーナは頭を下げる。「……。私こそ、ごめんなさい。少し、言いすぎたのかも……」オリーブも目をそらしはしたが、謝った。
『DIVA』。それは彼女たちにとって憧れでありなりたいもの。だから、そういう名前のグループにしたのだ。でも、DIVAを主に仕切っていたのはレインとハナ。この二人は学生時代からの仲であり、長い長い付き合いを経ている。そんな二人にキャリーナ達は、少し劣等感を抱いていた。自分たちだって、あなた達みたいに仲良くしたい。もっと長く一緒にいたい……でも、そんな二人はぽん。と、突然いなくなった。信じられない。こんなことが許されて良いのだろうか。
キャリーナはオリーブのケータイを返す。「返信してよ。あんたが。」キャリーナはオリーブに微笑む。「………?い、いいんですか?じゃ……じゃあ……」オリーブは自分のケータイを触り、レインの連絡を見た。
『いまどこにいるの』
レインからのメッセージには、そう書かれていた。「どこにいるって……」キャリーナは少し戸惑う。『家にいますよ。キャリーナさんの』とオリーブが打った。『え?そうなの?今から行ってもいいかしら』と、レインが返答してきた。キャリーナとオリーブは、顔を見合わせる……。キャリーナはオリーブに貸してと言い、ケータイに打ち込んだ。『キャリーナです。来るのはいいけど、今日は無理。明日とかならいいかも』と送った。『わかった。明日、午前頃に行くわ。』と、レインが返信した。キャリーナは怪訝な顔をしていた。
すると、今度は……
『ねぇ、今日、子どもたちってあなた達のところにいるんでしょう?今から迎えに行くから、待っててくれない?』
と、スパイスからの連絡だ。『え、いいけど。なんで?お家まで送ったげるの?』とキャリーナが打ち込む「そ、そろそろ返してくださいぃ〜…!」とオリーブが慌てる…。「ちょっとまちんさい。まだ返信してないのよ。」キャリーナはスパイスにメールを打つ。『わかった。待ってるわね。』と、キャリーナは送る。と、ドアが開いた……
「うげぇ?!なんでこんなにひといるのっ?!」
……キャリーナの娘のカリナだ…。「カリナちゃん。おかえり。」オリーブはスマホをいじりながら話す。「あ、はい」カリナはぎこちなく返す。「カリナちゃ〜ん♡」と、キャリーナがカリナに抱きつく……「やっ、やめてよっ!こっちは疲れてんだよ…!」カリナは必死に抵抗する……でも、キャリーナの馬鹿力には逆らえなかった……。「ほ〜ら♡今日はカリナちゃんの大好きなオムライスなの♡食べるでしょう?」「食べるけど……。その呼び方ヤメテ」カリナはキャリーナを睨む。だって……自分よりも小さな子がいるから……。恥を……かきたく…ない。「はいはい。カリナっ。今日はママ、機嫌いいの〜♡良かったわねぇ。さっきまではイライラしたり、また気分が良くなったりで……。あたし、今日は、疲れてるのかしら。もう、早めに寝ることにするわ……。」キャリーナはため息をついた。「……。」よつばは、さくらを見つめる。「なぁに」さくらもまた、よつばを見つめ返す。
「おうち、帰らないの」
よつばは表情を変えずにさくらの目をまっすぐ見つめる。さくらは、なんにも言えなかった。よつばの目が掴んで離さない。「帰らないよっ絶対。だって、楽しくないもん。家はぁ」アオキがぶりっ子みたいな話し方をする。まるで……ミルクみたい…。さくらは、それを見てイライラしている。「そっか。楽しくないんだ。」よつばは、平然と答える。よつばは、真剣な時、いつもこうなのだろうか。はたまた、なんにも考えてないだけなのか……。よつばはアオキとさくらを見つめる。
「きーたっわよっ。」
玄関から、スパイスの声。「あら!あんたぁ〜?久しぶりじゃない?ちょっと家で話してく?」キャリーナがスパイスに話す。「ええ、また今度にしましょ。一旦あの子どもたちとお話がしたいのよ。」スパイスはじろじろキャリーナの家の中を見る。「スパイスさん、お久しぶりです!」オリーブがニコッとする。「オリーブ、あなた、ケータイ触りながらはやめなさいってずっと言ってるでしょ?わかる?」スパイスが少し怪訝な顔をした。「あっ!……ごめんなさい……。」オリーブは苦笑いしてケータイを隠す…。「スパイスさん?来たの?どうして?」よつばがとことこやってきた。そして…「スパイス?!DIVAの?!」ゆりがとんでもない形相でよつばのあとをついてきた。「そーよ。私がスパイス!私に会えて嬉しいでしょ?」スパイスはニッコリと笑う。「……!嬉しいというか……やばいっていうか……あは、あはは……っ」スパイスはゆりに握手をしてあげた。「さぁ。あの二人は?」スパイスはキャリーナの家の中へ視線を向ける……すると、後からさくらとアオキが、ふてくされたように出てきた。「さぁ。行きましょう。」スパイスはさくらとアオキを見ると、不敵な笑みを浮かべた。「え?でも私達……ゆりさんのところに泊まってて……その必要は……」さくらが困って答える。「いいえ。ダメよ。よつばくんも今日は泊まっていいそうだから、私のところへ来なさい。まだ何をするとも言っていないでしょう?」スパイスは二人をしゃがんで睨む。「わかりました…」さくらはしぶしぶうなずく。「うん」アオキは納得いってなさそうだが、仕方なく承諾した。
「わ、私は?!」
ゆりは戸惑って聞く。「あなたは、キャリーナに中学まで送ってもらって、帰りなさい。あなた、とっても疲れてると思うの。」スパイスは、ゆりの肩を叩く。「あ……はい……」ゆりは承諾した。よ「テニス部だっけ?」とランは言う。「うん!そう!」リンはふと、ランを見た。「ふーん」こちらに目もくれず、ゲームを見ている。リンは、少し気分が下がった。ランは不登校で、家に引きこもりがちになっている。もちろん、リンはランの辛さを理解したいし、辛い気持ちもわかる……。わかるけど、
少しランが憎い。
ランを見ているとイライラする。こんなに私は頑張ってるのに……?ランったら。そう思ってしまう自分のことが、リンはとても嫌い。嫌い、嫌い、大嫌い。丸めて捨ててしまいたい。この身ごと……。ランのことが、大好きだから……愛しているから……絶対に傷つけたくない。リンはランの笑顔だけが最近の癒やしなのだから……。
「できたよー」リンは、机に出来上がったカップ麺を置く。「もうできてるから食べてー」リンはランを呼ぶ。「んーまってー」ランはゲームに夢中だ。「食べちゃうね。先」リンは席に座り食べ始めた。このあとは、洗濯物、皿洗い、などなどをしなければ。
私が頑張らないとお母さんが迷惑する
リンはいつもそう言い聞かせていた。アンは、とても悲しい思いをしたことがある。彼女のパートナー……【ゆきひで】という名の旦那は、弟のランが生まれてすぐに病死してしまった。リンはまだ幼くて、あまりゆきひでの記憶はないが、好印象なのは間違いない。
リンは、ごはんを食べ終わり、ゴミを捨て、作業に取り掛かろうとした。「……たべる」そう言ってランはこちらに向かってきた。「よかった」リンはランに薄い笑いを浮かべる。ランは席につき、一言話す。
「お姉ちゃんってさぁ、部活以外になんかやってんの?」
ピキ
リンの中で何かが壊れた。
「……何してると思う?」リンはランを見る。ランも、そのリンの目を見た……。
なんだか、その目は殺気立っている……?
ランは、少しビビる。「何……してるの…?」
ガシャン
皿が割れた。リンが、持っていた皿を落としたのだ。リンはランに振り返る。
リンはランの胸ぐらを掴んだ。
「………っ!!」
ランは声が出なかった。リンに殺されてしまいそうで。リンは、自分より身体が大きい……ということは、逆らうことはできない。ランはボロボロ泣いてしまった……。声を出して……。
「…っ!!」
リンはその声にハッとして、ランをすぐに離した。「ごめんね、ラン。ごめんね……っ」リンはランを抱きしめた。ランは大声で泣く。まるで、生まれたての赤ちゃんみたいに。
リンはもう、どうしたらいいか、わからなかった。
リンは、ランを部屋で寝かせた。本当はソファで2人寝ていたのだけれど、ガラスが誰かに割られたりして、ランが何かされたりするのが怖くて、部屋にランを持っていき、優しくベッドに寝かせた。リンは、ランに布団をかけ、髪をなでた。ランは目をつぶったままだ。まぁ、部屋に置いておいても、ひとりぼっちなことには変わりがないのだが………なぜこんなことをしているのかというと、ふと、リンは一人で家から出たくなった。こんなに夜が遅いのに……あいにく、アンは明日まで帰ってこない。リンはちょうどいいと思った。
リンは、コートをパジャマの上に簡単に羽織り、家の鍵を持って、ドアを締めた……。ちゃんと締めたし、鍵もあるから大丈夫……。リンはランのことを思うと心配でたまらなかったが、もう気持ちを落ち着かせるには、こうするしかない。リンは、ランのいる家に背を向け、歩き出した。
〜第16書終わり〜
第17章【自由って、なんだろう】
マリアは目を覚ます。マリアはあたりを見渡した。「あ、そっか……あのガキども帰ったんだっけ……?」マリアはゆりだったころの事をうっすら思い出した。マリアは体を起こす。マリアは、ゆりの制服のブレザーを羽織った。マリアは、とりあえずいつもなんとなく立ち寄っている温泉街へ足を踏み出す。ここは夜になると、本当に静かになる……。マリアは、この雰囲気は嫌いじゃない……。ふと遠くへ目をやると、遠くに見慣れない女の子が……?マリアはゆりの記憶の中にあるリンという人であることに気がついた。「お、お嬢さん。こんな夜中にどこ行くんだ?」マリアは、この時間帯に人がいるのが珍しくって、つい声をかけてしまった……。ゆりとしては、何度も話したことがある。でも……マリアとして話すのは、始めてだ。リンは重い口を開ける。「あ……、べつに…。どこにも……。」リンはもごもご話す。マリアは違和感を感じた……この人はもっと明るくてハキハキ話す人……こんな小さくぼそぼそ話す人じゃない……!マリアは、ゆりの時の記憶を辿り、彼女に話しかける。「リン……ってったっけ?」マリアはリンを見る。「……?…うん、」リンは頷く。やっぱりおかしい……!リンはもっと目と目を合わせて話してくれるはずだし、こんなにテンションが低いのはおかしい!ちょっとじゃない……。低すぎる!!マリアは頭をフル回転させる。「だ、大丈夫か?!そ、そんなに……」マリアは、リンを心配する。「……。大丈夫。私は……」リンはマリアにやっと顔を覗かせ、微笑んだ「あなた…」リンはマリアの顔を覗き込んだ。しばらくマリアを見つめて、不思議そうに目を細める。「あなた…もしかして…」リンはマリアを睨む。「名前はなんて言うの?あなた。」リンは冷たい声で言う。「…え?オレはマリア…」リンはその名を聞いて、少し戸惑った。「マリア…?どっかで聞いたこと、あるかも…」リンは首を傾げた。リンはマリアの顔をじっと見つめる…。「そ、そうなのか…?あ、そっか、しってるかぁ」マリアは1人で納得していた。なぜなら、リンはマリア…ゆりに会っているから、知っててもおかしくはないかもしれない。もしかしたら、ゆりがポロっとマリアのことを話したのかもしれない。「えぇ、そうね。知ってるかもね。あなたのこと。」リンは不気味に笑う。まるで、マリアの全てを知っているかのように。「あ……そうだな…ははっ」マリアはとりあえず笑った。この娘は、やっぱり……こんな子じゃなかったよね…?マリアは冷や汗をかいていた。ゆりには、とある癖があった。ゆりが親から叱られている時、先生に怒られている時、不安な時、怖い時……悲しい時……いつもマリアがゆりの代わりにそれをくらってる。ゆりは自分の怖いものから逃げて、マリアに全ての身代わりになってもらっていたのだ。マリアは、ほぼ怖いものがゆりと同じだ。だから、この状況はとても怖かった。リンのことをよく知っているはずなのに、本当に知らない人がそこにいるみたいに思えた。まるで別人。リンはそれでもマリアを追い詰める。
「ねぇ。マリアちゃん?あなたの着てる、その制服、どこの。」リンは、冷たくマリアに言い放つ。その声はいつもよりも低めで、何より鋭かった。「え」マリアは頭が真っ白になった。これはゆりの制服。マリアは、なんとか言い訳を考えた。「……同じ学校の……」マリアは、汗が止まらない。とても怖い。「私、同じ学校だなんて言ったっけ」リンはマリアを見つめた。リンのその瞳に、吸い込まれてしまいそうだ。「え……、あ、いや……」マリアは逃げたくなった。いつもいつも怖い思いをはするのは自分。ゆりのことが大好きだが、彼女を憎いとも思う。なぜ、なぜマリアは生まれたのか。マリアはよくそれを考える。だって、自分が消えればゆりは幸せになる。マリアはそれがとても悲しかった。マリアはゆりのことを愛しているのに、ゆりはマリアを愛していない。マリアは、それが悲しくて悲しくて仕方がなかった。「まぁ、もういいや、あなたに会えてよかった。マリア。また会えたらいいなぁ。」リンニヤリと笑ってその場を去った……。マリアは、その背中を見つめていることしかできなかった…。
マリアはいつもより早くゆりの部屋に戻り、眠りについた。マリア、ゆりの体はだいぶ限界を迎えている。眠たくて仕方がない。こんなに眠たくなったのは始めてだ。ゆりに好かれたくて、いっぱいマリアは努力をした。でも、ゆりは何をしてもマリアとも自分とも向き合おうとはしなかった。マリアはそれがとても残念であった。ゆりは、自分の役回りを知れば、とても強くなれる。ゆりはまだ、自身のことについて、なんにも分かっていないのだ。マリアはゆりにそれに気がついてほしい。でも、やり方がわからない……。だから、夜に街へ出て、学校の周りを散歩したり、時には、夢見や風野の方へも行ったことがある。マリアは普段、あまり自由がない。マリアはゆりが起きている間はゆりが危険な目に合っている時にしか目覚められないので、人に気を遣って、ゆりのふりをするしかないので、自由に行動ができない。マリアはそれが何よりの不満だった。だから、夜中にどんなにしんどくとも外へ出るのだ。寝不足でゆりの体は常にヘトヘトだ。だから、ゆりはよく体育の授業を見学している。授業中も眠りまくっているし、同じクラスのアオハに心配されている。ゆりは、アオハに睡眠不足な事は話していた。だが、ゆりは心配してくるアオハを鬱陶しいと考えていた。アオハとは昔彼が悪いわけではないけど色々あったので、彼と話すと嫌な思い出とリンクされてしまう。ゆりは、だからアオハに当たりが強い。
「……。」ゆりは、太陽の光が眩しくて、目を覚ます。ゆりは、体を起こした。……部屋には誰もいない。……子どもたちもいない。ゆりはベッドから起き上がり、とりあえず着替えた。……そして、ドアを開けると……
「ゆりちゃん」
「いやぁぁぁぁぁ!!」
リンが……すぐ目の前に立っていた。ゆりは、しりもちをついた。リンはそんなゆりを押し切って、部屋に入り込んでくる。リンは足で開いたドアを閉める。リンはずっとニコニコしている。「ゆりちゃん。あのね。私、昔のこと、思い出したんだぁ。」リンはゆりを逃すまいとしりもちをついたままのゆりに話しかける。ゆりは頭が真っ白だ。何が起こったか、さっぱりわからない。「うふふ。昔はゆりちゃんといっぱい遊んだもんね。実はね、私、あの頃からちょっと、あなたのこと変な子だと思ってたの。」リンはゆりの周りを威圧的にゆっくりと歩く。
「あのさ〜。ゆりちゃん、小学生の時さ〜自分のこと、マリアとか言って遊んでなかった?」
リンはゆりをニヤッとして覗く。リンはまるでゆりを見下しているかのようにも見える。「まり……」ゆりは冷や汗が止まらない……。「し、知らないよっ!!そんな小学生のことなんて、覚えてないし〜?」ゆりはなんとかごまかそうとした。「え〜私は覚えてるけど」リンはゆりをヘラヘラしながら見つめている。なにか、どこか壊れてしまったみたい。
「……知らないっ!!」
ゆりは大声でいう。「……あ、そう。あなたがマリアではないの?」リンは不気味にヘラヘラして言う。「ちがうよ……私はっ」ゆりは立ち上がり、駆け足になってドアに手をかける。「……ちがう。私は。知らないっ!!」ゆりは力強くドアを閉めた。
リンは一人ゆりの部屋に閉じ込められた。リンはゆりの閉めたドアを凝視していた。まるで人形みたいな目をしていた。
ゆりは走って逃げ出した。とにかく、自分の教室へ。すると……
ガシャーン!!
と、とんでもない音がした……。
ゆりはとても驚いて音のなった教室の中を覗く。「……!」
バラみがいる。ゆりは、目を離せなかった。だって、今はあんなだけど、昔はあんなじゃなかったから。バラみは幼い頃のゆりがしてたポニーテールを自身も真似するくらいには、純粋で、心優しくて、大人しい女の子だった。バラみは控えめな性格で、声が小さい。そんな彼女が……『あんな』になるなんて、ありえないのだ。ゆりは、バラみのことを見るたびにそう思う。いつもゆりが、彼女を輪の中に入れてあげていた。バラみの心の扉をゆりがこじ開けたのだ。バラみは、ゆりやリンといると、心から楽しそうに見えた。だけど、彼女は突然、ゆりたちを無視し始めたりと、距離を取りはじめた。そこから、三人はおかしくなっていく……。ゆりは、バラみを見るたび、心が揺さぶられる……。なんとも言えない感情が、彼女の胸の内を行ったり来たりする。ゆりは、正直、今はバラみとは関わりたくない……それでも、彼女のことが気になってしまう。
バラみの目の前に女の子が何人か……。恐らく、また何か言われたのだろう。バラみは、机をぶん投げたのだ。……幸い、怪我をしている人はいなさそう。ゆりは、ほっとため息をついた。すると、バラみはすたすたゆりの方へ歩いてきた。ゆりは、なにかされるかも?と、身構えた。……だが、バラみはなんにも言わずにゆりを素通りした。……ゆりは、少しそのことにモヤモヤしたが、気に留めないことにした。だって、もうバラみとは話せないし、自分もその方が気が楽だから。……すると、あんなにし〜んとしていたバラみの教室が一気にざわつく。
ゆりは、少しバラみが気になって、後をつけた。
バラみは一番下の階の階段で、泣いていた。ゆりは、バラみが泣いているのを何度か見たことがある。昔は、よく泣いていた。ゆりは、何故泣いているのかはよくわからない。なんなら、今も理由がわからない。
「バラみさん。」
「……!?」ゆりはハッとした……男の子の声……?しかも、すごく綺麗な……ゆりは、バラみの方をちらりと見た。
生徒会長……。
あれはシュガーくん?!ゆりは目をまんまるにした。なぜバラみがあんな人と関わっているのか?学年1のモテ男だぞ……?と、ゆりは体が熱くなる。色々興奮して、疲れてきた。シュガーは、やっぱり美しい。このゆりでさえ、少しうっとりしてしまう。これは、男の子に弱いリンならイチコロだ。最近、深い話はしていないので、どの子が好きだとか最近の近況だとかは、全く知らないけど。
バラみはシュガーを見つめる。シュガーは微笑んで口をあけた。「ねぇ、一緒に教室に戻ろう。あの子たちには僕から言っとくから…」シュガーは、バラみのとなりに座った。「……それとも、まだここにいたいかい?」シュガーは首をかしげた。「…まぁ」バラみは、たったひとことだけ、つぶやいた。「わかった」シュガーは、バラみによりそって、背中を撫でてあげた。
…ゆりは、少し気まずくなっていた。あの2人は、どういう関係なのか…ゆりは、無意識に顔をしかめた。この場から今すぐにでも離れてしまいたいのに、ゆりはもう、そこから動けなくなっていた。そろそろチャイムがなる…ゆりはもうすぐ教室に戻っていないといけない頃だ。ゆりは、今日もいつもどおりの生活を送るのか…と、少し残念であった。よつばたちがいた時は、ちょっと面白かったのに。ゆりには遊んでもらえる友達もおらず、まだまだ若い彼女には興味もない授業だなんて、タイクツでタイクツでしかたがなかった。今日は、特に眠いわけでもなく、ふつうにダルかった。
その頃、よつばたちは…
「いい?いきなりレインが連絡してくるなんて、おかしい。あの人のことだから、なにかたくらんでるのよ」スパイスは電話越しのキャリーナに訴える。「考えすぎじゃない?だって、レインだって私たちとしばらく会っていないから、話したいだけなんじゃない?それに、ハナについて詳しくしってるのも彼女でしょ?なにか、てがかりが見つかったのかもよ」キャリーナは能天気に言う。「あなたは考えてなさすぎ。レインの性格、わかってないでしょう。あなた、それに、彼女、ケータイを持ってる姿なんて、見たことない。ニセモノかもしれないわよ。だって、アイコンもないし、名前がレインってだけよ。」スパイスは呆れて言う。よつばたちは、それをしずかに見ていた。すると…
ぴんぽーん
と、キャリーナの電話から音がした。
〜第17章終わり〜




