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DIVA  作者: メロン味
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DIVA第18章〜第19章

第18章【今日は雨なんて降らないくらい天気がいいのに】

今日は、よく晴れている。キャリーナはドキドキしながらドアをあけた。「あら。キャリーナ。こんにちは。」レインがごきげんようとスカートを持ち上げ、あいさつをした。「え…え…?ほんとにレイン…?」キャリーナは驚きを隠せない。「今日来ると言ったでしょう?覚えてないの?」レインはキャリーナの顔を覗き込む。「…そ、そうね…それは、わかってるけど……」キャリーナはうつむく。「ねぇ。キャリーナ。あなた誰と話してたの」レインはキャリーナの瞳を、掴んで離さない。「え…あ、いや、…」キャリーナはレインに対して、しどろもどろになりやすい。レインはキャリーナをうまく扱うのがとても上手いのだろう。キャリーナは、美男美女にとても弱い…レインはDIVAの中で1番綺麗だと言われるくらいには美しい。キャリーナは、レインのことが苦手なわけではいが、他のDIVAたちに比べて、レインにはあまり強く出ることがむずかしい。レインはそれを理解しているかのようにキャリーナに詰め寄る。「ねぇ。だれと」レインはキャリーナ手を握りしめ、聞く。「だ、だれって、」キャリーナは戸惑いながら…「おねがいだから…言わないで!」スパイスは小声で呟く…「………スパイス…」キャリーナは、言ってしまった。「あー!うそっ!」スパイスは絶望した…。「あら、スパイス?いいわね。私も話したいわ。」レインはキャリーナを見た。


「貸してくれる?」


レインはキャリーナに無言の圧を送る。彼女の顔はにこにこしているが、ほんとになにを考えているのか、想像がつかない……「キャリーナさん…」オリーブはキャリーナを見つめる。「オリーブちゃんも話したいわよねぇ?」と、レインはオリーブに微笑む。「い、いや、私たちは何度か話しているので……いいかなって…」オリーブは苦笑いした。「でも、私は話してないわ。お願い。かわって。」レインはキャリーナを見つめた。キャリーナはレインにすべてを奪われたような気分だった…「わ、わかった……」キャリーナはレインが怖い。彼女に嫌われたり、意味のない存在だと思われるのが……。それが怖くてしょうがないのだ…



キャリーナは、ケータイをレインに手渡した。「もしもし、スパイス」レインはキャリーナからのケータイを奪い取ると、スパイスに話しかけた。「だれ…」よつばがなにかを言おうとした…が、スパイスに口を塞がれた。「しゃべっちゃダメよ」スパイスは小声でよつばたちに伝えた。


「なあに。レイン。」スパイスはレインに冷たいトーンで話す。「スパイス!元気そうね。よかったわ。」レインはひどく落ち着いて言う。「もう、なんなのよ。いきなり消えて、また連絡してきて。もう私たちのことなんて、どうでもいいんじゃないかと思った。」スパイスは嫌味を言う。「そんなわけないでしょう?私があなたたちを見捨てるなんて…」レインは明るく言う。「あのねぇ……私たちだって、そんなに暇じゃないのよ……」レインはそう話す。「しってるわ。そんなこと。ねぇ、ハナって双子の子どもがいたわよね。その子たちと会いたいのよ。」レインはそう言う。スパイスは、うわ、でたぁ〜と思った。「……ハナの子ども…私、どこにいるかなんて知らないわよ。」スパイスはしらばっくれた。


「あら、そう。教えてくれたら、ハナについてわかったことを教えてあげるのに。」レインはニヤリとした。


「……」スパイスは、一度深呼吸をした…。


「いいわ。連れてってあげるわよ。そこで待ってて」


と、冷たく言い放ち、電話を切った。「ハナについてわかったことって…なによ?」キャリーナが言った。「それはみんなが来てからにしましょう?ねっ。」レインはにっこりと微笑んだ。「レインさんならハナさんのことを知ってると思ってたけど…知ってるなら、なんでもっと早く来てくれなかったの…?」オリーブは不安そうにレインを見つめる。「私、ハナがいなくなったことが、とてもショックだったの……だから、時間がかかってしまった。あなたたちに、もっと早く言うべきだったわね……」レインは切なく微笑んだ。「そうだったのね…気持ちはわかるわ…私も、ハナがいなくなってから、食事も喉に通らなくって……」キャリーナは泣きそうになりながら話す。「そうですね…キャリーナさん、別人みたいになっちゃってましたもんね…」オリーブはキャリーナを見た。「でも、きっと大丈夫。DIVAは硬い絆で結ばれているの。だから、きっと大丈夫よ。」レインは微笑んだ。


「楽しみね。ハナの子どもがどんな子なのか…」


レインは玄関を見つめた。






「……あの女…よくもこれだけ人を…」スパイスはレインに対してイライラいていた。「キャリーナが自分の思い通りになるからって…」スパイスはよつばたちを見て、冷静になった。「今日はうちにグロウもいないし…みんな連れていかないと…」スパイスは色々考えることが多い。彼女は、なにをするのが正解か、もうよく分かっていない。でも、できれば子どもたちをレインには会わせたくない。とくに、よつばには。でも、ハナのこともあるから、よつばはレインと会っておいてもいいのかも…しれない…


「ん…?」



ここでスパイスはあることに気がつく…さくらがいない。


スパイスは、慌てて階段を駆け上がる。



ここにいないなら、上の階にいるだろう。と、歩き出した。


すると、廊下にあるベランダから歌声がする。


そこには……さくらがいた。さくらは風に髪がなびいて、なんだか絵になる光景だった。が、今はそれどころではない……でも。


「素敵ね」


スパイスは小さく拍手をしてさくらに声をかけた。「えっ!?」さくらは、ひどくびっくりしてスパイスを見た。「なんでこんなとこにいるかはよくわからないけどもね。」スパイスはにこにこして言う。「ご、ごめんなさい…ちょっと、1人になりたくて…」さくらはすぐにベランダから家の中にもどった。「本当に今日はいい天気ね。……ねぇ、さっきのは、あなたの作った歌?それとも、誰かの曲?」スパイスは首をかしげた。「えっ……。て、適当に歌ってただけで…」さくらはそう言ってうつむいた。



「じゃあ、『あなたの歌』か。」



スパイスは目を輝かせてさくらを見る。「え…」さくらは呆然として、スパイスを見る。「あっ。ちょっと待ってて。」スパイスは急いで何かを持ってきた。これは…何かのパンフレット?「見て。私ね、実は歌のレッスンをしてて、大会にでたりとかして自分の声を聞いてもらうチャンスが多いのよ。もし、よかったら、さ、見学だけでもしてみたら?もし…お母さんやお父さんが良いって言ったら……。電話して。さぁこれから出かけるから、下に降りてきて!」スパイスは先に降りて行った…


「…」



さくらはしばらく、そのパンフレットを、眺めていた…。でも、それを見るたびに苦しくなった。



「ごめんなさい…」



さくらはそう呟き、パンフレットをスパイスの寝室のゴミ箱に捨てた。






よつばたちは、スパイスの車に乗って、キャリーナの家へ向かった。キャリーナの家の前に着くと、よつばはさくらの異変に気がついた。「さくらちゃん、どうしたの?」よつばは首をかしげた。「え、いや。なんでもないよ。」さくらはそっけなく返す。さくらは車の中でもとても静かだった。「ご機嫌ななめみたいよ?さくらちゃんはぁ」アオキがまたつっかかってきた。「だから、なんでもないって。」さくらは強めに言う。「ホントウになんでもない時にそんなこと、いいましぇーん」アオキはさくらをいつもの調子でからかう。


「だからなんでもないってば!」


さくらの指から、黒くてトゲトゲしたツタがアオキに飛んできた。


「イタっッ!!」


アオキはほっぺたを抑えてしゃがみこむ。



さくらは、ふと自分の指を見る…「!?」

さくらはすぐに手を隠した。



「なに?どうしたの?」スパイスが駆け寄ってきた。「アイツのせい!」アオキはさくらを指さした。「えっ…?!」スパイスは信じられなかった…そんなことをするような子には見えないのに……



「違うよっ!」



よつばが大声でスパイスに話す。「さくらちゃんの、尖ったヤツがあたっちゃったの!わざとじゃないよっ!」よつばは必死に訴える。「……ま、まぁ…そう…かも…」アオキも納得はいってはいないが、よつばに合わせた。だって、何が起きたか話しても、分かってはくれないだろうから……



さくらは、また指先を見てみる……。そこには、いつもどおりの指があった。さくらはとても不安になった。


DIVAたちはアオキの傷の手当てをしてやった。「大丈夫?痛くない?」スパイスはアオキのほっぺの絆創膏を優しく抑えて言った。「うん。いたくないよ。」アオキはふてくされた態度で話す。おそらく、恥ずかしいのだろう。彼のプライドが、許せなかったのだろう。「よかったわねぇ。大ケガじゃなくって。」キャリーナがほっとして言う。「お茶でもどうぞ〜」オリーブが気を利かせて、お茶をDIVAたちにもってきた。子どもたちにも、冷たいお茶を用意した。



「ところで、あんたの言うハナについてわかったことってなんなのよ。」スパイスは冷めた目でレインを見た。


「実はね、ハナには『10個の声』があるの。」


レインはニヤリと笑った。



「は?」


レイン以外のDIVAたちは、意味が分かっていない。「ハナの声には感情があるの。1個は、ハナが場所を知ってるらしいから…あと、9個ね。」レインはニヤッとした。「…そ、そんなこと、だれから聞いたの…?」キャリーナが恐る恐る聞く。「ハナ自身からよ。だいぶ前に話してくれたの。」レインは不気味に笑った。「え…なんでそんな話しをもっと早くしてくれなかったの??」スパイスは身を乗り出してレインに聞いた。「……あのね、少し、考える時間がほしくっって……もっと情報がほしいの。たとえば…

…よつばくんとかから。」レインはよつばに目をやる。


「えっ」よつばは、いきなり自分の名を呼ばれて、びっくりした。


「あなたはハナの子。あなたが1番彼女のこと理解しているはずよ。」レインはニヤニヤして話す。よつばは、少し静かになってから、口を開いた。「あのね、ぼく、ママにずっと会ってないから、よく、わかんない……」よつばはうつむいた。「…そうよねぇ。ママ、いないものねぇ。」レインはそんなよつばを憐れんだ。「その言い方はちょっと失礼なんじゃない?」スパイスはレインを睨んだ。「あらやだ。冗談でしょう?本気で言ったんじゃないわ。」レインはヘラヘラして言う。「あなたのそういうところ、あたし大っ嫌いよ。」スパイスは、レインを睨んだ。「嫌わないでよ……長年一緒にここまでやってきたじゃない。」レインはふふっと笑う。スパイスは、それを見て、ため息をついた。「で?9個の声ってなんなのよ。あんた、それがどこにあるか、知ってんの?」スパイスはレインをにらんだ。「いいえ。だからあなたたちと話したかったの。私だって、ハナがいなくてすごく寂しいのよ?ね?」レインは、悲しそうに、でもどこか嬉しそうに話す。「…あっそ。」スパイスは、レインをまだ信じられない。「その声っていうのはね。色ごとに分かれているのよ。たとえば…」レインは話しを続けた。「イライラしてたら赤とか悲しかったら青とか、…心あたりはない?」レインはよつばに微笑みかける。「悲しい……」スパイスは口を開いた。すると、レインの眼はオオカミが獲物を見つけた時のように反応した。「ねぇ、オリーブ、それさぁ……あんたがまっピンクになった時みたいじゃない?」キャリーナは、真面目に言った。「そ、そんなこと言ったら、キャリーナさんは真っ黄色だった!!」オリーブが言い返す。」



「それよ」


レインのDIVAたちを見る目は、とても恐ろしかった。レインの美しい顔からは出てはいけないもの。レインは、続けて話す。「それこそ、ハナの声。それをどこへやったの?」レインはDIVAたちの目を掴んで離さなかった。「どこって…」キャリーナはなぜかよつばを見る。さくらやアオキもよつばを見た。その場にいた全員が唾を飲んだ。


「あなたがもってるの?」


レインは笑顔でよつばに近づいている。



「え…え…」


よつばは、怖くてこえがでない。「どこにあるのか、知ってる?」レインは微笑んだ。「うんう、」よつばは、首を振った。今のレインが、とっても怖くて……よつばの頭はまっしろだった。「そう……」レインのよつばを見る顔が、冷めた目に変わっていった。もう、興味がなくなったみたいに。よつばは、レインが怖い…なぜだかわからないけど、彼女の放つオーラが、とても怖い…「よつば、ハナのこえ…?どこにやったんだよ…」アオキは興味を持ったのかよつばに聞く。「わかんない…」よつばは胸に手を当てる。「無くしちゃったの?」さくらは不安げに聞いた。「……うんう、あるの。ここに。」よつばは胸に手を当てて言う。「え?体の中にあるの?コワ」アオキはよく分かっていない。「ハナはあなたに持ってきてほしんだね。」さくらが微笑む。よつばは、こんなにも柔らかく笑うさくらを見たことがない。「そうなの?」よつばはさくらに首をかしげた。


「どうしたの?」


レインはよつばたちに微笑んだ。「いいえ!なにも…」よつばは大きな声でレインに言ってしまった。「…また会えたらいいな」レインはよつばを見つめた。「うん…」よつばは震える唇で声を絞りだす。



レインは帰り際によつばたちに手を振った。レインは優しい笑顔をしていたけれど、なんだか、空っぽみたいによつばには見えた。レインのターコイズ色の髪が夕方の日の光と合っていて、とても美しく見える。でも、彼女の美しさの中には、儚い感じもある。レインとは、本当に不思議な人だ。



さくらたちは、DIVAたちに別れを告げた。「ちゃんと…帰るのよ。」スパイスはさくらとアオキを見る。2人は、スパイスから目を逸らしてしまった。



「よつば、またね。あたしたちは大丈夫。ゆりさんのところに行くからね。」さくらはよつばを安心させるように言う。「おうちに帰らないの?」よつばは悲しそうに言う。「うん……」さくらはうつむいた。「帰らねーよ。お前とは違うんだ。」アオキは強めに言ったけど、悲しそうな言い方にも聞こえた。「そっかぁ」よつばはそれだけ呟いた。「ほら、お前もまたゆりさんのとこに来いよ。なっ?」アオキは言いすぎたなぁと思って、付け加えた。「うん…!」よつばは少し嬉しそうにして歩きだした。



よつばは、電車に乗っていろんなことを考えた。まず、さくらやアオキのこと、DIVAのこと、レインのこと、ハナのこと。正直に言ってしまえば、よつばはハナがいなくても大丈夫だと思っていた。だって、今までそうやって暮らしてきたから。シロツメ2人きりで、十分幸せだから。シロツメがどうかはわからないけど、よつばはそれだけで幸せだったんだ。それに、さくら、アオキ、ゆり、彼らのような面白くて楽しくてとっても好きだと思える人たちに出会えた。よつばは当たり前の幸せで本当に十分だった。これ以上のことだなんて、望んでない。よつばは本当に今の状態で満足なんだから。


風野の駅に電車が停まった。「ありがとうございま〜す」よつばはそう言って、小さな体で電車からピョンっと飛び降りた。電車はよつばを降ろすと、すぐに走りだした。まるで、よつばのためだけに走っていたかのように。乗客はほぼよつばしかいなかったから、あながち間違いではない。電車は小さなお客を乗せて走っていたのだ。



そしてよつばは、家へと歩いて行く。本当にここは静かで星が綺麗。よつばは、気持ちいい風に吹かれた。ちょっと冷たいけど、とても心地よい。よつばはここの風が大好きだ。風野村という名前がここにはぴったりだ。草を踏む足音、虫の声、カエルの声、全ての音が心地いい。ここはど田舎でなんにもなく、夜は静かすぎるくらい静かだが、よつばにはそうは思えない。耳をすましたら、色んな音がしてくるのだから……。よつばは、家のドアを開けた。すると…シロツメはもう寝てしまったのか、家の中が暗い……よつばは静かに家の中へ入って、なんだか怖いので家のカギも閉めた。足音をたてないように2階へあがる。一階に人の気配はない。よつばは、また怖くて体が震えていた。レインの時とは比べものにならないほど。


「パパ?」


よつばは寝室を覗いて、シロツメを呼んだ。


「もうダメだ」


シロツメは、布団に寝っ転がっていた。「パパ、どうしたの?」よつばはシロツメのためにしゃがみこむ。「パパってさ。もういらないんじゃないかな。」シロツメは生きてないみたいな目をして言う。「え、いるよ。パパは」よつばは静かに呟く。「いらないよ。お前にだって辛い思いばっかりさせて、……ママとみつばにも捨てられて……パパって生きてる意味ないんじゃないかなぁ」シロツメは泣いていた。よつばは慌ててなんとかしようとした。


「ママに会えるかもしれないの!!パパ!!」


よつばはシロツメの体を揺さぶる。


「え…?」



シロツメは体を起こした。「そんなこと、どこでしったの。」シロツメはダルそうによつばの話を聞く。「DIVA!!ママの声を集めれば会えるって…」よつばはシロツメの顔を見る。


「いないよ」


シロツメは真っ黒な目で答える。「いるよ!だって…ぼく、ぼくねっ!」よつばはシロツメに必死に伝えようとする。でも、シロツメは布団から立ち上がって、歩き出す。「パパ、待って」よつばの声に、シロツメはなんの反応もしなかった。「パパ…パパっ…」よつばはシロツメの服の袖を掴んだ。


「いないんだって!!ママは!!」

シロツメはそでをつかむよつばを力強くふりほどいた。


「…!」


よつばの目から、涙が溢れた……



「まって……」



どの瞬間、よつばは、走りだした。



「まって!!まってよ!!よつば!!」



シロツメがよつばの手を掴もうとしたその時……



バァン

と、ドアが閉まった。


もうダメだ。シロツメはそう思った。もう、あの子は戻って来ない。シロツメの目からは涙だけ落ちてきた。なんてことをしてしまったんだろう……シロツメはここ最近、情緒が不安定だ。いや、前からそうだったのだが、ハナがいなくなって、みつばもいなくなって、それからもっとひどくなった。さっきのだって、あんな風に怒鳴らなくたって、もっと言い方じゃなくたって、もっと良いやり方があったはずだ。それなのに……あの子を傷つけてしまった。もうぼくに生きる価値なんてものはないんだろう。あの子にとっても、ぼくは意味のないものになってしまった。ぼくはいらない子。ぼくはひとりぼっち。消えてしまいたい。ぼくのやってたことって、意味があったのかな?もうなんにも考えたくない。



その頃、よつばはまだどこにも行っておらず、家のドアに背中をつけて、1人泣いていた…でも、家に戻るつもりはない。さくらやアオキもこんな気持ちだったのかもしれないとよつばは思った。


帰りたくない


本来暖かくて大好きな家であるはずなのに。よつばは、胸が苦しくて苦しくて……仕方がなかった。シロツメに元気を出して欲しかった。ただ、それだけだったのに……。よつばは、意を決して、立ち上がった。



      〜第18章終わり〜




第19章【誰かに愛されるなら、どうしたらいい】

バラみは、放課後、校庭を1人で散歩をする習慣があった。一人なのは、結局誰とも話せないし、つるめないしで1人なのだ。バラみが校舎裏の小さな花畑のベンチに座っていると、シュガーがやってきた。「バラみさん。こんにちは。気分はどうですか?」シュガーは丁寧にバラみに話しかける。優しくしないと、バラみは逃げてしまうかもしれないから……。「え、あ、うん。ふつう」バラみは無愛想に答えた。シュガーは、ベンチに座るバラみのために膝をついてしゃがんだ。「それはよかった。」シュガーはにっこりと笑った。「……あなたこそ、どういう気分なのよ」バラみは冷たく言い放つ。「どうでしょう……僕は……。僕も、ふつう?…かな。」シュガーはバラみを無邪気に見つめる。彼は、普段生徒会長という立場にもいるし、賢くて知的な雰囲気がある。だけども、バラみの前ではまるで好奇心旺盛な幼い少年の様な目をするのだ。バラみは、自分を見るシュガーの目が、他とは違うことに気がついていた。でも、特別嬉しかったりすることはない。バラみも、シュガーを他とは違うと思ってる。こんな自分に彼だけがそばにいてくれる……。でも、それは二人が許婚という関係だから。バラみの父親が、シュガーが、大手の会社の社長の息子だからといって、無理やりそうしたのだ。バラみは、本当に父親が嫌いだ……父親は、バラみがグレてからもなんにも変わっていない。家に帰れば、ぐちぐちぐちぐち言われる。バラみは、もう呆れていた…。


結局、シュガーの中には愛なんてない。契約上の最低限の対応……。バラみはだから彼を信用できない……。


「…ほら。」「え…」


シュガーは、バラみの頭に花をさした。……

バラみはその一瞬、頭が空っぽになった……。


「……?!な、何してんの?」バラみは、少し頬を赤らめた…「あなたに似合うと思って」シュガーは当然のように振る舞う。「……。ヘンなヒト」バラみは小さくつぶやいた。「え?」シュガーが不思議そうにバラみを見つめる。「いいえ、なんでもない……。」バラみはシュガーに背を向けて歩き出した。

シュガーは、そんな彼女にもっと惹かれていった。



バラみは夕方の赤い空を見上げ、太陽を見つめる。…まぶしい。でも、なんだか心地がいい。バラみは風に髪をなびかせ、いつもの彼女とは違う、可憐な少女の様に動く。バラみは、普段こんなにも心が踊ったのは久しぶりであった……あの男の時に似ている。バラみは、不安になった。シュガーとは、許嫁。その縁が途中で途切れてしまったら?そんなことが起これば、彼は自分に興味もなくなるだろう……なぜなら、興味本位で近づいてきているだけだ。彼も、みんなと同じように私を差別的な目で見るのだろう。私は変わり者だから……そんな時、同じ中学の……カップル?がバラみの横を通りかかった。バラみは、そのカップルを見て、なんだか少し、モヤモヤしていた。二人で肩を並べて……話してる…。もし、シュガーと……ああなれたら…、いいや。シュガーは生徒会長だし、こんな劣等生に、あんな風にはしてくれないだろう。シュガーにはもっと……合う人がいる……リン、とか。リンは成績優秀、運動神経も抜群、シュガーの様に誰にでも愛されるマドンナ。リンはバラみと違って、心優しくて女の子らしくて、かわいらしくて、おしとやかで……。バラみはシュガーからもらったハナをくるくる回しながら見つめる。シュガーもどうせ、そういう人が好きなんだから。バラみはシュガーからもらった花を川になげいれようとした。



「おまえは愛されてなんかない」



……?どこからか、声がした。


「えっ…?」バラみは振り返る。そこには……


「やぁ。おじょうさん。こんなところでお一人かい?」と、オレンジ色の髪の男が……。バラみと似てる……。「はっ?アンタだれ。」バラみはその男と距離を置く……彼は、おそらく同い年くらいだろう…学校にも行かないで何をしているのか?「あたしたちについて知りたいの〜?」耳障りな高い声がする……。ピンクのくるくる頭の女だ。バラみは、後ずさる……「私達はレイニーズ。お願いを聞いてくれたら、対価は支払うわ。」と、紫の髪の女が……。


「レイニーズ……?」バラみはしばらく呆然として、彼らを見ていた。


「わ、私になんのよう……?」バラみは首をかしげる。「お前、言いたいことはわかるよなぁ………?」と、ジョン…。「な、何よ、言いたいことって……知らないわよ!」バラみはジョンに詰められて、後ずさる。「アイツはお前に興味本位で近づいてるだけだよ。だって、人間ってのは変わったヘンなヤツを簡単に見捨てることができるんだからな。」ジョンはバラみに囁く。「それであなたは彼に捨てられるの。あなたはただ弄ばれてるだけよ。所詮はその程度。」とクルコがバラみの周りをくるくるくるくるゆっくり歩く。「最初からあなたは誰にも必要とされてなかった。あなたはいらないの。居場所がない」コスモが、バラみに囁く、「……。あ、あんたたちに、何がわかんのよ?!」バラみは3人を睨みつける。「大丈夫。俺らはお前を受け入れられる」ジョンはハグするように腕を広げて、バラみに近づく。「は……?」バラみはもう後ずされない。「アタシたちと手を組むの。アンタは。」クルコはニヤニヤして言う。「あなたは愛される。彼女になら……」コスモもほのかに笑った。でも……コスモの笑顔はどこか暗くもあった。「……?愛される…」バラみはなぜか、愛されるという言葉の意味について深く考え込んだ。愛される……。求められる…必要とされる……。バラみには与えられなかったもの。愛しても愛しても、何も得られなかった。「……。考えることはできない?……今日は疲れたの……」バラみはジョンたちに訴えた。「じゃあ、これだけ聞いてくれないか。お前の通う学校に子供たちがいる。お前よりもちっちゃいガキだ。あの学校の中にそのガキどもと面識があるやつがいるらしい。……お前にはソイツを探してもらいたい。」ジョンはバラみの肩を持った。「お願いねぇ〜♡」クルコがバラみに微笑んだ。「……」コスモはバラみを見つめてうなずいた。3人は……ケータイ?の様な機械をいじくると、すぐさま、いなくなってしまった……さっきまで目の前にいたのに……ワープでもしたみたい。バラみは呆然とその場に突っ立っていた。


「バラみさん」


シュガーは笑顔で駆け寄ってきた。「…あ?あぁ……シュガー……」バラみはシュガーからもらった花をふと見る。まだ、手元にあった……。でも、バラみが握っていたせいか、花は少し黒ずんでいた。バラみは、あんなにきれいだった花が……と少しショックを受けた。「どうしたんです?」シュガーはいつも通り、明るく話しかけてきた。「……。お花が…」バラみは花を見つめる。「あぁ……枯れちゃったのかな…。お花畑にでも、僕が置いてきましょうか。」シュガーはバラみの手から花を取る。「あ…」バラみはその花を見て、なんだか切なくなった……。「私も行く。」バラみはシュガーに付いていった。



「よしっ。ここに置いておけば、養分になって、自然の役に立てるぞ……。おやすみなさい……」シュガーは花をかすかになでた。シュガーの美しい横顔にバラみは見惚れていた。「バラみさん。そろそろ暗くなるし……もう戻ろうか…!」シュガーはバラみに微笑んだ。「う、うんっ……!」バラみはなんだか恥ずかしくなってとりあえずうなずいた。



バラみはシュガーと別れ、自分の部屋に戻った。一番にベッドに飛び込み、だら〜んとする。もう……今日はなんだか、疲れた。バラみはふと、あのれいにーず?とかいうアヤシイやつらのことを思い出す……彼らの言っていた、子供たちと面識がある人とは……。バラみは、この学校にそんな人がいるはなんて……と、困った。もしかしたら、シュガーかもしれないし、担任の先生かもしれない……。担任の先生なら、可能性がないワケではない……何故か、夢見町の小学校と同じ先生たちだからだ!しかも、小学校の方と勤務時間が被ってても中学校で同じ先生が授業ができている……もしかすると…彼らはもしかして…。これ以上はやめよう。こんなことを考えている暇はない。バラみは目を閉じて……そのまま寝てしまった……。ご飯も食べないまま…




「ゆりさん。」



昼寝していたゆりを誰かが呼んでいる。「ン…?なんだい……?」ゆりはうっすら目を開く……。この感じ、前にもあったぞ……?と思いながら……



「ゆりさん。よつばだよ。」




視界の先には……やはり、よつばがいた。でも、なんだか元気がない……。「よつばは、お父さんを置いて家を出ちゃったの。せっかくここまで来ちゃったから……」さくらはゆりに気を遣いながら話す。「可哀想なパパ……。『こんなに愛しているのにっ!!どうしてっ?!』お前のパパは泣いてるぞ!なんなら……寂しくて死んじゃうかも」アオキはよつばをからかう。「死ぬっ?!」よつばは目をまんまるにして驚く。「そ〜だよぉ〜?死ぬかもしんない!早く帰らないと……」アオキが続けようとすると……「あんた、自分のやってることわかって言ってる?よつば、大丈夫だから……」さくらはよつばに優しく話しかける。「ほんとのこと言っただけなのにぃ。」と、アオキはヘラヘラしている。「……。はぁ。今日はもうご飯食べなくていいや〜水だけ飲んでまた寝る……あなたたちも寝てね〜……。布団……ふわ〜あ……3人分あるから……」と、ゆりは水筒を飲みに机へ向かうと、水を飲んだあとにすぐにベッドに戻った。「マリア、起きないといいけど……」ゆりはヘトヘトになって寝る。「よつば……あなたは家に帰ったほうがいい。なんなら。あたしたちも一緒に明日帰ってあげるよ。今日はもう遅いから……」さくらはよつばを真剣に見つめる。「そうだぞ〜?ぼっちゃん〜」アオキもなぜかそう言う。「あんたはだまってて。……よつば。いい?」さくらはよつばを見つめる…「でも……パパ、もうぼくのこと嫌いになっちゃったから……」よつばは泣きそうになりながら言う。「嫌いになってないよ、あなたのお父さんは……メンタルが弱そうだし……。きっと、そのせいだよ。よつばのせいじゃないよ。」さくらはよつばの手を優しく握る。アオキは、こんなさくらを見るのは始めてだったので、少し困惑した。まるで…別人だ…。「…ほんと?」よつばは不安そうにさくらを見つめる。「うん。」と、さくらはうなずいた。その言葉は不確かではあるが、嘘ではない。さくらは本当にそう思っているから。さくらはよつばにやさしく微笑む。「きっと今頃、仕事も手につかないんだろ〜な〜お前のパパは〜」アオキが冷やかす。「そんな…」よつばは顔を真っ青にした。「それに眠れなくって、会社に遅刻して、給料も少なくなって、生活もままならないんだろ〜な〜」アオキは無邪気にニヤニヤして言う。「ちょっとアンタ。いい加減にしなさいよ。自分だって同じことしてるクセに。」さくらは、アオキを睨んだ。「お前もだろ?お互い様だよっ」アオキは自信満々に言った。「…はぁ。もういい。もう寝るしたくするから。」さくらはアオキに呆れて、寝るしたくを始めた。「なぁ、よつば?一緒にまだ起きてよーぜっ?ほんとアイツつまんねぇーよな。」アオキはわざとらしくさくらに聞こえるように言った。でも、さくらはアオキのそういうとこに慣れているので、さほど気にはならなかった。結局、よつばたち3人とも寝落ちしてしまった。





「シロツメさん。大丈夫?」屋上で1人放心状態のシロツメに誰かが声をかけた。シロツメは、呼ばれて振り向く。「コウジさん……」シロツメはぼぉ〜っとしながらコウジを見る。「今日、なんだか体調が悪そうに見えましたけども……何かありました?僕でよければ…相談に乗りたい……です。」コウジはシロツメの掴めない視線をなんとか覗き込む。シロツメは、しっかりとコウジを見てはいるが、どこか、上の空だ。「コウジさん。僕は……どこで道を間違えたんでしょう。」シロツメはコウジをみているが、どこか遠くを見ているみたいだ。「…え?」コウジは、少し戸惑った。「僕は、どうして、ここにいるんでしょう……」シロツメはまっすぐにコウジを見つめる。「……やっぱり、様子がおかしい。あなた、社長の話しもまともに聞けていないでしょう……?いつもできていたことが、今日はできてない……。僕に、なにか、あったなら、話してくださいよ…。」コウジは心配そうにシロツメを見つめる。シロツメの背後の空は曇っていて、雨でも雪でも振ってきそうだった。でも、自然と、暗い空には見えない。どこか、明るくも見える。「コウジさん」シロツメは大きめにコウジの名を呼んだ。コウジは少しびっくりした。「あなたは…娘さんがいなくなって……それでも、どうしてそんなに完璧に振る舞えるんですか。あなたは……家族が壊れていても、どうして、そんな風になれるんですか……」シロツメは一粒だけ涙を流して言った。「……僕は…全然完璧なんかじゃない……現に、娘は僕の元から離れていった。妻とも、まともに話せないし、シロツメさんの方が、幸せそうで……。あなたも、僕のように何かが欠けている。それでも、あなたは一生懸命仕事をしている。僕の見立てでは、あなたは、とても仕事が苦手なはず。それでも、できないとわかっていながら…それでも、諦めないで仕事を続けている。あなたの方がすごい。シロツメさん。」コウジはシロツメの視線をやっと掴んだ。「そんな……僕なんて…。」シロツメはハナ以外の人間にはじめてそんなことを言われたものだから、少し戸惑った。ハナも…こんな風に的確ではなかったが、シロツメの見た目や、中身……すべてを受け入れてくれた……自分をそんなに見てくれて、愛してくれて、認めてくれたのは、ハナだけだった。でも…コウジも、自分の頑張りを認めてくれた……。シロツメは何個もの涙の粒が無意識に流れ出した。シロツメは、自分を否定したことしかなく、誰かにこんなに褒めてもらえたのは…とても嬉しい。社長や、仕事仲間たちも褒めてくれたりしたが、コウジの様に真剣に面と向かって言われたのは初めてだった。シロツメは、なんだか、自分の頑張りがやっと報われたかのような気持ちになった。「明日……息子とちゃんと、話します。僕の気持ち……彼の気持ち……。ちゃんと。」シロツメは胸に手を当てて独り言のように言った。「そうですね……あなたなら、できる」コウジもシロツメに微笑んだ。あれ…。コウジさんって、こんな風に笑うんだ…。シロツメは、始めてコウジの心からの笑顔を見ることができたと、思う。…たぶん。




さくらは、夜中に目を覚ます。空は、さっき眠りについた時よりもまっくらで、……星が見えていた。さくらは、その星空に見惚れていた。暗い部屋の中だからか、さらに鮮明に見える気がする。さくらは、ゆりたちにバレないように廊下へ出た。どうやら…マリアは起きていないようだった。



さくらは、なんとか校庭まで外に出て、空を見上げた。「わぁ…」と、思わず声が出た。星空だ。夢見町では絶対に見えない星空……さくらは、その光景を目に焼き付ける。すると、誰かが声をかけてきた。


「1人?」


「っえ…」さくらは、ゆっくり振り返る。


…そこには、DIVAのレインにそっくりな男の子が立っていた。「…えっ?あなたって…。」さくらは、あまりにも驚いて、後ずさった。



「ボク…?ボクは……ココロ。」「ココロ…?」さくらは彼を見ると、不思議な感覚になった。今まで隠されていたような…なんだか、めずらしいものでも見たような気分だった。


「早く戻ったほうが良いと思う。アイツらに見つかったら、めんどくさいことになるとおもうから。」ココロは真顔で答える。「え、そ、そうなの?」さくらは、何が何だかよく分からなくて夢でも見ているんじゃないかと思った。「あなたは…いいの?」さくらは、ココロを見つめる。「ボクは大丈夫だよ。それより、早くあの子を守ってあげないと。」ココロ妙に落ち着いて答える。「アイツらはあの子を狙ってるんだ。だから、キミが守ってあげないと。」ココロはさくらを見つめる。さくらは、とりあえずよくわからないが、こんな夜に外に出ているのは、やっぱり危ないので、ゆりの部屋に引き返した。



しばらくすると、ココロに、レイニーズが駆け寄ってきた。「ココロさん。なんか、誰かと話してなかったかい?」ジョンがココロにニヤニヤしながら問いかける。「うんう。誰とも。」ココロは知らんぷりをした。「ジョン!ここにクローバーがいるのね?」クルコがジョンの肩を持つ。「そうだ。」ジョンは微笑む。「準備はできてる…?」コスモは呆れながら聞く。「もちろんだ。明日の朝、実行しよう。」ジョンはクルコとコスモにくるりと振り返り笑う。



「どうか……クローバーが無事でありますように。」ココロはレイニーズに聞こえないよう、ボソっと言った。



〜第19章終わり〜



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