DIVA第3章〜第4章
第三章【どうして】
シロツメは家に帰る途中だった。また朝のように満員電車に埋もれ、ゆらゆら揺れていた。でも、家には帰らなきゃ。シロツメは必死に吊革を掴んでいた。まるで命綱みたいに。目の前にいるおじさんなんて、目をぎゅっと瞑って祈るように吊革に掴まっていた。毎日毎日こんなことをしていたら、さすがにもう嫌になってくるだろう。
シロツメの降りる風野の駅が近づいてくるたび、人は減っていった。まぁ、風野村はとても田舎なのでわざわざ用もないのに降りる人は少ないだろう。ただ、人が少ないのは悪いことだらけではない。実際、シロツメは孤独でいることは苦ではない。電車に揺られながら、また窓ガラスに映る自分が見えた。もう風野駅に着く。やっぱり、ここの星はなんど見てもきれいだ。ハナと話して、ここに決めてよかった。風野村は空気もいいし、心地よい風が常に吹いていて、隣人さんも優しい人が多い。これといった目立ったものはないが、本当にハナやシロツメには居心地が良い場所だった。
『風野〜風野〜』
運転士さんのアナウンスが聞こえ、シロツメは慌てて降りる。やっと家に帰れる。遅い時間だけど、それだけで心がホッとする。夜になると、本当にここら一帯には誰もいない。特に、深夜になると。
ふわりと優しい風がシロツメに吹いた。シロツメは思わず目を瞑り、風が運ぶ花のいい匂いを嗅いだ。やっぱり、風っていいなぁ。とシロツメは思った。風はこの世界に当たり前に存在しているが、とても素敵なものだと思う。嵐や台風は別として。夜空を見上げ、今日はどんな星座があるかと、シロツメは探す。星はいつも動いているから必ずいつも同じ空ではないのだ。もちろん、私達の住む星も常に動いている。シロツメはたまに星空を見ると、少し癒やされる。特に、風野は星がきれいに見える。夢見町とは大違いだ。夢見町はたくさんの人がいて、たくさんの光があって、夜でもざわざわしている。今、この時間だってあの町はきらびやかだろう。そう考えたら、ここの方がとってもマシだ。でも、夜はやっぱり寂しいので夢見町の夜の方が魅力的に思う人もいるのだろう。でも、どの地区にも必ずいいとこ、悪いとこはあるはずだ。
シロツメはぐんぐん家へと近づいていく。そして、目の前に家が見えてきた。あぁ。もうみんな寝てるかな。そう思い、玄関のドアを開く。やっぱり、家の中は静かだった。シロツメは、一息ついて、一旦靴を脱いだ。そして、靴置き場にきちんとしまった。ハナはよくほったらかしにしているので、シロツメがいつも片付けている。ふわぁ〜とあくびをして、シロツメはひとまずお風呂に入ろうと思って着替えを準備しに上へ向かった。
2階へ上がると、彼はハナ達が寝ているであろう寝室へ向かった。よつばとみつばの部屋も別に用意してあるが、まだ一人で寝かせるのは不安なので、親がそばで眠ることにしている。二段ベッドを使えるときは来るのだろうか……。シロツメは寝室に入り、部屋の様子を見た。
「あれ」
シロツメはおかしいと思った。なぜなら、そこにはよつばしかいなかったからだ。ハナも、なんならみつばすらいない。シロツメは慌ててよつばを起こした。「よつば!よつば!」シロツメは気持ちよく眠るよつばを揺らす。「ん〜」よつばは顔をしかめて目を覚ました。「ぱぱ」よつばはシロツメの顔を見てまた寝ようとした。「ねぇ!待って!よつば!ママは?みつばは?!」シロツメは大パニックになりよつばに語りかける「ママ…?みつ……ん〜」よつばはもう夢の中に入りそうになっている。「お願い…よつば…」シロツメはよつばが寝ないように無理やり立たせた。「ぱぱ……なぁに〜」よつばは不機嫌に目をこする「ねぇ、ママとみつばはどこいったの?」シロツメはよつばの肩をがっ!と掴んで聞いた。「いた〜い……。ママとみつば、いるよ。」「あっごめん、え、い、いないよ。」シロツメはよつばが寝ぼけているのは知っているが、今はそれどころじゃない。「知らないの?」とりあえず考えていられる時間もないので、シロツメはとにかく言葉を絞り出した。「うん〜…」よつばは顔をしかめてまた寝ようとする。「うん……わかった……」シロツメはよつばをまた布団に戻し、ハナに連絡を取ってみようとした……が、彼女のケータイは寝室に置いてあった。もしかしたら、そのケータイに何か書いてあるかもしれないとシロツメはハナのケータイをいじくりだす。ハナは機会に疎くて、パスワードも設定していなかった!シロツメはハナの頭が悪くてよかったと心から思った。ハナの検索履歴や、メールのやりとり、すべてに目を通したが、ハナはあまりケータイを触っていないのか、何も手かがりになりそうなものがなかった。シロツメは頭を抱えた。ひとまず、警察に通報してみた。深夜なので対応してくれないかと思ったが、警察は思ったよりも深刻に取り扱ってくれた。
「奥さんがDIVAのハナですって?!すごいですね〜旦那ぁ!」警察官のおじさんがシロツメにそう言った。「あはは……そうなんですよぉ〜」シロツメはそう言われると自分に自信が無くなってくるので、『DIVAの』ハナと言われるのはあまり好きではない。「ちゃんと家の戸締まりはしていましたか?」警察官にそう言われて、シロツメはドキッとした。なぜなら、ハナなら鍵をかけ忘れていたり、窓を開けっぱにしたり……そういう可能性は大いにある……。「あ~〜……戸締まり…できてなかったかも…です……」シロツメは汗ダラダラにして答えた。「あぁ、あとはハナさんが家に来た訪問者のためにドアを開け、何かされた可能性もありますね。でも…不思議なんです。こんなにも綺麗にいなくなるなんて……犯人がいる…とは思うのですが、今見ても何も手がかりが見つからないんですね。こんな事件は始めてだ。」警察官の人は珍しそうにそう言った。「そうなんですか……」シロツメは、とても不安になった。ハナに、みつばに何かあったら……。どうしようと。「まぁ、今日は遅いですし、明日また詳しく聞かせてください。」警察官の人達はそう言って家を去った。手がかりがない……。そうだとしたら、他にいなくなった理由はなんだろう?
数ヶ月後、また警察官の人から連絡が来た。シロツメは今日はさすがに会社を休んでいた。「はい!」シロツメは慌てて電話に出た。「あのですね…調べたところ、たいへん言いづらいのですが……」警察官の方は少し間を開けて話した。「奥さんは自発的に子供を連れて家を出たのではないでしょうか…。」それを聞いた途端、シロツメに大きな衝撃が走る。ハナが…?僕のことは……もう良いけど………よつばを……?シロツメは『よつばだけを置いていった』意味が分からなくて、大声を出してしまった。「そんな!どうして?!ハナが……?僕を………よつばを………?あの子だけは………あの子だけは…………!!」シロツメは半狂乱になってしまった。「落ち着いてください。我々も何度もあなたの家を捜査して、証拠を掴もうとしました。でも、どこにもないんです。ハナさんと、息子さんが何かされたような証拠が。だから…もう…家を自分達で出て行ったのではと……。」警察官の言葉を聞いてシロツメは叫びだした。「なんで?!どうして?!うそだ!!ひどい……どうして……どうして…!!」
「どうして!」
シロツメは受話機を落としてしまった。「シロツメさん?!待ってください!最後まで聞いて!」警察官のおじさんはシロツメをなだめようとする。でも、もう彼にそれは通じない。シロツメは自分の世界に入ってしまったから。
「ぱぱ?」
そこに、タイミング悪く寝起きのよつばがいた。「よつば……よつば……」シロツメは這いつくばる様にしてよつばへ近づいた。「ぱぱ〜…どうしたの?ママに会えるの?」よつばはそんなシロツメに構わず話しかける。シロツメはよつばを抱きしめて子供みたいに泣き出した。よつばはわけが分からなくて、だんまりとしてしまった。大の大人であるシロツメがこんなふうに泣いてるのを見たことがない。いや、シロツメに限らず、大人がこんなふうに泣くのを知らなかった。「ぱぱ。大丈夫?」よつばはシロツメの異変をようやく感じ取り、話しかけた。「よつば…ごめんね……ごめんね………」シロツメはよつばの声を聞き、少し落ち着いたようだ。「パパのせいだ。」シロツメはボソッとつぶやいた。「パパのせいで、ママはいなくなったんだよ。だから、お前は気にしなくていい」シロツメはヘラヘラ笑って言う。「え……じゃあママもう会えないの…?」よつばも涙が目に溜まってきた。「…………」シロツメは何も答えなった。よつばはそれがなんだか悲しくて彼も泣きだしてしまった。シロツメが明らかにおかしいことは分かっていたが、やはり、いつも冷静なシロツメがこんなにも変わってしまうなんて、子供のよつばにはものすごく怖かった。
特に怖いのはシロツメがずっとこの状態だったらと思うと、もっと不安になる。
親の状態に子供は左右されてしまうものだ。
「パパ。これからぼく、どーしたらいーの。」夜、隣で寝ているシロツメに、よつばは話しかけてきた。「大丈夫だよ。パパがいるから。」よつばは涙声で答える「でも、パパ仕事行っちゃうでしょ。僕、ご飯食べられなくなっちゃう。」よつばは泣きそうになって言う。「……ちゃんと考えるから。」シロツメは、たしかに、これからどうしよう……と色々不安になってきた。「パパ、ぼくのこと怒らないで、怖くなんないで。」よつばはシロツメにくっついて言う。「うん……」シロツメは、そう答えるしかなかった。
二人を照らす月明かりだけは、希望に満ち溢れていた。特に、今日は不気味なくらい嫌いな満月で、まるでシロツメ達の運命を肯定しているかのようだった。満月は美しいが魔力があると言われている。この先、何も起こらないといいのだが。
第三章終わり
第四章【ピンク髪の少女】
「もういやだ!!あなたと話してても無駄!!もう出てってよ!!」「またか……もうやめてくれよ……毎回毎回なんで帰ってきて君にこう怒鳴られなきゃならないんだよ!!もう勘弁してくれよ………」「あらそう!大事な時にいつもいないくせに!!もういやっ!!」そう言って、彼女は2階にに上がる。「………」彼は、顔を手で覆い、机に肘を置いた。「はぁ〜なんでだよ……」彼はポツリとそういう。そして、彼は立ち上がった。「あっ…!さくら……ここにいたのか……」ピンク髪の少女に彼は語りかける。「……うん。パパ、大丈夫?」少女は彼を心配する。「うん。大丈夫。……ごめん。いつもこんなんで。」彼はどっとため息をつく。「うんう。いいよ。パパが帰ってきてくれるだけで、とっても嬉しいから。」少女は微笑む。「……!」彼はそんな彼女を優しく抱きしめた。「ねぇ……パパ、次はいつ帰るの?」少女は優しく聞いた。「あ〜……。今月ギリギリもう一回会えるかも…。でも、期待はしないで。」彼は苦笑いでそう答える。「……そっか……。」少女はうつむいた。それから、よつばが10歳くらいになった頃、よつばは、電車で旅をするのが好きでよく色んな場所に行っていた。「パパ!パパ!今日はたくさんのお花を見たの!」「パバ〜!今日はね〜学校帰りに海を見たの〜」とシロツメに色々話してくれた。
そして、今日はよつばの学校でクラス替えをしたところだった。そう、新学期だ!よつばはワクワクドキドキで学校に通う。新しい人、新しい環境、全てが楽しみで仕方がない。よつばが通学路を歩いていると、ピンクの髪をした女の子がよつばを抜かしていった。その子を見ていると、よつばは不思議な感覚になった。あの子の背中はなんだか悲しいような、寂しいような、そんな雰囲気がした。よつばは、なんだかあの子に惹かれたが、もう学校が目の前に見えたので、そのことで頭がいっぱいになった。(次はどんな子に会えるかな〜!楽しみっ!)よつばはワクワクドキドキで校舎に入っていった。
よつばは校庭に置いてあるホワイトボードにそれぞれ書いてある教室に自分の名前を探しに行った。「あった!」よつばのクラスは5-2組「うわぁ〜!2って大好き!」よつばは独り言を言って、教室に向かった。「わぁ〜!あっ。」よつばは楽しそうに声を出していたが、いきなり止めた。そう。それはあのピンクが髪の子がこのクラスにいたからだ。
「お〜よつばくん。君には大変お世話になったぞ〜。ハハッ」
と、聞き慣れた声がした……そう、『ゴトウ』先生だっ!!「ゴトーせんせー?!」よつばはびっくり仰天!彼とは、一年生からの仲なので、大体こうなることはみんな分かっていた。(よつば以外)よつばを面倒見れるのは、他にもない彼しかいないのだ。ゴトウ先生は一番この小学校でベテランの先生で、この学校に10年も滞在している。前に他の先生によつばを任せたこともあったが、先生自らこの子の担任はできない!次は違うクラスにしてくれ!とみんな申し出るくらいよつばの扱いは難しかった。よつばは授業中うろうろしだすし、授業中に関係のない話をしだす。シロツメもそのことを知っていて、何度も注意しているが、よつばはやめない。でも、ゴトウ先生の手にかかればよつばはいい子に勉強をする。なぜそんなよつばがゴトウ先生の言うことを聞くのか。それは、ゴトウ先生がわざとよつばに面白可笑しく問題を解かせようとするからだ。よつばが興味がありそうな言葉や話し方でよつばを誘惑するのだ。ゴトウ先生は常によつばのそばにいられるわけではないので、彼の会話パターンを学習したAIによつばの面倒を見させている。だから、よつばは毎回目立ってしまう。でも、当の本人は別に気にしていない。今その瞬間楽しければそれでいいのだ。
そんなこんなで、ついに休み時間がやってきた…!よつばは一人で学校内を散策しようとすると、方をトントンっと叩かれた。「お前がウワサのよつばか〜?ゴトウに付きまとわれてる。」その子は赤いTシャツを着ていて、前髪が真ん中で別れている。「えっ?つきまと…?」よつばはよくわからなかった。「そうよ。そうそう。お前、アイツに目ぇつけられてかわいそうにっ。俺もゴトウに目つけられてんだぁ。」その子はニヤニヤして言う。「へ〜。そっか。」よつばはくるりと方向を変え、教室から出ようとする。「おいっ?!待てよっ…!よつばちゃ〜ん……人の話聞いてた〜?俺はお前に同情してやってたのっ!」彼はよつばの行く手を塞ぐ。「う〜ん。」よつばは困ってしまった。よつばが向こうにある教室のドアを見ると……ピンクの髪の子が教室から出ていった!「あっ!ごめんなさい!ぼく、行かなきゃっ!!」よつばは慌てて彼をどかしてあの子を追いかけようとする。「はっ?そ、そんなに俺のこといや〜?もぉ〜そんなに拒絶されちゃぁ……アレッ」彼がグチグチ言ってる間に、よつばはもう、そこに居なかった。
よつばはバレないようにピンクの髪の子の後をつける。話しかけてもいいのかもしれないけど……それでうまくいったことがないから、話しかけれない。よつばから話しかけると女の子でも男の子でもみんなポカーンとしてしまう。なぜなら、よつばはペラペラペラペラと自分の話したいことばかり話すからだ。あと、一気に質問攻めにして、相手を困らせてしまう。だから、話しかけれない……。しばらく歩いてもピンク髪の子は足を止めない。おかしいなぁずっと歩いてるよ、とよつばは思っていた。でも、その子はついにピタリと足を止めた。よつばは期待して彼女の次の動きを待つ。でも、彼女から放たれた言葉は意外なものだった。「付いてきてるの、知ってるよ。あたしになんのようなの?」ピンク髪の子は、不機嫌にそう答える。「わっ!あ、あのね!ぼくよつば!君はなんて」よつばが続きを言おうとすると、「知ってるよ。あたしが誰か知りたいの?」ピンク髪の子はよつばの言葉を塞いでそう言った。「う、うん!!誰?!」よつばは嬉しすぎて大声で聞いた「………さくら。」ピンク髪の子は小さくそう呟いてどこかへ行こうとした。「ま、まって!」よつばはまた大声で引き止めた。さくらはものすごい勢いで戻ってきて、「お願いだからあまり目立つことしないで!なに?まだなんかあんの?」さくらは小声は話しかけた。「ん〜とね。特にないよ。」よつばもマネして小声で話す。「…っなんなのよ……」さくらは呆れて言う。「おっと〜?さ〜くらく〜ん♩こんなとこにいたんだなぁ。あっ!しかもよつばきゅんとフタリキリ……?!これはすげぇなぁ!お前みたいなやつがいきなり男子と絡むとは!」「あ~もっとめんどくさいやつきた」さくらはうんざりした顔でやつを見る。「ねぇ、アオキ【さん】。いちいちあたしに突っかかってくるの、やめてくれない?」さくらは苛ついて言う。「きゃー!!怒ってる〜!こわぁ〜い☆」アオキは悪ふざけで怖がり、よつばの背後へ回り込む。「はぁ。」さくらは大きなため息をついた。さくらはそんなアオキを無視して、また歩き出した。よつばも釣られて付いていく。「おっと〜?そろそろ授業の時間だ〜またなよつばくんっ」「またね〜あおき…?くん!」アオキはさくらとよつばを抜かして上の階段を登った。「お〜い。一つ言っとくけどよ、よつば。そいつあんまり面白くないぞ。怒ったら面白いかもだけど。」アオキはニヤニヤして教室へと走り去って行った。「廊下は走るな〜!」ゴトウ先生の大声が聞こえた。「うい〜」アオキの反省の色のない答えが聞こえた。「よつばくん。あんなヤツと仲良くしないほうがいいからね。」さくらは呆れて言う。「うん…」よつばはよくわからないけど、とりあえずそう返した。
そして、もう下校の時間。さくらは家に帰る支度を済ませ、一番に教室を出た。そう。よつばとかアオキとかめんどくさいやつらに絡まれたくないからだ。「あら〜さくらちゃん聞いたわよ。あ・な・た、男子と珍しく話してたらしいじゃないの〜。【アオキくん】以外の!!」さっそくめんどくさいやつがきた。こいつはミルク。「だから、アオキのことなんかど〜でもいんだって。」さくらは棒読みで返答する。「うそだ〜!アオキくんは何かとあればあんたと絡んでるじゃん!しかも今度はあのよ【た】ばにまで〜!」とミルクはいう。「ちがう。よ【つ】ば。」さくらは冷たく返す。「ど〜でもいいわよっ!あの男の名前が何でもっ!!」ミルクは投げやりに話す。「もう信じらんないっ!なんであたしじゃないのー!!?」「そういうとこじゃないの。」さくらは呆れて言う。
やっと一人になれた……。ミルクがやっと家の近くだったので別の方へと行ってくれたのだ。本当に放っておいてほしいのに、どうしてこうも邪魔なやつらの相手をしなきゃならないのか。さくらは家のドアに手をかけ、扉を開いた。「おかえり。」さくらの母親がリビングから返す。
「ママ。ただいま。」今日は機嫌が良さそうだ。さくらは少し安心して、2階の自室へ向かう。さくらは自分の部屋に入ると、ベッドに座り、ぼーっと壁を眺めた。特に何かあるわけでもないが、今はそんな気分だ。ずっと見つめていると、壁に顔があるようにも見えてくる。でも、そろそろ荷物を片付けたりしなくてはならない。さくらはベッドから立ち上がり、荷物をクローゼットに閉まった。さくらはとりあえず用は済んだので、下の階のリビングに降りていった。すると、さくなはさくらにこう言った。「今週中には、パパ帰ってくるから。」と微笑んで言った。「そう……。よかった。」さくらも同じように微笑んだ、が。今日の夕飯の時間は最悪なものになった。
「ふざけないでよ!!帰ってこれないの?!」
と、さくなの怒鳴り声がする。さくらは聞かなかったことにして夕飯を食べはじめた。「落ち着いてくれ…さくな。来週には帰れるようにちゃんと話しておくから……」と、コウジの声が電話越しに聞こえる。かなり大きめの声でコウジも話している「今週はさくらの誕生日なのよ!?!?それなのに、どうしてっ?!」さくなは今にも受話機をぶん投げてしまいそうな勢いだった。「分かってるよ……僕も何か送るさ。だから………」とコウジが何か言おうとしたところでさくなはおもいっきり電話を切った。「あああぁぁああ!!!」さくなは大声で叫び出した。さくらは、もうご飯を食べ終えそうだった。しばらくすると、さくなは、不機嫌にさくらの前に座る。この状態になると、さくなに何を言っても無駄だ。なぜなら、自分も怒鳴られてしまう。だから、さくらは自分で皿を洗い、2階の自室に戻り、お風呂の準備をした。いつもの薄いミント色のパジャマを用意して、風呂に向かった。もう寝る準備をしているのだ。まぁ、いつもやっていることだけど。
さくらは風呂から上がり、パジャマに着替え、自室に戻った。さくらはふと、外が見たくなり、ベランダの窓を開け、ベランダに出た。やっぱり、夢見町は明るい。いつもこんなに明るい町で寝ていただなんて、信じられない。でも、それが儚く美しいものにも見える。夢見町は都会だけど、いっぱい何かがあるように見えるけど、本当はそこにはなんにもないのかもしれない。だって、元々はこの世界は草や木とかの植物しかないんだから。だから、本当は夢見町にはなんにもないのだ。でも、この夜も明るい都会は今日も誰かの心を照らしているのだろう。一人で寂しい夜を、満たしてくれる場所なのだろう。でも、夜の夢見町にいるのはほとんど大人たちだろう。子供には都会の楽しさがあんまり理解できない。さくらなんて、たまに散歩するぐらいで、お金もないので店による事もできない。お金があるから、夜の町は楽しいんだ。
さくらは、ふと夢見町の遠くにうっすら見える光を見つけた。「ん?」夢見町が眩しすぎてあまり見えないが、本当にわずかの明かりが見える。その光はカラフルな色合いをして、何個かバラバラなところに落ちて行った。花火か、何かかな、とさくらはあまり気に留めず、ベランダの窓を閉め、再びベッドに戻った。
一方、よつばの家ではカラフルな光が鮮明に見えていた。「パパ〜あれなに〜?」とよつばが話してきた。「あ?もう寝なさい、よつば寒いんだ……」シロツメがよつばの方を見ると……
「え?!」
カラフルな光の粒?のようなものが、あちこちにバラバラに飛んでいっていた。「花火の事故かなぁ…調べてみよう。」シロツメは事故なのかと心配して、ケータイで調べてみることにした。「あっちは、夢見町の方向だけど……特に夢見では何もやってないみたいだな……」とシロツメは顔をしかめた。「キレイだったなぁ〜。色んな色があったよ!ぼく、虹色が一番好き!」とよつばは無邪気に答える。「……そっか。……まぁひとまず、もう寝よう。」と無理やりよつばを布団に戻した。「明日、あのキラキラしたやつを探しに行ってみようかなぁ〜?」とよつばが呟く。「………まっ、まぁいいけど…あまり遠くへ行かないでね。」とシロツメはよつばをトントンとして、優しく叩く。「うん……」よつばはシロツメに叩かれてだんだん眠くなってきた。
第四章終わり




